新米神様の復讐作戦
次は新米神様の復讐作戦。
神様も怒ったりすることがあるのです。
それでは心逝くまでお楽しみください。
「先輩呑気に昼食食べている場合じゃないですよ」
「いいじゃない昼食ぐらい呑気に食べて。しっかり食事を食べないといざというときに力が出ないわよ」
「なら今がいざというときですから、力を出してください!!」
僕の悲痛の叫び声に、先輩は「仕方ないわね」と食べていた豚骨ラーメンのカップ麺を机に置き、椅子から立ち上がる。
「それでどうしたの?」
「研究所で先輩が作っていた、何かが暴れているんですよ」
その言葉を聞いて、先程のまでの退屈そうな表情が一変、先輩の顔は喜色満面に変わり、目がキラキラと輝きだす。
「暴れている?つまり動いたのね。こうしてはいられないわ」
部屋を勢いよく飛び出し、問題が起きている研究所に駆けだす。
駆けだした先輩を追いながら、前を走る先輩に質問する。
「先輩は一体研究室で何を作っていたのですか?」
「新しい式神よ」
先輩は声を弾ませながら説明する。
「この間タナトスと戦ったとき、不覚にも後れを取ったでしょう。
まぁ、私が本気を出したら勝てたのだけど、偉大なる私もまだ新米の神様だから、そんな新米にメジャーな神様のタナトスが負けたとあっては国際問題になって大変だからわざと負けてあげたのは仕方ないわ。
でも問題なのはそこじゃないの。帰ってきた私に理不尽な罰を与えた天照よ」
……あの時は戦いは、戦いとはいえずタナトス様に完璧に相手にされていなかったのだが、先輩の中では違っているようだ。
「そこで天照に仕返しするために新しい式神を作っていたのよ。
あれが完成すれば私が犯人とは分からずに、無事に天照に仕返しができるわ」
先輩のその言葉に俺は走りながら、大きく溜息をつく。
なんでそんな考えになるのだろうか。
これは完全に逆恨みではないか、そう思いながらも僕には先輩を止めるすべがないので黙ってついていくしかない。
そして最悪の出来事が起こるのを少しでも食い止めなければいけない。
研究室の前に着くと、扉越しだというのに中からすごい音が響いるのがわかる。
「予想以上の性能みたいね。
プロトタイプだから暴走は仕方ないけど、これは問題を解決すればものすごく期待できる式神になりそうね」
そう言って怯むことなく、先輩は勢いよく扉を開ける。
そして見えた部屋の中では、一体のメイドが箒を振りまわして暴れていた。
……………………メイド?
「先輩、メイドがいるのですが?」
「それはそうよ。天照の社に気付かれないように潜入するのよ。メイドさんなら怪しまれず侵入できるでしょう」
なにおそんな当たり前のことを聞くのって顔していますが、まったく当たり前じゃないですからね。
社なら巫女さんでしょう。
なんで和風の建物に侵入するのに、洋風の装いのメイドを作るんですか!!
絶対先輩の趣味が入っていますよね!!!
俺のそんな心のツッコミが通じたのだろう。
先輩は慌てて言い訳を始める。
「だ、大丈夫よ。メイドって言っても、戦闘用メイドだから戦闘力は半端なく強いから問題ないわ」
問題大有りです。
僕と先輩がそんなやり取りをしていたら、ようやく地面を箒で壊していた(おそらくメイドさん的には壊していたのではなく、掃除していたのだろう)メイドがこちらに気づき、ゆっくりと近づいてくる。
先輩は不敵な笑みを浮かべ、懐から巻物を取り出しメイドの前に立つ。
メイドさんは先輩にむかって箒を構える。
「いくらプロトタイプとはいえ、主人に刃を向きようとするなんてお仕置きが必要ね」
刃じゃなくて箒ですよ。
そう心の中だけで僕はツッコミを入れておく。
先輩が巻物の紐をほどく。すると巻物は勢い良く伸びメイドを囲むように渦巻く。
「これは呪文書。それもあなたのプログラムである呪文書よ。
一度電源を落しなさい」
宣言と同時に巻物から稲妻が走りメイドを襲う。
激しい電撃を浴びて、黒い煙を上げながらメイドはその場に倒れる。
「安心しなさい峰打ちだから」
無駄にカッコつけて先輩はそう呟く。
雷に峰打ちも何もないと思うのだが、敢えて突っ込まずただ今日何度目になるか分からに溜息を僕は吐き出した。
後日談―――
メイドさんはその後修理という名の改造を終え、天照様の所に送り出された。
僕はそれを止めようとしたが、メイドさんに僕の行動が敵対行動と認識され、箒一閃気絶させられた。
僕はそこで気を失ったので、それからの騒ぎは伝聞でしか知らないが、ものすごく大変だったそうだ。
いや、ものすごくじゃすまないぐらい大変だったそうだ。
天照様の社に着いたメイドさんは、さっそく侵入するため怪しまれないように掃除を始めたそうだ。
だが和風の建物でメイドさんはやっぱり目立ち、すぐに社で働く巫女さんに見つかる。
そこで騒動が起こりそうになるが、騒ぎを聞きつけた天照様が登場。
すぐに天照様がメイドさんに正体を訪ねる。
この時先輩が教育の(仕組んでいた?)どうり、メイドさんが答える。
以下その時の会話の様子。
『そこの洋装をした者よ。一体お主は何者じゃ?』
『私はメイドです』
『メイドとな。それでそのメイドとやらが、わが社に何しに来たのじゃ?』
『その若づくりでも隠しきれないシワを綺麗にしに来ました』
『(ピッキ)そ…、そうか、ワシのシワを綺麗にか……』
『はい。汚れきった心は手遅れですので、せめてシワだけかと思いまして』
『(ブッチ)』
その後キレた天照様が暴れ出し、メイドさんもそれに応戦。
周囲一帯が瓦礫の山としたあと、破壊したメイドさんの痕跡から先輩の式神だと突き止め、その怒りは先輩にも振りかかった。
……その時の衝撃で、気絶していた僕も目が覚めた。
その後、怒り心頭の天照様罰が言い渡され、現在壊れた周囲一帯の修復作業にあたっている。
先輩を止められなかった僕も同罪だと言われ、作業に準じている。
作業をしている先輩を見ながら思う。
これで少しは先輩も懲りてくれればいいのだが……。
「今回はメイドさんの戦闘力が少し足りなかったみたいね。
次よ。次こそは天照をぎゃふんと言わせてやるわ!!!」
……まったく懲りて無いようだ。
僕の苦労はまだ続きそうだ。
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