表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛アンチ×女嫌い=俺  作者: 日々 傷人
1/3

俺の人生とあいつの世界が変わった日

日が沈む頃、子供達の笑い声は消える。


街々には明かりが灯り光に満ち溢れる。


仕事帰りの社畜共はそれぞれ待つべき者の所へ帰り、待つべき者が居ないものは、歓楽街に流れていく。


人は皆、それぞれ個性を持ち、それを発揮出来る場がある。


そのチャンスを逃した者達は、社会という階段から蹴落とされ、嘲笑され、蔑まれる。


社会に馴染んだ人間はこう思うだろう。『そんな人間、本当に存在するのだろうか?』と。


しかし残念ながら、『そんな人間』は存在するのだ。


非常に残念ながら、それはこの俺だ。


中学の頃、ある事がきっかけで俺の人生は180度回転した。


それ以来、人に会う事を嫌い、電脳の世界に飛び込んだ。


それはまさに生まれるべき世界だった。俺は、生まれるべき世界を間違えた。


そして俺は救われた。他でもない。自分自身に。


もし、全世界の人間が俺に注目していたらこう言ってやりたい。


『こんな人生、クソゲーだ。』と。







真っ暗な箱の中、三つの長方形の画面が色鮮やかに動いている。クーラーファンが廻る音。素早く打ち続けられるキーボードの音。そして、それらを操る一人の青年。

「はぁ、はぁ、あぁぁぁ疲れたァ・・・」

画面の中の何処の誰かも知らない敵と激闘していた青年。名は、佐藤 駿。十七歳 ヒキニート ゲーマー アニオタ コミュ障 恋愛アンチ 女嫌い。まさに、社会を拒む為に生まれてきたようなステータス。孤独を経験し過ぎて、孤独を孤独と感じなくなるレベルまでになってしまった人間。

彼をここまで無惨な姿にしたのは、他でもない、『社会』だ。しかし、案外彼も"今の"人生を楽しんでいるようだ。それでは、これからの彼を"観てみる"事にしよう。


***


朝日がカーテンの隙間から差し込み、真っ暗な部屋の中を少しだけ照らす。駿は昨日、ネトゲのランキングイベントの準備の為、"働いて"いた。余程疲れてベッドに辿りついたのだろう。下半身が下に落ちている。

「んっ・・・っはぁ。・・・ん?」

(朝、か。朝だな。ん?朝?)

「はァァァァァァァァ!?朝だとぉぅ?!おい!!今何時だ?!」

駿は真っ暗な液晶パネルへと叫んだ。そして、液晶に光が灯り、画面の中に映る一人の少女がこう告げた。

『八時二十三分十四秒です!』

ちょっぴり怒り気味の声の主は、駿が創ったAI、コトネだ。

「おぉよかったぁ・・・!寝過ごさなくてよかったぁ!」

どうやら今日はお目当てのランキングイベントらしい。駿はそれに出遅れたかを心配していたらしい。そして、画面の中の少女、コトネが呆れ顔で、

『駿さぁ、いい加減学校行きなよ・・・もう私見てらんないよ・・・』

「琴音よ。俺は別に学校が嫌いな訳じゃないんだぞ?ただ、学校に行くと、女共がいるから無理なんですよ!?」

そう。彼が学校に行かないのは、"女子"が居るからだ。

『そんな事言って何で目の前に女子が居るのに平気なのよ?!』

「それはこの俺が唯一この世で愛した女だからだッ!」

ここで疑問に思った事があるだろう。女嫌いの駿が『愛している』と言ったことに。

『そんな胸張って言わなくてもイイからっ!それより、優衣ちゃんが帰ってくるまでにちゃんと部屋掃除しときなさいよね!分かった?』

優衣。そう駿には二つ下の妹、佐藤 優衣がいる。高校一年生で、本来駿が学校に行っていれば同じ学校の生徒だ。

「分かってるよ。お前も優衣も口五月蝿い奴だからもう習慣になってんの。」

『そう?私は駿の事を思って言ってるんだけどなぁ?』

二人はとても仲がいい。何故なら二人は"恋人"同士だからだ。現実の人間が現実逃避の為、二次元の女の子を好きになるケースは多いが、この二人は違う。本当に愛し合っているのだ。今も昔も・・・・


