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私は悪役令嬢の、ただの侍女でございます  作者: 遠堂 沙弥
第二部 悪役令嬢救済計画
39/81

4 グランディス国滞在一日目~アリエッタ・クリサンセマムとして~

 マリクに案内されたホテルは城からすぐ近くの、空中列車で数分の場所にあった。

 各箇所に繋がれた強靭なワイヤーにぶら下がった状態の乗り物。

 円錐状になったこの都市は高低差が激しいので、移動を容易にするため開発された魔道具製の乗り物が主な交通手段らしい。

 その空中列車に初めて乗車する二人は、当然不安を隠せない。


「運転開始された当初に比べ、揺れをほとんど感じないよう工夫が施された乗り物です。定期点検も欠かしていないので安全は保障いたします。どうか安心してください」

「あぁ……、こんなに高く……。落ちたらひとたまりも……」

「あの、アリエッタ嬢? 安全対策もされていますので」


 マリクの言葉がまるで耳に入っていないのか。

 怖いならよせばいいのに、アリエッタは青白い顔で空中列車の窓からずっと下を眺めていた。

 アンデシュダリア国では馬車移動が主流である。

 当然このように空高い場所を移動する乗り物など存在しない。

 この魔法大国グランディスは、魔法技術だけではないことが明白だ。

 魔道具技術でも世界的に最高峰の技術力を要しているからこそ、こういった乗り物が一般的に使用されているわけなのだが……。


「お嬢様、マリク様のおっしゃる通りでございます。恐怖を感じてしまうようならば、外をご覧にならない方がよろしいのでは」

「で、でも! それじゃあグランディス国の全景が見られないわ」


 アリエッタの必死の表情にレオナだけでなく、マリクも一瞬驚き戸惑った。

 あ、とすぐさま仮面を被ろうとするが、もう遅い。

 気まずそうになりながらも自分の態度を取り繕おうとするアリエッタに、すかさずマリクが身を乗り出した。


「魔道技術開発に関することだけではなく、この国のことを知ろうとしてくださってるんですね」

「い、いいえっ!? 別にそういうつもりで発した言葉では」

「高所は苦手ですか?」


 いつものアリエッタならば、自分の失態は悪役令嬢としての傲慢な態度で誤魔化していたところだ。

 しかし今のアリエッタはほぼ素の状態に近い。

 瞬時に仮面を切り替えるという芸当を長年こなしてきたアリエッタが、環境が変化しただけで調子を崩すはずがない。

 魔力酔いの状態に陥ったところから見ても、初めてアンデシュダリア国の目が入らない場所に来たことで、これまで抱えて来た緊張感が少しばかり緩んでいるのかもしれないとレオナは思っていた。

 マリクに窓の外にある風景を、そこら中にあふれる魔道具の数々を、意気揚々と説明されるアリエッタの表情は悪役令嬢のそれではなかった。

 レオナの前以外では決して見せることのない、本来のアリエッタの姿。


(マリク殿下の物腰柔らかな対応が、アリエッタお嬢様のお心を上手く解してくれているんでしょうね)


 アリエッタとマリクのやり取りを傍で眺めながら、レオナはわずかに安堵していた。

 しかしホテルのある駅には五分とかからず到着してしまう。

 怖がりながらも残念そうな表情を一瞬見せたアリエッタを、マリクは見逃さない。


「今日はゆっくりお体を休めて、また明日僕と回りましょう」


 好奇心あふれる瞳になりつつ、それを振り払うようにアリエッタは首を左右に振った。

 険のある言い回しを心がけるようにマリクの言葉に反論する。


「マリク殿下、私はこの国へ観光しに来たわけではありませんの。グランディス国に滞在できる期間はわずか三日、その間に多くの商品をプレゼンしていただき検討しなければ」

「この国は魔道具だらけです。アリエッタ嬢のおっしゃるように、数多くの魔道具を目にしたいなら観光するのが最も効率的ですよ」


 無邪気な微笑を浮かべるマリクに、レオナはフィクスとの血の繋がりを感じた。

 マリクに言いくるめられるような形でアリエッタが他にも遊びを断る理由を口にするが、ああ言えばこう言うといった風にやんわりと説き伏せられていく。


(この兄弟は本当に、よく口が回る……)


