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アリス先輩と僕の無謀な計画

次は二人の新米神様の話

「やっぱり神様となったのだから、人の前に現れる時には神らしく神々しい派手な演出で登場したいと思わない?」


「僕達今まで一回もそんな機会無かったですよね。ですから、今は別にそんな登場演出考えなくていいですよ」


 書類仕事の手を休めないまま、僕はアリス先輩に冷たく言うが、言って素直に聞くようなアリス先輩ではない。


「やっぱり呼びかけたと同時に、いきなり目の前に後光を背負いながら現れるのが王道かしら?それとも今はやりの何もない不思議空間に連れ込むのが良いかしら?

 後輩君はどっちがいいと思う?」


 小首をかしげながら可愛く聞いてくるアリス先輩に、僕は書類仕事の手を止めて答える。


「まずは、目の前にある仕事を片付けるのが良いと思いますが」


 僕の机の上の書類はあとわずかで無くなりそうだが、先輩の机の上にはまだ山のように積まれた書類が残っている。


「イヤよ。どいつもこいつも碌な願いをしてこないじゃない。

 そんな欲に塗れたお願いに目を通すなんてお断りよ!!」


「それでも目を通して下さい。

 通さないことには、アリス先輩の言う派手な演出が必要な願いがあるかどうかわからないじゃないですか」


 僕の言葉に「うっ」とつまり、しぶしぶ仕事に先輩は書類に目を通しハンコを押していく。






 もともと僕達みたいな新米の神様は自分の社を持たない。

 人の願いを叶えることで、成長する神様にとって社が無いうちは、願いを叶える機械などそうそうない。

 そこで新米のうちは、近くにいる神様のもとにアルバイトさせてもらい、こつこつと小さな願いを叶えるのだ。


 そして現在、僕達はアルバイト先である神様のもとに届いた願いを吟味して、叶えるかどうか決めている。






 それからしばらくして、書類仕事が一段落した僕はまだ掌類と格闘する先輩のためにお茶を沸かす。


「それにしてもアリス先輩。いくら派手な演出を考えた所で、僕たちみたいな最近神様に昇格した新米神様にできることなんか限られるのではないですか?」


「無問題よ。そんなことすべてクリア済みの問題よ」


 そう言って机から立ち上がり、神力で出したホワイトボードに文字を書き込む。


 ……本当に無駄なことに神力使っているなアリス先輩。


 人々の願いを叶えたり、参拝や祈りによって貯まったりする神様の力『神力』。

 神様の格というのはつまるところ使える神力に比例する。

 そして神力は使えば使うほど減っていき、神様の力は弱っていく。


 僕たちの様な新米の神様はやっとこさ神力を集め、なんとかやりくりして自分達の格を保っているというのに、先輩はすぐに無駄遣いするから、すぐに力が弱ってしまう。


 こんなことでは、高い神力を持つ神様だけが住める神の都『高天原』に住むという僕の望みは、夢のまた夢だろう。


 ……神様だって叶えられないこともあるのだと、痛感してします。


 僕がそんなことを考えている間に、アリス先輩はホワイトボードに文字を書き終える。


「いいこれが私の考え、『名前がないから今がチャンス作戦』よ!!」


 赤で書かれた文字とアリス先輩の言葉に俺は思わず肩を落としてしまう。


「新米の神様いいことじゃない。今は携帯とかパソコンとかが普及したせいで、名の知れた神様は信用されないわ。

 だからこそ私達名も知られていない神様がこっそりと願いを叶えて、こっそりと実績を上げる。その実績が上がればしだいに人々は有名な神様よりも私達を信じるようになり、同時に入る大量の神力でさらに願いを叶えていける。

 どう私のこの最高の計画は」


 ……いろいろと言いたいこともあるが、ひとまずツッコムのはやめておこう。


 もともと有名な神様が信用されなくなったのは、神力を使うのに制限がかかったからだ。

『やりすぎよくない!温かく見守ろう』というスローガンのもと、有名な神様は人々を見守ることになった。


 そのスローガンを最初に言い出したのは、過労死するって言っていた太宰府の神様だから、あまり心から信用できない。


 それより今はアリス先輩の計画についてだ。

 計画には穴がありまくりだし、失敗する可能性の方が高いだが、アリス先輩の言った通りこの計画通り進めば確かに神力は上がるだろう。


 それに計画に穴があり、失敗するとしても僕はアリス先輩についていくと思う。






 フォロー体質と聞けば聞こえは良いが、実際の所優柔不断で中々判断を下せないために後手に回り、失敗を埋めようとしているにすぎない。

 自分から行動を起こせない僕を、生前から引っ張って導いてくれたのはアリス先輩だった。

 自信満々に行動していくアリス先輩。その性格から失敗することも多かったけど、そのフォローをするのは楽しかった。

 いつしか率先して先輩のフォローをするようになった僕に先輩は笑いながら、感謝の言葉をかけてくれた。


 アリス先輩の笑顔が見たくて、いつからか僕は自分から行動するようになったんだと思う。






「わかりました。手伝いますよその計画」


 僕の返事にアリス先輩はいつもの自信満々な笑みを浮かべる。


「いい返事ね。なら早速願いを叶えに行きましょう」


 机の上の書類から一枚抜き出し、早速行動に移す。

 そんなアリス先輩の後を僕も笑顔でついていく。






 後日談―


 穴だらけの先輩の計画はもちろん失敗した。

 アリス先輩はその際に神力が尽きかけ、また天照様に怒られながら神力を分けてもらうことになった。

 だが神力が尽きかけ立つ力も無いため横たわるアリス先輩の顔には笑みがあった。

 計画は失敗したが、しっかりと一人の願いを叶えることに成功したのだ。


 同じく神力が無くなりかけ横たわる僕も、アリス先輩の笑みを見れて満足できた。


よろしければ次の話もご覧ください

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