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恋愛アンチ×女嫌い=俺  作者: 日々 傷人
3/3

あいつがニュースターになった日

真っ暗な部屋の中。キーボードを打つ音と僅かな会話が聞こえる。

そこにいる少年、佐藤 駿は先日、ラノベ作家になった・・・・のだが。

「うわぁ・・・ホントないわ。新人賞受賞式とか・・・マジ萎えますわ・・・」

文句たらたら、 半分死んでるのではないかと思わせる顔だ。

『まぁコミュ障のアンタには相当キツイわね。』

仕方ないことだ。駿は中学になってからひきこもり、同時にコミュ障と化したから。

『まぁでも色んな食べ物があると思うしいんじゃない?』

「いやあのなぁ、そういうのはどーでもいーんだよ!問題は話しかけられたらどうするかって事だよ・・・」

コトネは少し考え込み、

『駿。良いこと思いついちゃった!』

「ほう・・・?」



新人賞受賞式当日、きちんと身嗜みを整えた少年の姿がそこにあった。

駿は朝家を出る前、妹の優衣にあれこれ言われようやく家を出ることが出来た。

「まぁできた妹がいて得したな」

『本当よ!まったく・・・あんた優衣ちゃんといなかったら今頃死んでるわね』

「縁起でもねぇ事言うなよ・・・」

いつもは画面から聞こえてくる声が、今日は耳に直接聞こえてくる。理由はコトネが提案した一つの方法だった。


『駿。良いこと思いついちゃった!』

「ほう・・・?言ってみろ。」

『あんたの耳に小型のワイヤレスイヤホンを付ければ良いのよ!幸いあんた髪長いから隠せるし』

「なるほど、悪くない案だな。」

具体的にはどうするのだ、と駿が言った。

『あんたの端末の中に私を入れて、誰かに話しかけられたら時、それを通して内容を伝える。それをあんたが話すだけ!』

駿のツッコミが入る。

「カゲ〇ウ〇〇ズじゃねぇか!?」

まさしく、あの超人気小説そのものだった。

『まぁまぁ、そんなことは良いのよ!それよりあんたはこの提案に乗るの?乗らないの?』

今回はコトネが正論だ。だから―

「モチのロン!」

乗った。


ということがあり今に至っている。

そして今、駿はたくさんのお偉いさんに囲まれ、食事をしていた。

幸い、コトネのおかげで会話には困っていない。だが、

「君が新人賞を受賞した佐藤駿さんですか!いやぁこれはまたお若いですな!」

野太い声でガッハッハと笑っている中年ハゲ。

「いやはや、最近は若者が多いですな!こちらからした嬉しい限りですなぁ」

「これからの若者達に期待を込めて☆五つ!」

はいはい、私も!とぞろぞろ出てくる中年ハゲ、まぁハゲだけではないのだが、こう言った方がわかりやすいだろう。

「それより駿さん。今回初めての応募で受賞したと聞きましたが、何故ライトノベルを選ばれたのですか?」

(まぁいずれは聞かれると思ってた事だし、一応準備していなかったわけでもないしな・・・)

「そうですね、ちょっとしんみりしちゃう話なんですけどいいですか?」

と、駿が確認をとると、構わないからさっさと教えろと言わんばかりに、頷いた。

「僕が中学の時、入学して間もない時でしたね。僕は学校でいじめにあっていました。理由は、ラノベを読んでいたからです。そりゃもう、クラスメイトに散々馬鹿にされました。でも、やっぱ好きなものを馬鹿にされるのが悔しかったんです。だから誰でも読めるラノベを書こうと思い今回応募させて頂いたわけです。」