 レオナは両目を伏せ、頭痛を堪えるような苦悶の表情になってしまう。

 頭を押さえている間もレオナの脳裏には、意気揚々と笑顔を浮かべているフィクスがちらついていた。

 無意識に歯噛みしていたところへ、アリエッタが申し訳なさそうな声色で話しかけてくる。


「レオナ……、そういうわけだから……。明日の朝から私、マリク殿下と首都を見て回ることになったんだけど、いい……かしら」


 困った表情だが、その瞳はどこかわくわくしているように見えた。

 まるで小さな子供が親に禁止されている遊具で遊んでいいかどうか訊ねるように、レオナの許しを得ようと待ち構えているアリエッタ。

 ちらりとアリエッタの後方に控えているマリクに目をやると、にっこにこの笑顔でレオナの了承を待っていた。


(はぁ……、本来の主導権は私の主人であるアリエッタお嬢様にあるんですけどね)


 レオナは規律正しい軍人のような仕草で、アリエッタとマリクに条件を付ける。


「マリク殿下のご厚意、謹んでお受けするのは至極当然の礼儀でございます。ですが私はクリサンセマム家当主ベルドラド様より、アリエッタお嬢様のことを任されております。事業の邪魔をしないよう、私もお嬢様に付いて」

「レオナ、聞いてなかったのかしら? マリク殿下は、私と二人で首都を回りたいとおっしゃっていますの」

「……は?」


 アリエッタの側には常に自分が付いているもの。

 それがこれまで息をするように当然の行動であったため、レオナは思わず聞き返してしまっていた。

 頭の中がアリエッタの今後のことで一杯だったせいかもしれない。

 この国に馴染めるのか、魔道具だらけのこの街でアリエッタは幸せに暮らしていけるのか。そればかり思索していたせいで、レオナにとって本来の目的を失念していた。

 珍しく話の流れを把握していなかったレオナのために、マリクがさりげなく口添えする。


「兄が、ぜひあなたと二人でお話したいと申しておりまして」

「レオナがフィクス国王と過ごしている間、私はマリク殿下と首都を見て回るっていう話をしていたのよ」


 何も知らない人間が聞いたならば、羨ましがられるか警戒するような内容だ。

 圧倒的な権力を持っている人物からの誘いとなれば、かなりの確率で男女の関係を迫られるといったものになるだろう。

 そうでなければ他人には言えない趣味嗜好に無理やり付き合わされる、といった具合だ。


 しかしここに集まっている人物は、この誘いの裏を知っている。

 それはアリエッタも例外ではない。

 この遠回しな会話はあくまで「周囲にいる不特定多数の第三者」に向けられたものなのだから。


「改めて説明させてしまい、申し訳ございませんでした。そういうことならば、お引き受けしないわけにはいきません」

「明日は別行動になっちゃうけど、お互い上手くいくことを願わないとね」


 アリエッタの言葉に、レオナは苦虫を嚙み潰したような顔になる。

 当然、世の女性が羨むような意味で言っているわけではないことはわかっているのに、フィクスの顔が思い浮かぶ度に拒否反応のような感覚になってしまう自分がいた。


(そういう意味じゃない。アリエッタお嬢様の言葉は、あの男と仲睦まじくなれたらいいわねって意味なんかじゃないってば)


