表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣に転生したんだけど  作者: たぬたろう
第一章 勇者が現れないんだけど
4/26

第四話 チートしてみたんだけど

*前回のあらすじ*


 皇帝さん一家が来て楽しくおしゃべりしました。(皇后除く)

 それからたびたび来てるそうです。

「やぁ聖剣殿。」

「こんにちわ聖剣様。」

「おう二人共いらっしゃい。おもてなし出来ないがゆっくりしてけよ。」


 皇帝さん御一家と出会ってから一ヶ月。

 ちょいちょいこの二人は来るようになった。

 レネ爺の許可があるから・・・なんてことはない。

 なんとあのお母様(女神様)もお告げとして許可を出したのだ。

 もう世界公認、むしろ行かない方が不敬になる。

 まぁ、あのクソババァは来る気無いみたいだけど。

 むしろこっちから願い下げだ。


「んでだ。前話した行政改革上手く出来そうか?」


 行政改革。

 ぶっちゃけそこまで大層な事じゃない。

 戸籍作ったり街に番地つくったりと前世での知識を教えただけだ。

 無論この二人には俺が転生者であることは教えていない。

 この世界は二人の話からすると街の様式や行政などは中世位、技術は魔法があるから現代と遜色はないだろう。

 だからこそ行政チートできるのである。

 前世の記憶は無いが知識があるおかげでこういう時助かるね。


「なかなか画期的なのだが頭の堅い連中が多くていかん・・・。もう少し掛かりそうだな。」

「しかし聖剣様の話してくれた事は画期的ですわ。あれが実現出来れば民の生活はより良くなります!」

「うむ、しかし実現した場合の報酬は本当にレネゲード老に渡せばよいのか?」

「当たり前だろう?ここに突き刺さってる俺が金持っててもしかたねぇし。まぁレネ爺なら俺のために使ってくれるだろうしな。」

「なるほどの。まぁ剣なのだから何かを買うなどは出来ぬからな。」


 そうそれだ。

 いくら行政チートや技術チートしてお金を稼いでも俺はしょせん聖剣。

 ここから動く事は出来ない、金を使うことも出来ない。

 一番気になってるのはこの世界の食事だ。

 主食はパンらしいのは聞いている。

 食生活もチートしたいがまぁそれも難しい。

 だって食べにいけないから!!

 本当に聖剣ってのは不便だ。


「そうだよなぁ。人間だったら色々楽しそうなんだが今の俺じゃあ何も出来ん。」

「そうだな。貴殿が人間だったらうちの娘を嫁がせても良いと思えるほどだからなぁ!」

「お父様!?」


 お~真っ赤になってまぁ。

 美少女の赤面とかご褒美だね!

 イリーナちゃんは事あるごとに皇帝さんと俺にからかわれ赤面してくれる。

 800年間なかった潤いだからありがたや、ありがたや・・・。


「お姫様は俺好みの美少女だからとても素敵な提案だけど、あんたのお妃様は苦手だからそこだけが問題点だなぁ・・・。」

「聖剣様!?」

「はっはっはっ!本当に貴殿が人間じゃないのが惜しいのぉ!余の息子に欲しい!」

「もう!知りません!!」

「まぁ俺は担い手が現れるまでここで歴代皇帝の話し相手になってやるさ。」

「うむ。本来なら余の城に貴殿を安置し、相談役となって欲しいがな。これ以上の無理は言うまい。」


 まぁ本来なら皇帝さんにでも担い手となってもらい帝国に安置されたいとこだけど、お母様(女神様)もレネ爺も許可をくれないから仕方ない。

 二人が言う、過剰な戦力による世界の混乱というのもわかるからしょうが無いね。

 俺って世界最高峰の剣だし、勝手に魔法唱えれるし、女神様製作だし。

 あぁ・・・、なんて偉大な俺・・・・。

 なんて自惚れるかァ!

 800年ここで暇してるだけの剣だぞ?

 武器ってのは使われて初めて価値を持つんだよ!

 800年間使われたことない剣なんぞにそこまでの価値はねぇよ!!

 ただの鉄の棒だ!いや、鉄の棒の方が価値がある!

 邪神とかでも異世界の魔王とかでもなんでも良い!世界の危機来い!!

 俺を活躍させろ!!


