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彼女と彼の攻防戦  作者: 氷月
SIDE:N
3/20

3.だ、大丈夫?

 その後、ちえからの情報によると、かの結城という先輩は何とうちの学校の生徒会長様らしい。へえ、と感心して聞いていたら、何で知らないんだと呆れられた。ていうか、ちえは何で知ってんの?


「入学式で挨拶してたじゃない」

「八割方寝てたから知らない」

「そのあと、新入生女子の間ですっごい話題になってたじゃない。超イケメン生徒会長だって」

「わたしがそんな話真面目に聞いてると思う?」

「………………………思わないけど」


何で不満そうなんだ。基本的に興味のない話題は聞いた瞬間から忘れることにしているわたしの性格を知らない訳じゃないだろうに。


「しかし、生徒会長かあ。何か、漫画みたいな人だねえ」

「うん、芸能人みたいに格好良い生徒会長なんて、少女漫画のテンプレよね」

保健室で見た瞬間、どこのジャニーズかと思ったもんな、わたしも。


 やや長めのチョコレートブラウンの髪、綺麗に通った鼻筋、きりりと涼やかな眉。

 全体的に怜悧な感じの整い方をしているパーツの中で、やや丸っこい目が愛敬を添えている。

 そういや、背も高かったな。


 「……近づきたくなかったな」

ぼそりと呟いたわたしの言葉に、ちえが吹き出す。

「女子高生とは思えない発言ね」

理由も知っているくせに、そんなことを言う友人に反論しようとした、時だった。


 「あ!中原ちゃん、発見!!」

元気な声が後ろからかかる。反射的に振り向くと、そこにいたのは同じ中学出身の内山先輩だった。その姿を確認した瞬間、わたしはくるりときびすを返す。


「ちょっ、中原ちゃん?!」

「え、人魚、呼ばれてるよ?」


後ろから追いかけてくる声は、無視。ここは、逃亡の一手しかない。


 脱兎の如く、という形容詞のままに走り出したわたしだったが、残念ながら逃走劇は5分と続かなかった。


 「もう、何で逃げるのよ!」


ぜえはあと息も絶え絶えのわたしに対し、先輩は軽く息が上がっている程度。くそう、やっぱりバリバリ現役の運動部に勝てるわけがなかったか。


 「嫌な、予感……しか、しなかっ…た、もので……」

「だからって、挨拶もなしに逃げるなんて酷くない?!」

「先輩にかかわっても、良いことなんて1つもない、という経験則ですが?」

そう、この先輩はトラブルメーカーだ。この人のうっかりした言動で、一体何度修羅場にたたき落とされたか。


 ちょっと、それ、酷いよ!!と大騒ぎする先輩をちえがなだめている。ちなみに、彼女たちはクラブの先輩・後輩つながりだ。


「でも、発見てどうしたんですか?人魚を捜してたんですか?」

それは確かに気になった。久しぶり、とかじゃなく発見て言うのは何だろう。

「そうそう。うちの高校に入ってるって聞いたからさ、勧誘に」

「勧誘?」

「そ。生徒会に」

「お断りします」

「早っ!ちょっとは考えてよ。中学の時はやってたじゃん」


確かに、中学の時は生徒会に所属していた。内山先輩とのつながりもそこでのものだが、高校では絶対やらないと心に決めている。


「それはそれ。中学のこぢんまりしたものならともかく、この高校レベルのスケ-ルの大きい活動はお断りです。わたしは、高校3年間、教室の端っこで生きるって決めたんです」

夢がないと言うなら言え。わたしは地味子として生きるのが目標なのだ。


 だが、わたしのその発言に、先輩は目を丸くして言う。

「教室の端っこで、目立たず生きる?中原ちゃんが?」

「そうです」

言った瞬間、大変残念なものを見る目でわたしを見た先輩は、すぐにちえをふり返る。


「ねえ、高里っち。中原ちゃんが目開けたまま寝言言ってるよ?」


「えーっと、目標にするくらいなら別に良いんじゃないですか?」


え、二人とも何、その台詞。


「何で無理、が決定事項なんですか?!」


「「だって無理だもん」」

……何故ハモるんだ、そこ。


 「あのね、中原ちゃん。人間できることとできないことがあるんだよ?」

噛んで含めるように先輩は言う。

「たとえばね、ホームルームで、興味ないなあってクラスレクを決める話し合いをしています。中原ちゃん、何してる?」

「寝てます」

「うん、じゃあ、それを注意されて、なおかつその注意の仕方がむかつく感じだったら?」

「その話し合いが如何に無意味であるかを論証してから、寝ます。…………え、何ですか、その顔」

「じゃあ、遠足に行きました。班行動の最中に、クラスの男子がふざけてます。どうする?」

「わたしに迷惑がかからないなら放っておきます。迷惑だなと思ったら、二度とそんな気を起こさないように徹底的に説教ですかね」

あれ、ため息つかれた。しかも、ちえと二人で。何でだ。


「うーんと、そうねえ。じゃあ、担任の先生が実はすっごい熱血で、生活面での色々について注意してきました。どうする?」

「自分の人生設計の規範となる考え方を懇切丁寧に説明して、納得してから帰ってもらいます」

「ついでに、その先生の発言がちょっと理不尽だと思っちゃった」

「謝罪が必要だと思ったら、もちろん謝ってもらいますが?」

「先生が引かなかったら?」

「まずは学年主任。それでも埒があかなければ、教頭・校長まで話を持っていきます」

ここまでいった辺りで、とうとう横にいたちえが吹き出した。


 えーと、うん。だって、わたしはそう言う性格なんだから、仕方ないじゃん?

 思わずそう言いかけたわたしの機先を制して、先輩が言う。


 「中原ちゃん、まだ、たとえ話は必要?」


そんな子がどうやって端っこで大人しくしていられるんだ、と言われてぐうの音も出ない。

 じゃあ、クラスメイトから忘れられる存在になるために、そう言う時に黙っていられるかって言うと、絶対無理だろうし。


 「無理だって、わかったでしょ?」


哀れむような先輩の目が痛い。くそう、この性格が悪いのか。

「で、でも、それと生徒会に入るってのは、別問題ですよ!」

「それはわかってるわよ。だから、勧誘って言うか、話を聞くために生徒会室に来てほしいの。ちなみに、うんって言ってくれるまで誘いに行くつもりだけど、どうする?」

にっこり。悪気は欠片もないが、押しは強い。そう言う人だ、この先輩は。


「………………分かり、ましたよ……」

ここはもう、大人しく降参するしかない。


 結局、来週に生徒会室に出頭することを約束させられて、先輩は帰っていった。

 残されたわたしは、深い深いため息を1つ。


 「だ、大丈夫?」


言葉だけは心配げなちえだが、声が震えている。


 もちろん、笑いで。


 「これが大丈夫に見えるんなら、お前の目は節穴だ」

わたしのその言葉に、親友はとうとう腹を抱えて笑い出した。


 友達がいのない奴め!

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