 両手で頭を抱えるようにしながら首を左右にぶんぶん振るレオナの態度に、マリクはどうやら察したようだ。


「レオナ殿、兄のことなら……その、大丈夫なので」

「し、失礼いたしました」

「ふふっ、レオナったら変なの」


 和やかな雰囲気を継続させながら、三人はホテルへ到着した。

 フロントにアリエッタたちを任せると、マリクは明日迎えに行く時間を告げてホテルを出て行く。

 マリクに手配してもらったホテルは立派なんてものじゃなかった。

 ぴかぴかに磨き上げられた床、調度品の数々、高い天井には豪奢なシャンデリアが星屑のような光を輝かせている。


「あのシャンデリア、自然のものじゃないわね。魔力灯ではあるけど、光が弾けるような演出は魔道具で制御されているみたい」


 父親の仕事の中には多少なりとも魔道具も取り扱っている。

 基本的に高度な技術を要する魔道具は、アンデシュダリア国への輸入は禁止されているのだが、ベルドラドは物流関係にも少しだけ関わっていた。

 あくまで商品の保管や輸送といった地理的な移動のみの仕事だが、取り扱っている商品を把握するためアリエッタはそれらの資料に全て目を通す役割を担っている。

 高魔法石精製技術習得と同時に、魔道具に関する知識も必要としていたので、世界的に一般的な魔道具に関してはレオナよりアリエッタの方が詳しかった。


「あれはエレベーターっていって、箱型の乗り物に人を乗せる昇降機よ。アンデシュダリア国にも足の悪い方がいて階段の上り下りがつらいだろうから、昇降機の導入を提案しているんだけど……。教会側がなかなか首を縦に振らないのよね。教皇様や枢機卿だってかなりのお歳のはずなのに」


 便利な道具に頼ることは決して悪いことばかりではないと、魔道具を見かける度に熱弁してくるアリエッタを、レオナは愛おしそうに目を細めて眺めていた。

 昇降機の(くだり)に登場した枢機卿などは、アリエッタに過酷な宿命を突き付けた張本人であるのに、とレオナは内心憤慨していた。

 だがそんなことは無関係だと言わんばかりに、老人たちの身体をまず気遣うアリエッタ。

 だからアリエッタは美しい。

 レオナにとって、その慈愛に満ちたアリエッタの素顔が愛しくてたまらなかった。

 気遣う言葉の中にも悪役令嬢としての傲慢さを取り入れようとしているのか。

 自分の思い通りにならないことに対して気分を害しているように言葉を選んでいるが、本心はどこにあるのかすぐにわかる。

 アリエッタのことを最初から性格の悪いご令嬢だと刷り込まれている人間ならば、せっかく金儲けができるのに伝統を重んじている人間たちがその邪魔をしてくる、と解釈することだろう。


(本当に愚かしい。印象操作でいくらでも解釈を捻じ曲げることができるんだから)


 そんな風に思いながら、宿泊する部屋の前に到着した時……レオナは気付く。

 ベルボーイが部屋の中へ案内し、それに従って部屋に入って行きながらレオナは自分の思いついた発想に心臓が高鳴っていった。

 広々とした室内は、さながら屋敷の一階部分のようだ。

 二人だけでは広すぎるリビングに、それぞれの寝室が一室ずつ。電話でルームサービスを呼べる上に、キッチンも完備されているのでこの部屋で二日は缶詰め状態になっても過ごせる程度には何もかもが揃っていた。


