俺と新米彼女の作戦行動 part2
「次の本はある組織に属するエースの物語」
「……彼は相変わらず苦労していますね」
「それでは心逝くまでお楽しみください」
京都の町並みをガイドブック片手に歩く。
始めてこの地を訪れたが、本当に木造の家が多く碁盤の目状に広がる街並みに感嘆のため息が漏れる。
これで俺一人だけで来ていたら、落ちついて見ていられたのだろうが、そうもいかない。
「先輩待ってくださいよ」
後ろからお土産の八つ橋の箱を山ほど抱えた少女が駆け寄って来る。
俺はその少女を敢えて無視するように早足で歩きだす。
今回俺がこの街に来たのは、今日の街に隠された伝説の宝剣を奪還する任務が与えられたのだ。
そして、なぜか今回も相棒として彼女がつけられた。
新人研修で彼女と組まされてから、なぜか相性がいいと思われ、それから事あるごとに彼女と任務をさせられる。
俺はこの組み合わせはドジばかりする彼女の一種の厄介払いでは?と考えている。
今だってそうだ、なぜ着いたばかりの街ですでにお土産を山ほど買っている。
そんなの任務が終わってからでいいだろう、今買っても邪魔になるだけだ。
だがツッコミはしない、一度つっこんだら最後キリが無い。
「とこれで先輩、今私達はどこ目指しているんですか?」
仔犬のように俺の後ろを歩きながら彼女が聞いてくる。
「清水寺ってところだ」
ガイドブックを見ながらそう答える。
長い坂道を歩き、食べ物があると立ち止まる彼女を引っ張り何とか清水の舞台までたどり着く。
「すっごーい、なんてすばらしい景色なんでしょう」
清水の舞台から見える景色は、日本の四季を表すように見事な紅葉で赤く染まっている。
俺も思わずその景色に見惚れてしまう。
「先輩楽しそうですね」
俺の表情を見て、彼女は嬉しそう言う。
その言葉に、照れ隠しのように清水寺について解説を始める。
「この清水寺は、昔度胸試しのために飛び降りることがあったそうだ。そこから非常の決断を下すことを『清水の舞台から飛び降りる』と言うそうだ。
俺たちみたいな、組織の人間にピッタリな言葉だな」
彼女はその言葉を聞くと、何か真剣な表情になる。
「先輩、私先輩みたいな一流の人間になるため、ぜひやってみます」
言うが早いか、彼女は走り出しそのまま清水の舞台から飛び降りる。
「おい、馬鹿!」
慌てて手すりまで走り寄り、下を向く。
そこには怪我ひとつなく、頭に紅葉の葉を乗せた彼女が元気よく手を振っていた。
「先輩、見ててくれましたか?私無事できましたよ」
笑顔で手を振る彼女の姿に、俺は力が抜け手すりに体を預けてしまう。
だが次の瞬間そんな脱力が吹き飛ぶ出来事に巻き込まれる。
「あれ、先輩舞台の下の方に何かありますよ?」
彼女の大声に思わず視線を下の方に向けた瞬間、寺の方から複数の鋭い視線が刺さる。
すばやくあたりを確認すると、寺から何人もの人間が出てくる。
やばい、何かある。
急いでそれ以上余計なことは言うなと、彼女に言う前に
「あっ、あれですよ先輩。宝剣を封印してるっていう呪印です。ちゃんと事前資料確認しているから間違いありませんよ」
彼女がベラベラとしゃべる。
次の瞬間、俺も彼女と同じように清水の舞台から飛び降りた。
背後からは怒声と共に発砲音が聞こえてきた。
無事に俺も地面に着地で来たが、頭痛を覚えてしまう。
どうやら任務が本格的に始まったようだ。
任務が始まって最初にやること、それはあのドジな後輩にどう説教するかを考えることだった。
「いかがでしたか?」
「お気に召しましたか?」
「よろしければ次の本もお読みください」