よくある話ですよね、と駿が自重気味に笑うと、

「そんなことはないですよ、貴方はとても立派な方です。まだ高校生なのにそこまでの行動力があるとは、私ももっと頑張らないとですねぇ。」

私も私も、と中年ハゲが、

「これからも頑張ってください。」ニコッと。

まぁ、作り話でそこまで感動しなくてもいいのに。

そうこうして時は流れ新人賞受賞式も幕を閉じ。

駿は帰りにタクシーを拾い、帰路に着いていた。

「なぁ。疲れたんだが?」

「はいはいお疲れ様でした。」

タクシー内で二人が話したことはそれだけ、それっきり駿は余程疲れが溜まっていたのか、いびきをかきながら寝てしまった。

「ほんとお疲れ様・・・」

コトネは優しく微笑みそして、家の前に着いた時大音量のアラームで駿を起こした。


駿が成し遂げた、記憶の上書き。それは仮想空間言わばVRの遊戯を生み出すきっかけにもなった。技術のヒントでもいいから欲しいと何百もの企業が金を出しそのヒントを得てVRゲームを生み出した。


そしてまさかそのVRゲームが今後二人の人生を左右する事になるとは、二人は思っていなかった。


十月四日の日が上り始めようとする時刻。

「なぁ。俺いつまでゲームやってればいいの?なぁ教えてよぉコトネェ・・・うおっぶ」

もう三日寝てない。死にそうな顔の駿は頬を膨らませ口の端からゲロが湧き水の様に出ていた。

「知るか!てかあんた少しは休みなさいよ!って袋袋!」

ガサゴソと袋を開け盛大に吐く駿。

「うおぇぇぇぇっ」

「うわぁ汚いわぁ・・・」

「ふぅ、スッキリした。さぁてもう二位とこんなに差つけたしもう寝ていいよな?!」

「まぁしばらくは寝れるわね。どうせあんた学校行かないんだし今日一日中寝てれば?」

「あぁ、そうさせてもらう。」

そう言って一瞬で布団に潜り込んだ。しばらく駿は起きなさそうだ。

駿が寝たのを確認したコトネは少し調べ物をしていた。

「ん・・・?何だろうこれ」

サイトを開いて出てきた無数の広告の中から、ただ真っ黒に染まった広告を見つけた。

気になるコトネは押そうか押すまいか悩んだ。

「勝手に押したら駿に怒られそうだなぁ。」

駿に怒られることはなんとかして避けたいコトネだったが、

「まぁ押してもすぐ戻って履歴消せばバレないか!」

押した。その瞬間―

そこはファンタジーだった。なんてことは無かったが、楽しげな音楽と共にポーカーが始まった。

「んー、駿起こすか!」

そう言ってポチッとな

ヂリリリリリリリリリィィィィ!

