プッチンプリン大戦記 for 節分
青鬼の子鬼、三友は、節分のお仕事が大嫌いになりました。
帰ってくるなり布団にもぐりこんで、泣いていました。
「節分のお仕事なんて大嫌いだい! あんなのかっこよくないやい!!」
三友は、無敵の強い鬼に憧れていました。
大人になったら絶対に、強くて大きくて、かっこいい鬼になるんだと、決めていました。
だから、豆を投げられて、背中を丸めて逃げて行くお仕事なんか、やりたくありませんでした。
今年、父の仁が初めて、節分のお仕事に三友を連れて行きました。
三友はわくわくしていました。
「人間が来たら、がおーってするんだろ? 僕、絶対人間を怖がらせてやるんだ」
仁は困った目をして、三友に微笑みかけました。
「今日は、見ていなさい」
「なんで! 僕にだってできるよ! 僕強いもん」
意気込む三友の頭を撫でてやり、仁は肩に乗せて歩き出しました。
「鬼は外ー!!」
人間は容赦なく豆を仁にぶつけてきました。
三友は仁に言われて、物陰から見守っていました。
人間の世界では、厄払いの一貫だそうです。
小さい豆は、仁の体のあちこちにぶつかり、刃物のように仁の体を傷だらけにしました。
仁は抵抗しません。
背中を丸めて、必死に逃げ回っています。
「父ちゃん…」
三友は悔しくて仕方がありませんでした。
強くて、大きくて、かっこいいはずのいつもの仁は、抵抗もせずに傷だらけになっていきます。
どうして、父ちゃん。
なんで逃げるんだよ…なんてざまだよ!
三友は悔しくて悲しくて、目を涙でいっぱいにしながら、仁を見ていました。
ひとしきり人間が豆を撒き終えると、仁は傷だらけの体で戻ってきました。
三友はその手を振り払って、走って家に帰りました。
三友は布団にもぐって、わんわん泣きました。
仁が帰ってきて、布団のわきに座り込んでも、三友は泣き続けました。
仁は布団の上から、三友の体を撫でてやりました。
「僕達が何したって言うんだよ!」
仁は黙って、三友の声を聞いていました。
「人間なんて僕より小さいじゃないか! 踏み潰しちゃえばいいんだ。吹き飛ばしちゃえばいいんだ!!なんで逃げるんだよ!!」
泣いている三友を布団から出してやると、三友は顔中涙でぐしゃぐしゃでした。
仁はいつもするように、肩に乗せてやりました。
「父ちゃんの腕は太いだろう」
「…うん」
「筋肉もある。それに人間から見たら父ちゃんはものすごく大きい」
三友はじっと仁の腕を見ました。
太くて、筋肉でごつごつしています。
「鬼は強い。なぜ強いか?」
三友は仁の顔を見上げました。
目がとても優しい。
「受け止める為だよ。人の持っている恐怖や、不安や、憎悪を。
それは強く出来ていないと無理だ」
三友は、やっと泣くのをやめました。
「無病息災を願って、人間は厄払いをする。豆にくっついて、色んな厄が飛んでくる。
鬼はそれらを受け止めて、鬼の世界へ持って帰ってくるんだ。
彼らがなるべく穏やかに、笑って過ごせるように」
三友は、少しだけわかった気がしました。
なぜ傷だらけになっても抵抗しなかったのか。
そして、なぜ仁が、強く大きく見えるのか。
三友はもう一度、仁の目を見ました。
本当に強い人は、きっと穏やかで優しいのだと、三友は思いました。
「節分の仕事が嫌いか」
仁は三友に、そう尋ねました。
「ううん。僕、強くなる」
僕は強くなろう。
そして、強さを”振りかざす”のではなく、”備えて”いよう。
受け止めて、守る事が出来るように。
三友は、もう一度、そう心に決めたのでした。
****************『番外編』*****************
「よし、とてもいい子だ」
仁は冷蔵庫から何かを取り出すと、グリコのプッチンプリンを手渡しました。
「これでお前は無敵だ!」
「わーすっごくおいしー!!」
仁と三友は、おいしさのあまり冷蔵庫のプリンを食べつくしてしまいました。
三友は、その美味しさに驚愕し、仁の教えをより一層深く理解したのでした。
おわり
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ごめんなさーい><。
プッチンプリンへの愛情表現にと、大戦記を書く予定が
書いてる途中で、プリンの存在出すのすっかり忘れてました・・・・
という訳で、
☆☆Have a nice 節分day!!☆☆