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俺と馬鹿と日常と

次はある学校の日常風景。

それでは心逝くまでお楽しみください

「彼女が欲しい!!ツンデレでも、ヤンデレでも、デレデレでもいいから、とにかく俺は美人の彼女が欲しい!!

 要望できるなら、ボン、キュウ、ボンのスタイルの良い美人の彼女が欲しい!!」

 

 前の席に座る、親友と呼べる付き合いのある馬鹿が笑顔で叫ぶ。

 そんな馬鹿の発言に、少し考えてしまう。

 ツンデレ、ヤンデレは分かるが、デレデレはどうなのだろう?

 なんだか軟体動物みたいにフニャフニャした姿しか想像できないのだが。

 そこまで考え、まずは馬鹿にツッコム。

 

「お前は突然何を言っている?」

 

 昼休みの教室。

 教室にはクラスメイトが思い思い集まって昼飯を食べたり、おしゃべりをしていたりする中での馬鹿の発言。

 クラスメイトは、いつものことなので全員何事も無いように流している。

 新学期当初は、いちいち馬鹿の発言に驚いていたのに……。

 あの頃のクラスメイトの姿が懐かしい。

 思わず過去を振り返り、涙が出そうな私に気づかず、馬鹿が意気揚々と先ほどの発言の意味を話し始める。

 

「だってもう俺達高校二年だぞ。

 それにもうすぐ魂が燃え、心震える夏が来る。そんなときに美人の彼女が隣にいてみろ、人生がバラ色に変り、男度が増し、ついでに大人の階段も登れるかもな。HA-HAHAHA!!!」

 

 無駄に発音が良い外人笑いが頭にくるが、まあそれはいい。

 馬鹿の発言の理由がわかった。

 夏の暑さで、もとからおかしい頭がさらにおかしくなったのだろう。

 そう考えると妙に納得できてしまった。

 

「それに去年のことを思い出してみろ。あれはあれで楽しかったが、それでも俺達だけじゃ何か物足りなかっただろう?」

 

 その言葉に、去年の夏のことを思い出す。

 

 海に遊びに行き、海水浴を楽しみ浜辺ではしゃぎまわった。

 

 後日、砂浜に埋め、首だけ出た親友の姿を見た他の海水浴客が、首が転がっていると通報し警察が来る騒ぎに、掘り出された後一日中説教された。

 

 山にキャンプに行き、盛大なキャンプファイヤーと花火を楽しんだ。

 

 後日、キャンプファイヤーで使った大木が、近所の神社にあるご神木であったと発覚。神主に一日中怒られた。

 

 街に遊びに行き、目的も無く一日中街を散策した。

 

 後日、親友一人無謀にもナンパに挑戦し、99人の女性に声をかけるが、あっさり振られ、100人目の女性に声をかけると、そのままボッタクリバーに連れこまれていた。

 

 …………親友はあれらの出来事が楽しかったのか?

 夏休みの半分を怒られていた気がするのだが。

 

 まぁ昔からの付き合いだから知っているが、とにかくこいつは前向きな馬鹿なのだ。

 

「彼女が欲しいというのは分かるが、美人限定なのか?

 クラスの女子の中には、彼氏のいないフリーの可愛い子はいるよ」

 

「馬鹿野郎!!俺に釣り合うのは美人だけだろう。

 クラスの女子なんか眼中に無い!!」

 

 ……なぜこいつはそこまで自分の容姿に自信満々なのだろう?

 

 そして教室にいた女子、缶や教科書などの物を投げるな。こっちにまで流れ弾が飛んでくる。

 

「うわっ、なんで女子達が急に物を投げてくるんだ?近くに虫でもいたのか?」

 

 親友は物を投げられた理由すらわかっていない。

 ここまで鈍いとある意味人生楽しいだろう。

 

「……お前は幸せだな」

 

「おうよ、これで美人の彼女がいればもっと幸せだぜ」

 

 時々こいつが羨ましくなる。

 本当に時々のことだけど……。

 

 

 

 

 

「ところでお前は彼女ができたら何をするつもりなの」

 

「決まっているだろう、彼女が美人なのだからすることは一つしかないじゃないか」

 

 自信満々の親友の口ぶりを見ていやな予感しか覚えない。

 

「そう、裸エプロンで台所に立ってもらい、愛情こもった料理を作ってもらう。

 彼女にそれを期待しないでどうする!!!!」

 

 親友は拳を握り熱く語る。

 待て、女子達。そんなゴミを見るような眼をするな、それと私この馬鹿から離れるまでその持ち上げた机を投げるな。

 そして男子。全員立ち上がり涙流しながら拍手を送るな!

 また馬鹿が勘違いするだろう!!

 

 俺は弁当を持って席を離れると同時に、親友の方に机が飛んで行き、親友の悲鳴が教室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 弁当を抱えながら、それを離れた場所で眺める。

 これもクラスのいつもの見慣れた光景。

 たぶん今年の夏も例年通り、私と二人で過ごすことになるだろう。

 そんな俺のもとに机を投げ終わった委員長が言い実にイイ笑顔で近づいてくる。

 

「いいのあんなこと言われて、せっかくあなたみたいな女の子が近くにいるのに」

 

 その言葉に顔が真っ赤になる。

 言うなそんなこと、今はあいつの横にいるだけで幸せなのだから。

 あいつは馬鹿だから気付かないだろう、私があいつを好きだなんて、でもだから恥ずかしがらずにいつも近くに入れるのだ。

 

 今年の夏も、あいつと心に残る馬鹿騒ぎの夏を二人で過ごそう。


よろしければ次の話もご覧ください

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