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パーティーには危険がいっぱい?(4)

 さてどうする。

 背後のベッドと、目の前の第二ボタンを外した魔王様。というか、近づいてくる魔王様。

 頭の中でアラームやらサイレンやらが鳴り響いて、今すぐここを離れるよう告げている。なのに、体が動かない。


「もしかして、脱げない?」


 すっと魔王様が近づいてきて。


「脱がせてほしいの?」


 まるで抱きしめるかのように腕を回したかと思えば、器用に後ろのファスナーを探り当てた様子。

 シーッという音と共に胸の苦しさが消えた瞬間、もう限界だった。


「やめてくださいっ」


 どんっと、突き放す。いや、突き放したつもりだった。意外と魔王様は頑丈で、ぴくりともしない彼とは対照的に反動で体が後ろに傾く。あ、と思っても細いヒールじゃ踏ん張れない。そのままどさりと仰向けに倒れれば、幸いにもベッドが受け止めてくれる。

 ナイスベッド。絨毯に後頭部を強打したら今頃激痛に見舞われていたはずだ。


「……、雪子」


 ああ、でもあまりナイスではなかったかもしれない。

 ベッドに転がる私と、覆いかぶさるように体を傾ける魔王様。

 耳の横に置かれた手でベッドが沈む。

 壁ドンでも床ドンでもないなら、これは……ベッドン? あらやだなんか音が汚い。


「雪子、目、閉じて」


 顎に手を添えられる。さらに近づく魔王様の顔。赤い瞳。照明を反射する金色の髪。

 背すじを何かが通り抜けるような感覚に耐え切れなくなって目を閉じる。

 もう、もう。

 どうにでもなれ、と思って、でも、逃げ出したくなっていると、顔に冷たいものが触れた。

 撫でるように、いや、撫でこするように冷たさが頬やまぶた、おでこを往復する。唇に触れた冷たさはほんのり柑橘系の香り。


「はい、目あけていいよ」


 目を開ければ、魔王様の手が何かをゴミ箱に放るところだった。


「それと、これ。僕はあっちにいるから」


 仰向けに転がる雪子のお腹の上に布地が落とされる。よく見れば魔王城支給のパジャマだった。新品らしきパリッと感。

 別室に繋がっているらしいドアを出て行く魔王様を目で追いつつ起き上がれば、壁にかかる鏡が素顔の雪子を映し出す。


「……メイク落とされてる」


 せっかくメイド長が綺麗にしてくれたのに、もったいない。けど、まあ、いっか。

 体をドレスから抜いて着替えれば寝る体勢は万全。ドレスをどうすればいいかはわからないけど、まあ、今はもう、ベッドで転がっていたい気分。

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