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神話由来のお掃除系名家ではございますが、令和でも悪鬼滅殺して参ります! 〜最強こじらせ執事の『お嬢様尊い』的限界オタク化が止まらない~  作者: 御堂
第一章

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一筆目

 紳士淑女の皆さま、ご機嫌いかがでございますか。

 北白川でございます。

 ああ、いけませんね。初めてお目にかかる方ばかりでした。大変失礼致しました。

 そうですね、まずは自己紹介などさせていただきましょうか。

 私、北白川怜(きたしらかわ れい)と申します。年齢は28歳。性別は男。身長?186センチだったと記憶してございます。趣味──と言える程ではございませんが、身体を鍛え、武を高めること。そして極上のスイーツ作りを嗜むことが、日々の幸福度を高める秘訣と心得ております。

 イケメンすぎる?素敵?ありがとうございます。北白川と書いて美男子と読むそうでございます。辞書に載せるべき格言かと存じます。あまり容姿に頓着はしておりませんが、主の視界に入らせていただく機会も多くございますので、全身一分の隙もなく整えることを信条としております。

 左様でございます。一文字クリーンホールディングス(ICH)の会長宅にて、普段は執事業など致しております。

 んー……いえ、違いますね……。

 正確に申し上げるならば、会長宅にお住いの我が主──私の至高で私の信仰である尊いお方の【専属】執事でございます。会長宅には別途家令もおりますので、現在私は心置き無く女神にお仕えさせていただいている次第でございます。

 ええ、【専属】は私ただ一人でございますので、全身全霊をかけてお世話をさせていただいております。尊いお方の全てを、自らの手でお支えできる悦び──人生とはなんと素晴らしいものなのでしょうか。あの方の髪の毛一本から爪の先までを美しく完璧に整えることが許された己を、私、誇りに思っております。

 毎日が至福でございます。あの方の微笑みは、女神も恥じ入る程に素晴らしく美しく、ご尊顔を日々拝謁する度に、私、世界に感謝を禁じえません。鈴を転がすようなお声で「ありがとう」と仰ってくださる時などは、この北白川怜、己を世界一価値のある男と自負する次第でございます。

 え?お名前?

 ……聞いて何をなさるおつもりで?

 ああ、なるほど。それは失礼致しました。確かにそうでございますね。この北白川、少々取り乱しました。大変失礼致しました。

 私の主のお名前は、一文字(いちもんじ)(きよ)ら様でございます。

 あぁ、お名前を口にする度に全細胞が浄化されていくようでございます。なんと美しく清らかなのでしょうか……。名は体を表すとは申しますが、清ら様に関しては、表すというよりも「顕現した!」と表現するのが近いようでございますね。お名前の通りに美しく清らかで、なんと言っても一文字家のご家族の皆様より抜きん出て能力値が高くいらっしゃる。美しく才能もあり、且つお強いなど、完璧を上回るご令嬢でございます。お嬢様が神筆を振るわれる度に、北白川の胸は高鳴り動悸が止まらず、もはや窒息からの尊死を何度賜ったか数え切れません。

 そもそもが、一文字家のご家業がああいった闇祓いのようなものでございますから、北白川としましてはお嬢様にはなるべく、不浄なものを視界には入れていただきたくないのでございます。しかしながら、「一文字の最終兵器」の呼び声も高いお嬢様ですから、周りの皆さまのご期待にもしっかり応えて結果を出すのです。──なんとできた方なのでしょうか。毎度、お嬢様のお手で昇天させられる穢れが羨ましく思います。願わくばいつか北白川の魂も、お嬢様直々に祓い清めていただければと願うばかりでございます。しかし、お仕えしている方のお手を煩わせるのも執事の矜恃に反しますので悩みどころでもございますが。

 え、家業?能力値?強いとは、と。

 あなた方はもしや、一文字家を何も知らずにこちらへおいでになったのですか?

