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乙女ゲームにはまりました(3)

 赤いバラの咲き誇る薔薇園。

 中央部の芝生の上では、一人の男子生徒が気持ちよさそうに昼寝をしていた。なめらかな金髪が風にそよぐ。

 綺麗な人、と近づくと、彼はすっと目を開けた。青い目が近づく者の姿をとらえる。


「君は……キャラメル・マキアートだね」


 微笑む姿はまるで彫刻のようで、目をそらすことが出来ない。

 それが、この国の王子アイン様との出会いだった。



 ……良い。良い!

 やっぱりアイン王子めっちゃ良い!

金髪碧眼で穏やかな物腰、優しい言葉づかい。これぞ正統派王子様。不機嫌面の魔王様に爪の垢を煎じて飲ませてさしあげたいくらいの素晴らしいお人だ。

 「異世界王国物語」のノベライズを読み返すこと三度目、私はティラミス王国立高等学園で繰り広げられるきらきらふわふわした恋愛にどっぷりとハマっていた。主人公は妖精に愛された華奢な少女で、学園生活の中で様々なイケメンに甘い言葉をささやかれたり悪意から守られたりするのだ。眼鏡の委員長も騎士団の細マッチョもいいけれど、やっぱり一番は王子様。

 やっぱり乙女の夢は白馬の王子様に迎えに来てもらうことだよなぁ、とほくほくしているとドアノックの音が聞こえた。

 もう夜も更けているのに、こんな時間に誰だろう。

 急いで本を掛け布団の中に隠してドアを開けると、そこにはシェムさんがいた。


「休日手当をお持ちしましたぞ」


 そう言って雪子に手頃なサイズの段ボールを渡すと、「それでは、お休みなさいませ」と続けて背を向けて去って行く。

 いつもみたいに雑談をしないなんて珍しいな、と段ボールの中を見ると、未開封の携帯ゲーム機と「異世界王国物語」のソフト、そしてご丁寧にも攻略本が入っていた。

 そして一番底には茶色の封筒に入ったメッセージカード。

 段ボールを机に置いてメッセージカードを取り出すと、シェムさんの文字でこう書かれていた。


『ご学友が出来たようでなによりです。来週には最終試験がございます。お体を壊しませんよう』


 どうやら、シェムさんには全部ばれていたみたいだ。

 隠していた本を取り出して机の上に置く。

 ゲームソフトのパッケージでは小説同様に天使のような笑顔をしたピンクの髪のヒロインがイケメンに囲まれていた。


『異世界王国物語~学園ラブはキケンがいっぱい☆~ 

 ティラミス王国。そこは妖精の力を借りなければ魔法を使えない不思議な世界。

 妖精に愛されたあなたが学園で出会うのは五人の……

 あなたにとって本物の王子様は誰?』


 きたー!!!!!

 どのイケメンも好きだけどね、やっぱ正統派王子様が本物の王子様だと思うよ!

グッジョブですよシェムさん!

 登校時刻まであと9時間。起動する画面。

 雪子の眠気との戦いがいま始まろうとしている。

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