大音量の目覚ましを見舞ってやった。

「っんなぁ?!」

「オッキローシュンゲームノジカンダゾー!」

棒読み、機械質な音声でコトネは言った。

何が起きているかわからないが、ゲームと聞き駿はしっかりと目を覚ました。 「な、何のゲームだぁ?!」

「ポーカー」

「は?」

「いや、だからポーカーだってpoker!」

「はぁ、何なの、まだいたのかポーカーとかやる奴。モー飽きたぁー、ポーカーやだよぉー」

急にキモイぐらいに駄々をこねた駿にコトネが、まぁ一緒にやりましょと言い聞かせ黙らせた。正直このまま駿が駄々をこねてたら、まぁ言うまでもないだろう。

「んでー?ポーカーやるにしても掛け金はどーすんだよ」

「ゲーム内の通貨でやるらしいよ」

「ラッキー」

何か企んでいるのだろうか、口の端を吊り上げた。

「それじゃコトネ。一丁やるぞ」

完全にゲーマーモードに入った駿はもはや別人だ。同じくコトネも。

開始から十分が過ぎた頃、

「久しぶりにいい相手だ、だがまだ甘いな」

そう言い残して勝負は終わった。

十分。短いように思えるが、それは体感時間一時間に等しい長さだった。

「さぁて、ゲームは終わったことだし次の原稿さっさと上げねぇとな」

「そうだね、ホントさっさと上げないとね?」

コトネでは無い妙に怒気を孕んだ聞き覚えのある声が聞こえた。

「あ、三坂さんこんにちはぁ!」

「げっ、三坂!?」

駿の部屋の入口に立っていたのは、駿の担当をしている編集部の三坂愛奈。見た目はかなりの美人だが、怒りに満ちた表情が全て台無しにしてしまうのが残念だ。

「さぁて、駿くん。今までゲームしてたみたいだけど原稿は上がっているのかな?」

「よ、よぉ三坂サン。今日はどんなご用事で?」

「駿くん?原稿」

もはやさっさとそれを出せと言わんばかりの表情で詰め寄ってきた。

「いやぁそれはその、ねまだなんですよ!」

ハッハッハーと棒読みで笑う駿に対して、

「それじゃ駿くん、行こっか?」

「は?何処に?」

「部屋」

たったその二文字を聞いただけで、駿の顔が真っ青になった。

「すみません今すぐ書きますので許してください僕が悪かったですすみませんでした。もう金輪際迷惑をかける行為は致しませんのでお許しください。」

土下座をしながら必死に謝る駿を見て、

「仕方ないなぁ、一週間待って上げるから、ほんとに仕上げてきてよ?」

その瞬間、駿は顔をパァっと輝かせ、

「ありがとうございます三坂様!」

そして駿はすぐに仕事机につき、パソコンを打ち始めた。

そしてここから地獄の一週間が始まった。

最初の三日間は順調だった。溜まっていた内容を次々に文にし、誰が見ても順調だった。

四日目、駿は熱を出した。知恵熱という奴だ。

熱は一日で引いたが、どんな内容を書けばいいか悩んだ。

結果、戦意喪失。

五日目、駿は吐いた。しかし原稿を書かなければという気持ちが駿を駆り立てた。

再び内容が浮かびそれを書いていった。

六日目、明日は三坂と約束をした締切日だ。もはや駿には書く気力が無かった、が、その日の午後〇時に駿は狂った。

そしてこう言った。

「今夜はオールだぁぁぁぁぁ!ぐへへぇ!」

それを見ていたコトネは、かなり引いていた。

そして七日目の現在、

「ははっ、燃え尽きた・・・燃え尽きたぞ、真っ白にn」

死んだ?いや、寝ているだけだ。

そして三坂が来て、駿の部屋まで来た。

「駿くん、原稿書けたかなぁ?」

と言いながら、扉を開けると。そこには―

原稿持って倒れている阿呆な少年がいた。

「お疲れ様です駿くんよく頑張りましたね」

三坂は微笑んで言った、

「コトネちゃん駿くんにお疲れ様って伝えといてくれるかな?」

「はい、了解しました!」



先週ギリギリで原稿を書き上げ死にかけた駿は、今日何をしようかと考えていた。

「コトネ〜そういえば今日って第十二回の新人賞発表日だったよなぁ?」

「うん、そだよー」

第十一回で新人賞を受賞した駿は今回はどんな人物が受賞するのかが少し気になっていた。

「しかし暇なもんだな、何も無いってのは」

「うん、そだねー」

「コトネ、お前それ何やってんだ・・・・?」

「あーこれ?ちょっと駿のエッチな写真が沢山入ってるファイルを片っ端から消してるんだy」

「お、お前何してくれるんだ!今まで作り上げてきた俺の最高の美女軍団が?!」

「まぁまぁそんな怒らなくていいじゃん、嘘なんだから」

「へ、嘘?」

「うん、今はちょっとゲーム感覚でウィルスを撃墜してるんだー」

「お前、またそんなことしやがって・・・」

「そんなこととは何よ!私は無料でウィルスバスターやってんのよ!」

「あぁはい、わかりましたありがとうございます。」

駿は呆れながらも、ぷりぷり怒るコトネの姿がちょっと可愛いと思った。


ーーー同時刻ーーー


闇に包まれた空間の中、無機質な電子音とファンの音の中、一人の痛々しい少女はそこに佇んでいた。

「クックック、待っておれ佐藤駿よ。いずれこの私がお前を貶めてみせよう」

不気味な笑みを浮かべる少女は会ったことも無い人間に対してそう呟いた。











『恋愛アンチ×女嫌い=俺』第三章をご覧いただき誠にありがとうございます。

どうも日々傷人です。

前回からかなり遅めの投稿となってしまいました。

まぁ見てくれる人はいないのですがね(笑)

でもまぁ小説家になりたいっていう夢を叶えるために日々精進していきたいと思っています!



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