 ……ふむ。

 なるほど、承知致しました。

 では僭越ながら、この北白川が皆さまをご案内させていただきましょう。

 ああ、くれぐれもこの線は超えないようご注意ください。あなた方はこの先、モブでございます。徹底的に背景となっていただきますのでご了承下さいませ。

 カメラでの撮影、録音なども御遠慮くださいませ。盗撮は犯罪でございますので見つけ次第(社会的にも物理的にも)抹殺致しますのでご承知おきください、ね。


 さて、何からお話すればいいのか……。

 北白川の世界はお嬢様とそれ以外で成り立っておりますので、壁や天井となっている皆さま方に語る言葉はないのですが。まぁせっかく遊びに来て頂けましたので一文字クリーンホールディングスのお話から致しましょう。

 ……お嬢様を出せ?──北白川は壁のシミ如き、燃やすことも躊躇致しませんが?

 ご理解いただけたようで何よりでございます。今日も世界は平和でございますね。

 一文字クリーンホールディングス(ICH)は国内外の掃除業を一手に担う巨大お掃除カンパニーでございます。傘下企業はクリーニング業、ハウスクリーニング業、不動産、ハウスキーパー派遣業、ハウスキーパー養成所など多岐に渡ります。そこはそのうち理解が追いついて来るところかと存じますので、詳細は割愛致します。

 一文字家は元を辿ると室町時代の陰陽師の系譜の一族だったようでございます。悪鬼を払い、無病息災を祈願するのを生業にしていたと聞き及んでおります。それがいつの頃からか、悪鬼を寄せないための祈願が主流となり、汚れを好む悪鬼どもを滅するための掃除術が発展し、令和のこの時代まで家系を繋いできたと。

 壮大な話でございます。連綿と続いて来た血の継承が、この時代に清ら様という現人神を誕生せしめたのですから、一文字家のご先祖さまを敬う北白川の気持ち……お分かりいただけるでしょう?一人でも欠ければ清ら様という奇跡は誕生しなかったのですから、それはもう、あちらの世界のご先祖さま方は薄氷を踏む思いで見守って来られたのではと、恐れながら北白川は想像するのでございます。

 え?闇祓い?ああ、そうですね。

 一文字家の始祖が陰陽師の系譜でしたので、裏稼業として悪鬼成敗は続いて来たのでございます。そして現代でも悪鬼は存在致しますので、一文字家が暗躍しているわけですね。

 令和の悪鬼は、昔のモノとは違いますね。昔は、失恋や夢破れた怨霊が悪鬼化するのがほとんどでした。なんと申しましょうか……自己実現が敵わなかった人間の局所的な悪鬼化、といった具合でございます。

 現代は、圧倒的に陰湿でインモラルな案件が多いようでございますね。SNSなどの電波が絡んだモノ、人間の機微に疎いモノ、ここでは口に出せないようなモノなど種々多様でございます。そんな悪鬼を見るにつけ踏むにつけ、北白川は思うのでございます。

 ──やはりお嬢様は至高。

 と。

 皆さま方、もう北白川を見てお分かりかと存じますが、お嬢様に関わらせていただいておりますと、世界がとてもピースフルでございます。

 ささやかな幸せの積み重ねが、健全な肉体と精神を育むのです。なるほど。先人の格言は当たっております。

 北白川は感情が昂りますと、まず指立て伏せから始めてブルガリアンスクワットを経て、米国式海兵隊のブートトレーニングメニューを一通りこなします。その後、お嬢様のご尊顔を蕩かせた海外パティシエの作るスイーツを完璧に再現する執念……こだわりのスイーツ作りに精を出しているわけでございます。

 北白川と書いて健全とも読みますし、悪鬼になりようがありません。皆さま方も励まれてはいかがでしょうか。スクロールしながらノーマルスクワットなどお勧め致します。

 はっ!いけません。北白川、大切なことを思い出しました。そろそろ15時。お嬢様のティータイムでございます!急がなれば……!!

 はい?お嬢様と北白川の……?

