オンナになりたくないオンナたち
セックスの話をしているのでR15に設定します。R18かもしれないとも思っていますが、そこまでの描写でもないと判断しました。
僕、ミソラは女性である。ただし、自分が女性であることを心の底から受け入れているわけではない。
社会的には女性として生きているし、その日の気分によってはかわいい服装を好んで着ることもある。でも、女性として生きることを望んではいない。女性として生きなくていいなら、それがいい。
たまに男装をする時がある。かわいい服を着たい時も、かっこいい男装をしたい時もある。女性でも男性でもどちらでもないものになれるならそれがいいと思っている。
僕の恋人であるナツキは、男性として生きようとしている女性である。体は女性で、でも、常に男装をしていて、男として認識されることを望んでいる。
そんな僕らは恋人同士で、デートをしていて、キスだってする。でも、その先は?
「キスより先のことをしてみたい」
僕がそう口にしたら、ナツキはとても複雑そうな顔をしたように見えた。
「……ミソラがしたいなら、いいよ」
ナツキがそう言ってくれたから、僕らはホテルに入った。
でも、いざ、そういうことをしようとしたら、僕らはお互いにとても困惑していた。
「……ナツキは、女になりたくないんだよね」
「そうだね」
「……僕も、積極的に女になりたくはないと思ってる」
「そっか」
ナツキの声は優しくて、でも僕の胸は痛かった。
「でも、僕らは体は女だから、そういうことをするなら女としてするしかないよね」
「……そうなるかもね」
ナツキは困ったような顔をしながら頷いた。
「僕は、ナツキが相手なら、僕が女としてそういうことをするのはいいと思ってるんだよ」
「……うん」
「でも、もう一度だけ確認するけど、ナツキは女として体を触られるのは嫌なんだよね?」
「そうだよ」
「……こんなこと言うと、嫌われるかもしれないけど、僕はナツキが女になるのを見たい……っていうか、ナツキの体を触りたいし、ナツキが……女として気持ちよくなってるところを見たい、と、思ってる」
「……ミソラのことを嫌いになるなんてことはないよ。でも、俺としてはそれは嫌かな」
「そう……だよね……。え、でもさ、好きな人の体を触りたいし、触られたい……じゃん……? え、性欲はあるよね?」
「性欲があるかないかで言えば、あるってことになるね。俺はミソラの体を触りたいとは思ってるよ」
ナツキは困り笑いのような表情でそう言った。
「じゃあさ、一人でする時はどうしてる? 一人でする時は女としてするしかないよね?」
「それは……そうだね。でも、自分の体ってどうしようもなく女なんだなって、気持ち悪いなって思って、心から気持ちよくはなれないよ」
「それはわかる。僕も、一人でする時、自分の体が気持ち悪くて、でも、女としてするしかないんだよなって思ってる」
「……ミソラは、俺に抱かれるのはいいんだよね?」
「抱かれたいと思ってるよ。思ってるけど、僕だけが女として気持ちよくされるんじゃなくて、ナツキも気持ちよくなってほしくて……でも、ナツキは女として体を触られるのは嫌なんだよね?」
「うん。俺としては、ミソラが気持ちよくなってるのを見られればいいんだけど」
「……僕は、ナツキの体を触りたいけど、ナツキが嫌なら、ナツキが嫌なことはしたくないと思ってる」
「ありがと。うん。俺は女として体を触られるのは嫌だから、それはしないでほしい」
「……わかった。じゃあ、僕からナツキの体を触ることはしないよ」
僕がそう言うと、ナツキは少し悲しそうな顔をしたように見えた。
「ミソラは、本当にそれでいいと思ってる?」
「……できることなら、ナツキの体を触りたいけど、ナツキが嫌なら、いいよ」
「……俺がちゃんと男だったらよかったのかな」
ナツキにそう言われて、僕はなんだかとても悲しかった。
「男だったら、そもそも好きになってないでしょ。僕らは僕らなんだから、僕らだけの関係性を探っていくしかないんだよ」
「……そうだね」
微笑みながら答えてくれたナツキの姿を、僕はとても愛おしく感じた。僕たちだけの関係性を、大切に積み重ねていきたい。そう思った。
そして、僕はナツキに女として抱かれることを選んだ。ナツキが相手なら、女になってもいいと思った。でも、やっぱり、自分の体って、ちょっと気持ち悪いなとも思ってしまった。女として、気持ちよくなっている自分の感覚が、少し、気持ち悪かった。
どうして人間には性欲なんてあるんだろうか、なんて思ってしまう。いや、子孫を残していくためには必要な機能なんだろうけど、じゃあなんで体の性別によらず他人を好きになることがあるんだろうか。
体の性別だけで全部が決まるなら、こんなに苦しまなくて済むのかな。そんなことを考える。
「……ねえ、ミソラは、俺と一緒にいて、幸せ?」
ナツキが、少し不安そうな顔で聞いてきた。
「……幸せだよ。ナツキも、幸せだよね?」
「幸せだよ……。ミソラは、でも、女として扱われたくはないんだよね?」
「まあ、積極的に女になりたくはないし、女として扱われるのは嫌だけど……。でも、ナツキのことが好きだから、大丈夫」
僕はなんでもないように微笑んだつもりだったけど、ちゃんと伝わっているかわからなかった。
「……俺に体を触られるの、嫌じゃなかった?」
不安そうなナツキの心を、安心させてあげたいと思った。
「……嫌じゃないよ。嫌じゃない……けど、……僕の体って、女なんだなって、思った」
「……それは、嫌なんじゃないの?」
そうかもしれない。そう思ったけど、嫌だとは言いたくないとも思った。
「でも、好きな人の体を触りたいって思うのは性欲があるなら当然だと思うから、いいんだ。大丈夫だよ」
「……無理してない?」
「……無理はしてない。と、思う」
「そっか」
ナツキの優しい声が、僕の胸に染み込んだ。
〈了〉
ここで書いたことはあくまでもフィクションで、想像でしかないです。この作品を読んで傷つく人ももしかしたらいるかもしれないとも思います。場合によっては作品を削除することも考えてはいます。