「それではごゆっくりお過ごしください」


 一礼するベルボーイに対し、アリエッタが悪役令嬢らしくチップを乱暴に突き付けようとした瞬間だ。

 レオナがそっとアリエッタの肩に触れ、優しく首を振る。

 いつもと違う対応をされて戸惑うアリエッタだったが、レオナの普段見せない柔和な笑みで何かを察した。


 レオナの柔らかい微笑みは、アリエッタと二人きりの時にしか見せない笑顔だ。

 第三者がいる時、レオナの表情は常に鉄面皮。あるいはほとんど無表情で接してきた。


 アリエッタが悪役令嬢の仮面を被っている時、レオナもまた従順で表情のない侍女としての仮面を被るのだ。


「荷物運びとここまでの案内、感謝しますわ」

「御用があれば遠慮なさらず申し上げてくださいませ、では失礼いたします」


 アリエッタは優しい口調で感謝を述べた。

 居丈高な態度や口調ではなく、ごく自然な雰囲気で。

 ベルボーイはいつもと変わらぬ仕事をし、部屋を出る。

 しん、と静まり返る室内でアリエッタが理由を聞こうと振り向いたと同時に、レオナがアリエッタの肩を包み込むように両手を添えながら訴えかけた。


「アリエッタお嬢様、ここでは仮面を外しましょう」

「えっ? でも……どうして? ここに来た時は悪役令嬢として振る舞う感じだったのに」


 レオナの釣り上がっていた目は大きく見開かれ、興奮しているように見える。

 いつも見せるような、アリエッタに対して感情が爆発している時の興奮とは違う。

 天啓を得たような、素晴らしいことを閃いたような、そんな勢いだった。


「ここには、アリエッタお嬢様のことを知る者はいません!」


 そう、ここはアンデシュダリア国ではないのだ。

 なぜ今さら気が付いたのか。

 入国する前に気付くべきだった。


「この国にはアリエッタお嬢様を悪役に仕立てようとする人間はおりません」


 悪役令嬢アリエッタを演じるのは、アンデシュダリア国の……聖ネフィル教会の命令だ。

 魔法大国グランディスは一切関係ない。


「アリエッタお嬢様は、ここでは悪役の仮面を被る必要はないのです」


 アリエッタに話していない内容になるが、悪役令嬢救済計画が成功した時にはアリエッタはこの国に亡命することになるだろう。

 その未来を控えているのに、今ここでアリエッタによる偽りの悪行が広まったりすれば、この場所がアリエッタにとって安住の地にならない。


「本来のアリエッタ・クリサンセマムとして、過ごしていいのです」


 アリエッタは器量が良く、頭もいい。

 加えて礼節を重んじる真っ当な人間だ――本来ならば。

 万人に受け入れられる人間なんて存在しないことはわかっている。

 だが一人でも多く、アリエッタに好印象を持ってくれさえすれば。

 グランディス国に亡命したアリエッタのことを、きっと温かく迎え入れてくれるだろう。


「……いい、の? 作らなくて……、演じなくて……本当にいいの?」

「ええ、この私が保証いたします。今この瞬間から、アリエッタお嬢様は悪役令嬢アリエッタなどではありません。私が仕上げる前から存在した、本当のアリエッタ・クリサンセマムとして振る舞って構わないのです!」


 レオナから紡がれた言葉に、アリエッタは瞳を潤ませた。

 両手で顔を覆い隠し、そのままレオナの胸へと飛び込んでいく。

 優しく強く抱きしめるレオナもまた、大切な少女が我慢しなくてもいい状況になったことを心から喜んだ。

 

 グランディス国初日、二人はこれまでにないほど楽しい夜を過ごした。


 ***


 新月の夜――。

 月明かりのない夜空は頼りなく暗いものだが、ここグランディスでは街灯が多く設置されているので、深夜でも明るく感じられる。

 夜遅くまで働いている者も多くいるせいか、人々が寝静まっている時間帯にも路地には未だ人通りがわずかにあった。


「こんな時間だってのに、ここの連中はずいぶんと働き者が多いんすねぇ」


 若い男が感心するような声を上げる。

 街灯の明かりがギリギリ届かない仄暗い場所で、二人の男が煙草を吸ってグランディスの街並みを眺めていた。


「別に労働者だけじゃあねぇだろ。ほら見ろ、あそこの若い連中なんざ浮かれて飲み歩いてるだけだ。そんなことよりマグナ、俺たちがここへ何しに来たのか忘れちまったのか?」


 マグナと呼ばれた二十代半ばであろう若い男の軽口に対し顔をしかめながら制したのは、目尻に深いしわが刻まれた中年の男だ。ロングコートを羽織り、目深に帽子を被ったその男は携帯灰皿に煙草を捨てて周囲を警戒する。

