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魔王様特製「学校」(3)

「明日から学校行ってみようか」


 魔王様の発言は突然だった。


「一か月ね。臨時で学校作ったから。」


 学校を、作った?

 最近、お城の中がばたばたしているのは感じていた。それに、普段見ないようないかにも魔道士っぽい恰好の人や軍の人たちが何度も会議室に集まっていたのも。てっきり魔王討伐隊でも攻めてきているんだろうかとか思って心配していたのに。


「あの、税金の無駄遣いなのでは……」


「大丈夫、魔王城採用試験だから。これ募集要項」


 魔王様が渡してきたリーフレットには採用試験の流れや採用時の考慮要素などが記載されている。


「あの、私っていつの間にクビになってたんでしょうか」


 とりあえず聞いてみれば、魔王様は甘さ極限の紅茶を一口二口。


「クビになりたかった?」


「いえいえいえ滅相もないです魔王様。敬愛してます魔王様」


 そのチャラい金髪も、糸みたいな細い目も、目さえ開けば意外とイケメンかもしれないそのお顔も、お慕いしております。はい。


「一か月間は有休扱いにしてあげる。あと、学校行くのに服足りなかったら研修費扱いで一部補助出すから。筆記用具とかも足りないならそれも経費で落とすからシェムに領収書出しといて」


 おお、至れり尽くせり。一番嬉しいのは有給休暇扱いなところだけど!


「あ、一次試験受けてね。落ちないでよ」


「一次試験、ですか」


 なんと。これ本気で採用試験受けさせられちゃうやつなのね。どうしよう、試験なんてここ六年受けてないんだけど……一夜漬けで間に合うかなぁ。


「あ、五分後に始まるから。この扉出て右にちょっと行った会議室ね」


 待って!!!

 試験範囲は? って言ってもあと五分じゃ何もできないけど!


「早く行きなよ、魔王城のメイドが遅刻する気?」


「今行きます! 今すぐ行きます!」


 魔王様のお茶のセットを片付けることもしないでとりあえず部屋を飛び出す。会議室までこの無駄に長い廊下を500m。足の遅い雪子にとっては全力ダッシュでぎりぎり間に合うかどうか。

 どこが右に「ちょっと」よ。もう嫌だ。神様。

 ダッシュ開始から十秒で早くも息切れを起こしつつ、雪子はひたすら走っていった。

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