サプライズ
「次の本は二人の男女関係の物語」
「男と女は違う生き物。だからこそ生まれるものがあるのです」
「それでは心逝くまでお楽しみください」
「毎日なんでこんな所に来ているのよ」
「うるさいな、いいだろうそんなこと俺の勝手なんだから」
幼馴染の彼女が腰に手を当てての仁王立ちの姿で聞いてくるが、俺は芝生に腰をおろし彼女の方を見ずにぶっきらぼうにそう答える。
今俺たち二人がいる場所は、バブル時代にゴルフ場を建設しようとしていたがバブル崩壊により途中で打ち切りになったゴルフ場跡地。
俺はここ数カ月ある目的を持ってこの場所に来るようになっていた。
そのため放課後は一目散に教室を出て、休日も一日中ここいる。
彼女はそんな俺の行動を心配し、わざわざ声をかけに来てくれたのだ。
「うるさくなんかないわよ。ちゃんと理由言いなさい」
彼女がさらに俺を追求してくるが、俺は素直に理由を答えるわけにはいかなかった。
理由を言えばこれまでの数カ月の努力が無駄になってしまう。
それにもうすぐ目的が達成できそうなのだ。
だから誤魔化すために、ついきつい言葉を彼女に返してしまう。
「どうでもいいだろう、ただの幼馴染のお前にいちいち説明する必要があるのかよ」
俺のその言葉を言った瞬間、
「馬鹿ー!!」
顔を真っ赤にして大声で叫んだあとに背中を向けて彼女はその場を去っていった。
背中を向ける前に見えた彼女の目に涙が浮かんでいたのは見間違いじゃないだろう。
一人残された俺は、小さくなっていく彼女の後ろ姿を見ながら小さくつぶやく。
「馬鹿だってことは俺が一番知ってるよ」
それから数日、俺と彼女は言葉を交わしていない。
それまでは毎日なんでもないことでも話していたのに、今は学校で会うことがあってもつい互いに目線をそらしてしまう。
そんな日々が一週間ほど続いた頃、ゴルフ場跡地で俺の目的が叶った。
俺はそれを確認するとすぐに彼女の携帯に電話を入れる。
『何?』
不機嫌そうに彼女が電話に出る。
不機嫌そうにしながらも電話に出てくれる。
そんな彼女の優しさについ嬉しくなってしまう。
「話したいことがあるんだけど、明日ゴルフ場跡地まで来てくれない?」
『なんで私がわざわざ行かないといけないの』
「頼む、お前にどうしても言いたいことがあるんだ」
しばらく電話の向こうに沈黙が流れる、その後彼女が返事をする。
『……わかったわ、行くわよ』
そう言って電話が切れる。
休日の今日、電話で約束した通りゴルフ場跡地で待っていると彼女が来る。
「何いきなり呼び出して」
「この間はごめん、心配して来てくれたのにあんな言葉言って」
「別にいいわよ」
彼女はそっぽを向きながら、そう返事をする。
「それでお詫びってわけじゃないけど、見て欲しいものがあるんだ」
そう言い俺は彼女の手を引っ張り、ゴルフ場の奥に案内する。
彼女を案内した先には、少し季節外れのひまわりが何百と咲き乱れていた。
雑木林ではすぐには分からないが、裏に抜けた荒れ地に俺は数か月前から土地を耕し、種をまき、咲くのを少し遅らせ彼女に黙って育ててきた。
「お前今日誕生日だろう、だからさお前の好きなひまわりを送ろうと思って準備して来たんだ」
照れくさそう彼女にそう告げる。
彼女はひまわりを見つめたまま顔を真っ赤にして小さくつぶやく。
「お前は本当に馬鹿だ」
「知ってるよ、でもお前が喜んでくれるのなら馬鹿でもいいよ」
その言葉に彼女はまた小さく「馬鹿」とつぶやく。
季節外れのひまわりが太陽の下、綺麗に咲いている。
「いかがでしたか?」
「お気に召しましたか?」
「よろしければ次の本もお読みください」