 中年男のひと睨みで、マグナは乾いた笑いを漏らしながらへらへらとした口調で返事をした


「わかってますって。大事な大事なお仕事のために、この国にまで足を運んだんですよね。とは言っても、他の奴らはここの地酒目当てに今もバーで飲んだくれてますけど。あいつらに比べたら俺、真面目でしょう?」

「どいつもこいつも、観光気分で浮かれやがって」


 そう言った瞬間に男は巡回している警備員に気付き、暗がりから明るい場所へと移動した。つかつかと歩道を歩き、警備員とすれ違いざまに会釈して愛想よくする。

 中年男の笑顔がぎこちなかったせいか、警備員が不審に思い声をかける。


「こんな時間まで一体どこへ?」

「いやぁ、今日この国へ到着したばかりで少しばかり道に迷っちまいまして。ほら、あそこのホテルへ今から帰るところです」

「観光客ですか?」


 おもむろに取り出した身分証を手に、警備員は怪しいところがないか確認した。

 怪訝な表情はそのままに、他に不審な点が見当たらなかったので彼らに対し注意を促すにとどめる。


「こんな時間までご苦労様です。ですが早いところホテルへお戻りください。パーシヴァルの治安がよそに比べ比較的良いとはいえ、それらは全てここに住む方々やお客様たちの協力あってのものですので」

「わかってますって。警備員さんもお疲れ様です」

「もういいですかい?」

「ええ、どうぞお気をつけて」


 愛想よく、軽快な口調であしらったマグナの雰囲気がよかったためか。警備員は警戒の色をわずかに解いた様子で、二人をあっさり解放し見送りまでしていた。

 重い足取りの中年男と軽やかな足取りのマグナは、言った通りホテルのある方角へと歩いて行く。

 歩きながらマグナは「ふふん」と得意げに鼻を鳴らしながら、仏頂面の中年男をからかった。


「デヴォルさん、人相悪すぎ」

「うるせえ、生まれつきなんだから仕方ねぇだろ。そんなことより首尾はわかっているな?」

「もちろんですよ。豪商として名高いストラヴィスキー家の依頼なんですから、尾行はお手の物ってね」

「さすがはシュリマール・ファミリーってところか」


 軽薄そうな顔から、冷えた表情を覗かせるマグナ。

 白い中折れ帽のつばをくいとつまんで目深に被ると、彼の瞳は残酷な色を帯びた。

 それを隣で盗み見た中年男、デヴォルは背筋が凍る思いがした。先ほどまでの上下関係が逆転したかのような、そんな雰囲気が漂う。


「俺の甥からの依頼だ。今ではライバル会社となったクリサンセマム・カンパニーを潰すために、お前たちシュリマール・ファミリーの力を借りる」

「クリサンセマム家の長女は王太子殿下と婚約しているって話だけど、本当にいいんですか? 俺たちは加減ってものを知らないですよ?」

「どんな形でもいい。クリサンセマムの邪魔をするためなら、どんな悪事を行なってももみ消してやるって約束だ。ただしやりすぎるなよ? マグナ」


 釘を刺すデヴォル・ストラヴィスキーであるが、薄ら笑いを浮かべているマグナ・シュリマールに通じているかどうか判断が難しい。


「汚れ仕事は俺たちの最も得意とするものなんでね、安心して観光でも楽しんでください」

「……」


 二人は夜の道を行く。

 彼らの目的は、アリエッタ・クリサンセマム。


 豪商ストラヴィスキー家はライバル会社であるクリサンセマム・カンパニーを目の敵にしており、事ある毎に衝突しては取引先をアリエッタに奪われてきた。


 クリサンセマム家への恨みは強く、そして根深い。

 憎悪を孕んだ計画が今、静かに動き出す。

 アリエッタを標的とした計画が――。

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