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画家+αの仕事

「次の本は、ある能力を持った画家の物語」

「能力をどう使うか、それは本人次第でしょう」

「それでは心逝くまでお楽しみください」

「まったく毎度面倒なことだ」


 電車を降りながら俺はそうぼやく。

 わざわざ鉛筆を買いに行くためだけに、一時間かけて都心に行かないといけないのだから、毎度買いに行く身としては面倒なことこの上ない。



 何年か前に環境を守るために森林伐採に規制がかかり、鉛筆の出産量が制限された。

 そのせいで販売される鉛筆の量が減り、画家をはしくれを名乗る私としては絵を一枚描くのも一苦労するというわけだ。

 ポケットに入れていた切符を取り出し、駅の改札を通る。

 その時に顔なじみの年老いた駅員に声をかけられる。


「先生、今日はどこで絵を描くんだい?」


「今日かい?今日は特に予定はなかったな~。また新しい絵描いて欲しいんなら書くけど?」


「いや、前にこの光景は書いてもらったから、今度は妻と一緒の所を描いてもらいたいと思ってね」


「わかった。なら今度じっちゃんが休みの日にでも家訪ねるよ」


 そう言って軽く手を振り、駅を抜ける。

 その後も家に帰るまでに、たくさんの人が声をかけてくる。

 子供も大人も、男も女も様々な人が笑顔で私に声をかけてくれる。


「先生、今度私たち描いてよ」


「この間の絵ありがとう。とても素敵に描けていたわ」


「また絵を描きに来てよ、お茶菓子用意しとくから」


 そんな声を受けながら私は家にたどり着く。






 玄関を開けると、すぐに家の中からは絵の具の匂いが鼻に入る。

 いつものことなので気にも留めず、そのままアトリエに向かい足を進める。

 アトリエにはさまざまな絵や、まだ描きかけの絵が並べられ、部屋を明るくするために照明が輝き、いたる所に観葉植物が飾られていた。

 絵を描くと集中しすぎるため、最初目の癒しにと買った観葉植物だが、今では名前までつけ心の癒しとなっている。

 私は机の上に今日買った鉛筆を置き、次に描きかけの絵の続きを描くために椅子に腰を下ろす。

 絵の構図は学校を背景にその前に笑顔の子供たちが走り回っている風景。

 まだ少しだけ色が塗られていない個所があるがそれでもほとんど完成に近い。

 明日には子の絵をモデルになった子供たちに届けるために、腕をまくり仕上げにかかる。






 技術が発達して写真はすぐに撮れるものになった。

 だがそれでも絵が廃れることが無かった。

 写真にはない何かが絵にはあったからだ。

 私は特に現実をそのまま写す写真には出来ないことを絵で描き表していた。

 生まれつきこの世のものではない人たちが見えていた私にとって、失った人の悲しみを紛らわせるために、亡くなった人の願いのために生者と死者の思い出の一瞬を絵で描き表すようになった。

 駅にいた年老いた駅員、彼も数年前亡くなっている。

 だがいまだ心残りがあるのか、職場だった駅や妻がいる家に時々現れる。

 今描きあげている絵も、友達を失った子供たちの願いと、悲しんでいる友達と楽しく分かれたいと言う子供の願いのために絵を描き上げる。


 私の描いた絵が少しでも救いになればいい。

 今日も私は絵を描いていく。


「いかがでしたか?」

「お気に召しましたか?」

「よろしければ次の本もお読みください」

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