 強いて申し上げるなら、信仰対象と敬虔な信者で──違う?なるほど。北白川の一人語りが行き過ぎてまして申し訳ございません。

 端的に分かりやすくご説明致しますと、お嬢様が【当代随一最強系悪鬼祓い師】で、北白川は【限界トップオタ同担拒否強火補佐役】でございますね。

 ああこれは、一文字家の同僚がその様に表現しておりましたので、皆さま方にも馴染み深い文言かと思い申し上げました。

 では、北白川はお嬢様のティータイムの給仕に参りますので。──着いてくるのは構いませんが、くれぐれもモブらしくご覧下さい。さもなければ、煮えたぎった湯を壁に注ぐこと、北白川は平常心でやってご覧に入れますので。


「今日は少し遅かったのね」

「申し訳ございません。来客対応中でしたもので」

 ──皆さま方がノロノロしているせいですよ。反省してくださいませ。

 ああ、しかし……お嬢様は気にも止めておられません。なんと慈悲深いのでしょうか。

 さて、給仕を致しましょう。

「こちら、先日お嬢様がテレビでご覧になっていた某パティシエのマカロンでございます」

「あら、買ってきてくれたの?」

「はい。気になっておいでのようでしたので」

 正確には、買ってきたものは北白川が頂きまして、それを忠実に再現したものをお出ししております。

 ええ、ってどういう叫びなのでしょうか。お静かに。ほら、ご覧なさい!

「まぁありがとう、北白川」

 来たあああ!!!!ありがとうを頂きました!

 なんということでしょうか、あの微笑み!ダ・ヴィンチは今こそ筆を取るべきと北白川が進言致します!歌麿も美人画を描くなら、お嬢様のこの瞬間を切り取るべき!嘘、凄い!尊すぎる!!

 北白川、このために生きてます!ありがとうございます、地球!

「恐れ入ります。お味はいかがですか?」

 ンア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!ゆび!指で摘んでるっ!すごい!!関節が滑らかすぎます!動いてます!ほら見て!皆さま方!!!!お嬢様のお指を!

「甘さが控えめなのね?さっぱりしてて食べやすいのね」

「それはようございました。また購入して参ります」

「本当に?嬉しい、ありがとう」

 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!

 に、二回目!!二回目も!?オカワリもいただけるんですか?!なにそれ、明日地球滅ぶの?ヤダヤダ、そんなのヤダ!まだ働きたい!お嬢様のために働きたいいいいいいい!!!!んぎぃいい!!!!

 ん?──スマホが鳴りましたね。あ、ご安心ください。北白川のスマホの音でございます。皆さま方の中の誰かのでしたら、即!粉砕しておりますのでご安心くださいませ。

 ──なるほど、早速、お仕事が入りました。

「お嬢様、お楽しみのところ大変恐縮ではございますが」

 はあぅ!顔を上げてちょっと首を傾げるとか!反則です!ご褒美ですから!!

「ICHアプリより、ビルメンテナンスサービスから【祓い】の依頼でございます」

 あああん、少し残念そうなお顔!北白川、悲しみに胸がえぐれそうでございます!

「わかったわ」

 残念そうに立ち上がるお嬢様、なんとお労しいのでしょうか。しかし、北白川は完全無欠を自負する執事。お嬢様を悲しませてばかりなど致しません。

「残りは車でお召し上がりください」

「!」

「今日は特別でございます」

 見て!あの目の輝き!眩しいっ!太陽より眩しい!!この輝きを全身に浴びれる北白川、最高に幸せ!

 世界よ!浄化しろ!これがお嬢様だ!!

「……なんで今日は特別なの?」

 そんなの、お嬢様が息をしていらっしゃるからに決まっていますがなにか?

「なんでもない日をお嬢様が特別にしてくださったからですよ」

「?」

 キョトン顔ーーーーっ!!

 待って、今網膜に焼き付けてるから!ちょっと黙っててください。お静かに。……。よし。

 では、現場に参りましょうか。くれぐれもお静かにお願いいたしますね。

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