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彼女と初デート ~ドリルは浪漫の塊です~

「次の本は初デートに心躍らせる男女の物語」

「男とはいつの時代もデートに胸弾ませるものです」

「それでは心逝くまでお楽しみください」

「ドリルは浪漫の塊です!!」


 向かい合った席で、僕の彼女がこぶしを固く握り熱く宣言した。

 小柄な彼女の背景から、あたかも燃え盛るような炎が見えそうになるぐらい、熱い宣言だ。


「見ましたかあの高速で回転する円錐形、何物にも負けないという情熱の表れである尖った先端、鈍く光る銀色の輝き、回転するときのあのギュイーンという音なんか歯医者の時に聞こえる音なんか比べようもないほど芸術だと思いませんか?」


 彼女は熱く宣言してから、かれこれ10分以上ドリルの浪漫について熱く語っている。


 ……いや本当に、彼氏の僕ですら少し引くくらい熱く語っている。


 けしてドリルが男の浪漫では無いとは言わないが、それでもここまで熱くドリルを語る女子はなかなかいないだろう。

 目の前で熱く語る彼女を見ながら、なんでこんなことになったのだろうとついさっきまでのことを思い出す。




 今日は彼女と初デートの予定だった。

 付き合い始めてから約半年、恥ずかしがり屋の彼女とはこれまで一度もデートができていなかった。

 そして今日いよいよその彼女と待ちに待ったデートができると思い、僕の気分は有頂天になっていた。

 浮足立った足取りを表すかのように、弾む足取りで待ち合わせの駅前に行くと、すでにそこには彼女が待っていた。

 待ち合わせの時間よりも僕は15分ほど早く着いたつもりなのに、彼女はそんな僕よりも早く待っていたのだ。

 慌てて彼女のもとに駆け寄り、


「ごめん待った?」


「いいえ、私も今着いたところですから」


 男なら一度は行ってみたいセリフを言うと、彼女は頬を染め、下を向きながら照れくさそうにそう言った。

 その仕草だけでもう僕は十分だった。

 つられるように顔を真っ赤にした僕は、彼女の手を取りそのままデートに向かう。

 近くのショッピングモールでいろいろなお店を見て回り、恥ずかしがり屋の彼女は服屋で、照れくさそうにしながらもうれしそうに笑いながら服を見ていた。

 午前中はショッピングモールをそのまま見て回り、お昼前に近くのカフェに入った。

 向かい合って彼女とティータイム、夢にまで見た理想的なデートだ。

 本当なら伝説の二人で一つの飲み物をストローで飲み合うというのをやってみたかったが、さすがに公衆の面前でやる勇気は僕には無い。

 それでも、二人でくだらない話をしながら笑い合う時間は幸せだった。




 そう、そこまでは幸せで順調だったのだ……。

 だがその後から何かおかしくなった。

 二人で楽しくおしゃべりしていると、遠くから悲鳴が聞こえた。それと同時に地響きのような足音が聞こえビルの影から巨大な動物が現れる。

 その姿を見たとき、僕は思わず口をあんぐり開けて、


「……キングコング?」


 その動物を見て僕はつぶやく。




 えっ、何この展開、僕今初デート中だよね?

 目の前のキングコングは、映画のキングコングよろしく車を投げ飛ばし、電柱を折り、ビルを登り暴れている。

 唯一の違いは、その手に女性が握られていないことぐらいか。

 呆然と眺めながらそんなことを考えていた僕は、頭を左右に振り何とか現実に戻る。

 そして、ここは危ないと思い彼女と逃げようと判断する。


「ここは危ないから、離れよう」


 僕は彼女の手をとってこの場を離れようとする。

 だが彼女は座ったまま、じっとキングコングを見て動こうとしない。


「早く逃げないと危ないよ!」


 そんな彼女の様子に戸惑いながら、強引に引っ張ろうとしたとき、


「ちょっと待って」


 普段の彼女からは想像できない力強さで、僕の手をほどくと彼女はポケットから携帯を取り出しどこかに電話をかける。


「…はい私です。えぇ、緊急事態ですのでお願いします」


 そう話すと、キングコングが登ったビルの頂上を見る。


「な、何が…?」


「大丈夫。もうココは安全だから」


 彼女がそう言うとともに、遠くから高速で何かが近付いてくる。

 近づいてくる何かが目に入る。


「……戦闘機?」


「違います、超合金ロボットです!!」


 彼女がすごい速さで、訂正する。

 そこから、空を飛んできた超合金ロボットは、キングコングを殴り飛ばし、取っ組み合いの殴り合いを初め、追い込まれてピンチと思った瞬間、目が赤く光、最後は超合金ロボットの片手がドリルに変わり、キングコングを吹っ飛ばして逆転勝利を治め終わった。


 ………本当に何?この超展開。


 傍から見ていても付いていけずに僕が混乱の極みにいると、彼女が顔を真っ赤にしながら僕の顔を見る。


「今まで秘密にしていてごめんなさい、私とある秘密機関の科学者なの」


 恥ずかしそうに言った彼女は、まぎれも無く僕の彼女だった。

 僕はこの日、初デートで人生初の経験をし、彼女の重大な秘密を一つ知った。



 後に彼女と二人で合体ロボを開発することになるのだが、それはまた少し先の話……。


「いかがでしたか?」

「お気に召しましたか?」

「よろしければ次の本もお読みください」

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