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聖剣に転生したんだけど  作者: たぬたろう
第一章 勇者が現れないんだけど
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第一話 暇なんだけど

 俺の前の名前は笹塚大地。

 なんで前の名前かって?

 2018年の蒸し暑い夏、俺は死んだからだ。

 理由は簡単だ。

 よくある交通事故。

 そんな生きてれば誰でも遭う確率のある、ただの交通事故で俺は死んだ。

 だから諦めた。

 死ぬ間際、誰かが何かを叫んでいたのは憶えている。

 けどそれが誰なのか、そんな事は思い出せない。

 なぜって?

 自分が元学生で、死んだ時の事しかはっきり憶えていないからだ。

 確か本を読みながら道を歩いていて、誰かの叫び声が聞こえて次に衝撃。

 まぁ、人生そんなもんだ。

 平和な時代だったけどそういう事故で死ぬ人は居るし、人に殺されるような事もある。

 生きてりゃいつか死ぬだけだからそれが遅いか早いかの違いでしか無い。

 そりゃぁもっと生きていたかったが、運が悪かったと俺は諦めている。

 うん、死んだことは諦めている。

 けどな?けどな?


「なんで生まれ変わったら剣になって独り洞窟に放置されてるんだよ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 そう、俺は剣になった。

 ただの剣じゃない。

 勇者が引き抜く為の聖剣ネオガイアだ。

 けれど俺が聖剣に転生してから約500年。

 誰もここに来やしねぇ・・・。

 いや正確には俺という聖剣の担い手が来ない。


「なんじゃあ?また叫んでいるのか?」


 また来たよこの爺・・・。

 いや悪態ついてるけど俺が年数わかったり、こんな洞窟に動けないぼっちで心壊さないでいれるのはこいつのおかげだ。

 うん、感謝している。


「まぁ気持ちはわからんでもないがの。とりあえずチェックするぞ?」

「あぁ頼むよレネ爺。」


 この爺の名前はレネゲード。

 俺が神様に作られ、ここに封印された時に聖剣の手入れなどそういう細々したメンテナンスをする大精霊だ。

 以来500年ばかりこの爺だけが俺の会話の友だ。

 まぁたまに他の大精霊が来たりするけどあいつらには時間の概念がとても薄い。驚くほど薄い。

 200年ほど姿を見せなかったのに突然来て「やぁ昨日ぶりだね~。」とか言ってくる。

 それに会話も一方的。

 まぁレネ爺は大精霊でも特別で時間の概念があるし、ちょくちょく俺の手入れもしているから良い話し相手にもなる。


「んで、前言ってたあの国どうなったよ?」

「あぁリバルド王国か。どこまで話したっっけ?戦争だけだったか?」

「そうそう、一ヶ月立ってんだ。勝敗ついた?」

「いやずっと膠着状態だ。魔族軍は手強いから善戦してると言えようて。」


 一ヶ月前レネ爺が来た時に聞いた話しでは人類の国と魔族の国が戦争を始めたらしい。

 理由は簡単だ、現魔王オベイロンによる世界征服宣言。

 それの実行だ。

 リバルド王国というのはそこまで大きい国じゃない。

 ただのよくある商業国家だ。

 装備は一級だが兵の練度はそこまで高くない。


「つまり他の国家から兵を、武力を買ってるわけか。まぁ商業国家じゃ武力なんて買うものだろうしな。」

「そうじゃ。やはり主は頭が良いのぉ。」

「当たり前だ。転生者なめんな。」


 俺は女神様に作られてここに封印される時、自分の状況を聞くと共に自身の事も女神様とレネ爺に話している。

 ただの聖剣として作られたのに突然話をしたからその時、女神様とレネ爺は固まった。

 まぁインテリジェンスアイテムという基本的に無口で必要以上に話さない奴と違って俺はとても流暢に、ぺらぺらどうでも良い事を話しだしたからそりゃ思考の一つや二つ止まるさ。


「しかしほんに不思議な話じゃのぉ?武具が意志を持つ事は稀じゃがよくある話・・・。だが、転生した者が宿るなど聞いたこともないぞ?」

「そんなの知るかよ。女神様だって目を丸くしてただろ?」

「そうじゃのぉ・・・。まぁ聖剣は担い手を選ぶ。大地が聖剣としての役割を果たせば何も問題無いじゃろうて。」

「それより続きだよ続き。他の国家の様子はどんなだよ?」

「ふむ、三大国家の一つが魔族、いや魔王オベイロンに対抗する手段として英雄召喚をしようとしておるらしい。」

「おっ!それはつまり!!」


 英雄召喚。

 なんとわかりやすい事をしてくれるんだ!

 やっと俺がこんな洞窟からおさらばして世界に行ける!

 長い!長かった!!

 転生して500年!

 やっと俺はこの世界を見て回れる!

 ありがとう魔王!

 お前のおかげで俺は世界に出れる!


「そうじゃ。大地の担い手として相応しい者が召喚されるはずじゃろうて。」

「おぉ!やっぱりか!あぁ!長かった!本当に長かった!!」

「儂はしゃべり相手のお主が居なくなると寂しいがのぉ。」

「ならレネ爺もくりゃいいじゃねぇか!レネ爺がいりゃ何かあってもすぐ俺をメンテナンスできるだろ?」

「ほっほっほっ。儂を旅の仲間に誘うか!それも勇者でなく、勇者すら現れていない聖剣が!良いのぉ。やはり大地は面白い。」


 大笑いしながら俺の柄の部分を叩いてくる。

 そんな叩いたら折れるぞ俺は。

 女神様製作の神話の剣が簡単に折れるとは全く思わないが。

 まぁこれは気分の問題だからな。


「なら将来の共の為に勉強を再開するかのぉ?今まであまりやる気はなかったようだが主も魔法を覚えるべきじゃろうて。」

「つってもなぁ・・・。感覚すら違うじゃねぇか?基本は出来てるけど難しいと思うぞ?」


 そう。俺は何度もレネ爺から魔法を教わった。

 けれど世界を掴む感覚だとかそんな事はわからなかった。

 まぁ大精霊の感覚に人間と聖剣としての感覚しか無い俺が対応出来るはず無く、基本の魔力操作しか使えなかった。


「まぁ何事もやらねば出来ぬよ。それに人間達に紛れて過ごすうちに人間達の魔法の教え方も学んだ。さぁまずは初歩魔法からやるぞ。これからチェック以外の日も来て教えてやろう。」

「へーい。」


 まぁ何事も習うより慣れだ。

 レネ爺が頑張って俺のためにやってくれるんだ。

 やらないってのはこの貴重な喋り相手を失う事にもなるしな。

 洞窟ぼっちスタートです。

 転生してからすでに500年経過してますが気にしないでください。

 基本レネ爺とだべってただけの暇人の話ですから!

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