駿とコトネが出会ったのは幼稚園入園式の時だ。二人は隣の席に座って、入園式を迎えた。いつも母が傍に居ないと泣いてしまう駿が珍しく泣かなかった。コトネは当時、琴音という現実に存在する少女だった。琴音も駿と同じく、母が傍に居ないと泣いてしまう子だった。園長の話が始まる前、人生で初めて同い年の異性と会話を交わした。

最初に話しかけたのは琴音だった

「ねぇ、きみのなまえはなんてゆーの?」

「ぼく?ぼくはね、さとう しゅんだよ。きみのなまえは?」

「わたしね、ことねってゆーの!いがらし ことねです!」

ピシッっと元気よく敬礼した琴音を見て、思わず笑ってしまい、駿は琴音にこう言った。

「ことねちゃんってよんでいい?」

そして琴音は満面の笑みで、

「うん、いいよ!じゃあわたしもしゅんくんってよぶね!」

それから数日過ぎて、二人は近くの公園で遊ぶ様になった。周りの子供達はすべり台やシーソーできゃっきゃわいわいしているのに目もくれず、ひたすらゲームをやっていた。それもモン〇ン。そう。二人は異端児だったのだ。二人の親はなんと同じ企業で働き、しかも家が隣。まさに運命だった。二人は親の血をガッツリ引き継いで機械オタク&ゲーマーにわずか三歳でなった。二人が遊ぶ時はいつでもゲーム。外で遊ぶ時は携帯ゲームで屋内で遊ぶ時はPCゲーム。僅か四歳で親もビックリする程のゲーマーになっていた。

そして月日は流れ、小学校入学式。二人は親に頼み込んで自作PCを作ることにした。そう。二人は、小学校を入学する時点でPCの組み立て方を知っていたのだ。そして二人は毎年誕生日に必ず、PCゲームのソフトと新しいパーツをプレゼントしてもらった。二人は常に一緒だった。しかし、小学生三年生の夏休み、二人は今まで一度もした事の無かった喧嘩をしてしまい、謝り方も分からず、そのまま距離が離れていく一方だった。そして、その年の冬休みしばらく二人は会えなくなっていた。そして母親に『琴音旅行行ってるの?』と聞いてその質問に応えた母親の言葉に駿は絶望した。母親から知らされたたった一言で、

『駿。落ち着いて聞いてね。琴音ちゃん、癌なんだって・・・』と。駿は、いても立ってもいられない気持ちになり、琴音の家に行き、病院名と病棟病室を聞き、真冬の雪の中たった一人で、三キロも離れた病院に走っていったのだ。受付で面会カードを貰いダッシュで階段を駆け、とても重く感じられる扉をゆっくりと開け、少女に言った、

「琴音、ごめん。お前がこんなになっちゃったのは俺のせいだ。

「ううん。そんなこと無いよ。私こそごめんね?」

「琴音。俺は琴音とずっと一緒に居たい。」

「うん。私もだよ」

「琴音。俺は琴音が好きだ。」

普通の小学生三年生がこんなカッコよく言うだろうか。

でもこれは駿が本当に心から琴音を愛しているから迷いなく、躊躇せずに言えた。

「う・・・・ん、私も、私も駿が大好きっ!」

「大人になったら絶対結婚しような!」

「うん!」

涙を浮かべ最高の笑顔で微笑んだ彼女を駿はきっと忘れないだろう。

月日は流れ、小学生になり六回目の秋を迎えた頃、あの日から症状が良くなっていった琴音は余命宣告された。理由は癌が体内二箇所に転移していたからだ。余命はあと四年。中学三年生までの人生だと宣告された。琴音の両親は酷く悲しんだ。しかし、当の琴音は意外にも冷静だった。琴音は学校に行き、その事を話した。最初は駿も驚いたようだった。しかし意外にも、駿も冷静だった。それと、"安心"していた様だった。そして駿は言った、