「まぁ俺は最初の担い手が決まるまでずっとここだからな。300年前に引きぬかれてりゃ良かったんだが・・・。」

「ぬ?300年前と言うと魔王オベイロンとの戦争か?あの戦争は主を引き抜いた勇者が魔王を討ったと聞いたのだが違うのか?」

「私達の歴史ではそうなってますよ?」


 これあれだな。

 不都合な歴史は隠蔽してそれらしい歴史を作り上げたな。

 俺がここにいるのは当時の戦争中も有名だったとレネ爺は言ってたし。

 前世でも似たような事はあったと思うし、真実なんて隠そうと思えば簡単に隠せるからな。

 なんといってもあの討たれ方はとてつもなく不名誉だろう、互いに。


「違う違う。当時を知っている歴史の証人として言うが、あの戦争で魔王を討ったのはその妻だ。理由は浮気だ。」

「なんと!?魔王が浮気で刺されたと!?あっはっはっはっはっ!確かにそんな事、歴史書に載せれんなぁ!」

「まじだよ。当時レネ爺がとてつもなく申し訳無さそうに勇者が居なくなった事を教えてくれたからな。」


 そう、俺が活躍できると信じたあの時、魔王はあっけなく討たれた。

 人間側が不利になり、勇者が召喚され、世界の危機とも言える状況だったのに。

 俺がこの洞窟から出る千載一遇の好機。

 魔王軍が絶好調で浮気して、妻にバレてその末に刺されるなど・・・。

 思い出しただけでも絶望する・・・。

 勇者に引き抜かれるその時までここに居ないと行けないのに勇者が来る間際だったのに・・・。


「せっかく勇者が俺のとこに風の大精霊を寄越してまで位置確認したのにさ・・・、その直後に刺されて死んでるんだぜ?あの時の絶望と言ったら・・・。」

「なるほど、歴史については貴殿に聞くのが一番いいやも知れぬな。」

「レネ爺からの話だから、多少の誇張や細かい事は知らないけど大まかな事は知ってるぜ。」


 むしろ俺にとっての世界とはここの洞窟だけだからな。

 俺にとって外の世界とは今までレネ爺から聞いたことだけだからな。

 まぁ当時の情勢やら有名な人間についてはだいたいレネ爺に調べてもらっている。

 歴史書よりかは多少詳しく正しいはずだ。


「他にも魔法も習ってるし。帝王学なんてのもレネ爺から学んでる。字について以外ならだいたい教えれる程度には憶えているよ。」

「それでしたら女神様にお願いして、ここに歴代皇帝となる者を勉強の為に住まわせたらどうでしょうか!」

「いや、駄目だろそれ。」

「なんでですの?」


 皇帝さんは俺の意見に同意らしいが、やはりイリーナちゃんは皇帝として必要な事をわかっていない。

 皇帝は一人で皇帝となるわけじゃない。

 配下になる貴族達とのコネクション、部下になる騎士や兵士達との繋がり、民の暮らしについて。

 そういった各所との繋がりや、各所において何が必要かを知るのは大事なことだ。

 それにここに居たら何かあった時に、即時対応が出来ない。

 そういう現皇帝の行動も知っておかねばならない。

 国を治めるってのは結構難儀なものなのだ。


「俺との繋がりの為にここに数日泊まる位なら良いが、勉強の為にとなると長期に渡る。それに俺じゃあ字も戦い方も教えれない。他にも王になる者は繋がりが大事だしな。勉強だけすれば王になれるわけじゃない。」

「まさしく聖剣殿の言う通り。勉学だけしておけば皇帝になれるわけではない。勉学以上の事が王には必要なのだ。」

「良い案だと思いましたのに・・・。」


 というかイリーナちゃんは俺との会話目当てな気がするな。

 この一ヶ月間、一人で何度かここまで来てるし。

 あんまお姫様がそんな事したらあかんと思うんだけどなぁ・・・。

 騎士の皆さんも心労が恐ろしい事になってるだろうし。

 あぁ、こんな美少女に好かれるなんて、罪深い俺・・・。


「ここから帝国までそこまでの距離ではないけど、イリーナちゃんもあんま一人で来たらいかんよ?この山は聖域で魔物や野生動物の数はほとんど0だけど。確実に居ないってわけじゃないんだから。」

「そうだな。皇女として、もう少し自覚を持ってもらわねばな。」

「う~。」


 俺と皇帝さんに徹底的にいじめられて声も出なくなったイリーナちゃん。

 可哀想と思う反面、やっぱこの娘は皇女様なんだからもうちょっとお転婆なとこや思慮の浅い部分をなんとかしないといかん。

 心を鬼にして俺を慕ってくれる娘を叱らなければな。


「産まれは選べないがやはり皇族として産まれた義務ってやつはあるからな。生きる者には義務と権利がある。その義務を蔑ろにして権利を主張してはいかんよ。」

「やはり貴殿が剣なのが惜しいな。皇族としての心構えや必要な事を熟知している。」

「よせやい照れる。それにこんな生意気なの皇族にしたら恥ってもんだぜ?」

「そこも余が貴殿に好感を感じる所だ。」


 好感度メーター低すぎません?

 なんか出会った時からこの人、好感度メーター振り切ってる気がする。

 何がこの人の心に響いたかわからんけど、皇帝としてこれでいいのかちょっと不安になるな。


「まぁその好意、ありがたく受け取っておくよ。」

「やはり貴殿は気持ちのいい男だ。剣に性別があるのか謎だがな。」

「魂は男だよ。」

「私も聖剣様に好意を向けてますよ?」

「「知ってる(おる)。」」


 皇帝さんと一緒になってまたイリーナちゃんを真っ赤にさせる。

 このやりとりもう恒例だな、うん。

 しかしなんだろう、 皇帝さんとのこの一体感。

 小さいころから悪友同士だったそんな感じ。

 昔・・・、前世でそんな友人が何人か居た記憶がある。

 曖昧だが五人組で、こんな馬鹿なやり取りをして笑い合ってた、そんな記憶。

 胸が締め付けられるような気がする。

 今は剣だから涙は出ないがそれでも泣きそうな、そんな気分だ。

 いつか、前世を思い出す事があるのだろうか・・・。

 最低でもその悪友五人を思い出したいものだ・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