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パーティーには危険がいっぱい?(1)

 信じたくないような、でも、受け止めざるを得ないような。この気持ちってなんていうんでしょうかね、ああ、そうだ、恋。そうだきっと恋だ。めくるめくロマンス。キラキラ王子様。ガラスの靴を落としたら、必ず迎えに来てくれる。


「雪子、行くわよ」


 メイド長の言葉に引き戻されれば、そこは大広間の前。普段はかないハイヒールが絨毯の毛足にひっかかる。


「メイド長……」


「行きたくないっていうのは聞き飽きたわ。帰りたいっていうのもね」


 有無を言わさず大広間に入っていくメイド長。彼女はいつも通りの制服姿なのに、なんで私はドレスなんか着させられているのだろう。

 赤いドレスが肺をしめつける。苦しい。締められたお腹も、気合で詰め込んだ胸パッドも、全部苦しい。おまけに。


「魔王様ぁ、今度うちのガーデンパーティーにおいでになって。うちでもお祝いしましょ」


「魔王様、私の別荘に温泉がわきましたの、温泉お好きですよね」


「魔王様、あの、その、これプレゼントです!」


「写真一緒に撮ってもらえませんか」


 魔王様、魔王様、魔王様。

 大広間にあふれる黄色い声。

 一年に一度の魔王様の誕生パーティーは例年通り豪華で、にぎやかで、芋洗い状態だ。

 人ごみの隙間から見えるかろうじて見える燕尾服姿の魔王様。白い蝶ネクタイに赤いハンカチを胸ポケットからのぞかせていて、まあ、なんていうか……似合うなぁ。

 週刊誌の記者さんや新聞記者さんがフラッシュをたきまくっているのもうなずける。今日撮った写真、数か月後に発売される魔王様写真集に使われるんだろうなぁ。

 

「今日は仕事しなくていいんだから、好きなものでも食べてなさいな」


 入り口近くで立ち呆けていたら、メイド長がお皿にあれこれ乗せて持ってきてくれた。

 ああ、神様仏様メイド長さま。


「私、ここにいる意味あるんですかね」


 人だかりの中心にいる魔王様を見れば、まんざらでもなさそうに笑っている。

 あんなに化粧の濃い女は嫌だとか何だか言ってたくせに。


「ここにいるだけで意味がある、と思えばいいのよ」


 名言ですメイド長。

 雪子の言葉に、「あら、そう?」と肉感的な唇を持ち上げる様は、誰が見たって雪子よりもドレスの似合う人のそれだった。

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