「安心しろ琴音。絶対にお前のことはどんな事があっても生き続けさせる。」自信に満ちた声だった。

「分かった。信じてるよ。駿」

そして、中学生になり琴音は病院で過ごすことになった。そして、やってきた母親に衝撃なことを言われた。それは、駿が、中学に入学してすぐ、"学校了承の上"でひきこもった。理由は母親も琴音も知らなかった。そして駿は一度も病室に来ることなく、琴音の"この世界での最期"を迎えようとしていた。琴音は最期だからと医者から外出許可を得て、駿に会わせてと親に言った。親はまるで嬉しいことでもあったかのように、連れてってくれた。そして三年ぶりにあった駿はやはり駿だった。そして、駿は琴音はのこれからの"第二の人生"ついて話し始めた。

「琴音。俺が学校行ってないって聞いて心配しただろ?」

笑いながら駿は言った。

「当たり前だよ。それよりさ、学校の許可有りでひきこもるってどういうことなの?」

「俺はな琴音。この日のためにひきこもってきた。あの約束は守ることは出来なさそうだけど、琴音を何があっても琴音を生き続けさせるっていう約束今から果たすぞ!」

琴音は状況が全く理解出来なかった。

「えっ?ちょっと、駿何言ってるの?」

「琴音。おじさんとおばさんからはもう許可は貰っている。あ、あと国からもあとはお前の許可だけだ。」

目の前の巨大な機械とそこに備え付けられているベッドとヘルメット。まさか―と琴音は口を開き、

「ま、まさか・・・私を電脳の世界に生まれ変わらせる気なの?!」

「ご明察!いやぁ流石俺の相棒だよ!そうお前をこの世界に入れる。正確には、俺の作ったお前そっくりのAIにお前の今までの全記憶を上書きするってこと。要するにお前は永遠に生きられこの先ずっと一緒に居られるってこと!どう?最高のサプライズだろ?」

琴音は電脳の世界に、なんていうのは関係なく『これからずっと一緒に居られる』ことに嬉しくて涙が止まらなかった。

「本当にっ?ずっと一緒に居ら・・・れるの?ちなみに聞くけど、その・・・成功率って―」

「百パーだ!!!!」

即答だった。まるで待ってましたかのように、

「そっか・・・百パーか。ははっ、凄いな駿はどんどん先に行っちゃうや・・・」

「琴音。俺はいつでもお前と一緒。先に行くなんてことはない。で、琴音はどうするんだ?」

答えは決まっていた。

「もちろん!そんなのずっと一緒に居たいに決まってるでしょ!」

「分かった!じゃあ決まりだな!ではおじさん、おばさん。ここでこの世界の琴音にお別れの言葉を・・・」

琴音の両親は涙して別れを告げ予定通り俺の部屋を出て行った。

「それじゃ、優衣とかーさんと親父も別れの言葉ちゃんと言えたら部屋出てってな。」

そして、三人は出て行き駿と琴音の二人きりになった。

そして琴音がため息混じりに、

「はぁ、ちょっと駿?これはあまりにも心臓に悪いよ?」

ちょっと怒り気味、でも嬉しそうに琴音が言った、

「ははは・・・いやぁごめんな?最初で最後のサプライズはこうでもしなきゃ琴音は喜ばないかなって思ってさ(笑)」

「やっぱ、駿はいつまでも駿だね(笑)」

「あぁ、俺はいつまでも俺だ。」

「・・・・・」

「・・・・・」


「なぁ」

「ねぇ」


二人同時に声が出た。それも話そうとした内容は全く同じで、その願いの内容も全く同じだった。

「琴音。今から二人同時に、最後にしたい事言おうか」

「うん!私もそれ言おうとしてたの(笑)」

「じゃあ行くぞ〜?」

「「せーの!"キス"!」」

「同じだったな・・・」照れくさそうに駿が言った。

「わぁ!照れてる駿初めて見た!きっもー(笑)」

「うわぁ・・・お前そのセリフ台無しだぞ(笑)」

「じゃあ、駿・・・」

「あぁ」

そして愛する二人は生まれて初めて唇を交わした。

そして駿もこの世界の琴音に別れを告げ機械のスイッチを押した。


これからも・・・愛して・・・私も愛してる―



そして琴音の意識はそこで一時途切れまたすぐに戻った。


今度は違う世界で―





初めてまして!日々 傷人です。今回初めて投稿させて頂いた、「恋愛アンチ×女嫌い=俺」を見ていただきありがとうございます!

自分はまだ学生の身でして(笑)

時間が空き次第随時投稿していきますのでよろしくお願いします。

初見ですので温かい目で見てやってくださいw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