おまけ② 【変】
おまけ② 【変】
「隼人、何してんの」
「暇つぶし」
「え!暇なら仕事手伝ってよ!!!」
「渋沢ぁ、お前そろそろ自分の仕事を俺に任せるという行為が恥ずかしいことだって気づけよ」
「なんで恥ずかしいの」
「俺はお前らと違って役職もってねえの。もっと言えば裁判官としても裁判所にも所属してねぇの」
「うわ。隼人ってば所属もしてないのにこんなとこにいて仕事してくれてるんだ。優しいねー」
「ポジティブなの?」
「隼人ってば仕事早いし間違いなんてしたことないし本当にすごい。最高。昔から優秀だったもんね。すごいなー」
「そんな棒読みの賞賛なんて嬉しくねえからな」
「なんだ、ちっ」
「舌打ちすんじゃねえ」
「じゃあコーヒーくらい淹れてよ」
「てめぇでやれ」
「何しにここにいるわけ」
「少なくともお前のコーヒー淹れるためじゃねえな」
「お前ら五月蠅いぞ。いい加減にしろ」
「ほら、紅蓮に怒られた」
「俺のせいじゃねえだろ」
「紅蓮は何してるの」
「休憩だ」
「仕事してるの俺だけじゃん。俺も休もう」
「紅蓮は自分の仕事終わってっから休んでんだよ。お前終わってねぇだろ」
「お腹空いたなー」
「聞けこら」
「そういえばさぁ、この前ちらっと聞いたんだけど」
「話逸らしやがって」
「で、なんだ渋沢」
「なんかね、今度新しくなるらしいよ。上の方が」
「上の方?ざっくりだな」
「しょうがないじゃん。ちらっと聞いただけなんだもん」
「どこで誰が言ってたんだよ」
「叶南が言っていた。この前トイレでたまたま会ったとき」
「んな状況のときに話す内容じゃねえ」
「上の方ってことは、叶南より上ってことだな」
「多分ね」
「ちっとはマシになりゃいいけどな」
「どうだかな」
「誰が来るとか言ってたか?」
「知らない名前だったよ。それにトイレだからさ。ジャージャー音がしててちゃんと聞こえなかったし」
「意味ねえ」
「だって叶南もさらっと話し出すんだもん。こっちだってそんな重要な話だと思わないじゃん」
「あいつは何考えてんだよ」
「だが、何かあれば直接話にはくるだろう」
「だといいけどな」
その時、部屋のノック音が聞こえる。
先ほどの話から、叶南かと思った三人だが、どうやら違うらしい。
渋沢が出てみると、そこには初めてみる男が立っていた。
「あ、えと、どちら様ですか?」
男はにっこりと微笑みながら、こう言った。
「隼人はいるか?」
自分の名前が呼ばれたことに気づき、隼人は首だけをひょいっと動かして、そこにいる人物を確認する。
「ちょっと出るわ」とだけ言って部屋を出ていった隼人は、その男と並んで座っていた。
「何してんだよ、こんなとこで」
「調子はどうかと思ってな。右目の」
「・・・・・・」
「いずれ、食いつくされるかもしれない。それでも、お前はその目を背負い続けるつもりか?俺が普通の目に変えてやってもいいんだぞ」
「・・・・・・」
「その目を失っても、お前であることに変わりはない。お前から悪魔の目が無くなっても、誰も態度を変えたりしない」
「んなことはわかってる」
「ならなんで手術しない?」
「まだ必要なんだ、この目が」
「悪魔を利用するのか?」
「なんでも利用してやるよ。この世から、クソみてぇな奴がいなくなるまで」
「いつになることやら」
「相変わらず青汁好きだな」
「まあな」
男はゆっくり立ち上がると、隼人に背中を向けて歩き出す。
「隼人」
「ん?」
「お前があの人に生かされたのは、気紛れだ。堅ッ苦しい”恩”なんてもん、考える必要はないぞ」
「・・・・・・」
「近いうちに時代が動く。お前がその時を背負っているかによっては、敵になるかもしれない。早めに手放すことをおすすめするよ」
「余計なお世話だ」
「良い返事、待ってるよ」
「・・・・・・」
男が去っていったあと、しばらく隼人はそこに留まった。
今俺が背負うべきものは、たったひとつ。
「おかえり隼人。どこ行ってたの?注文してたピザ届いたから食べちゃってるよ」
「渋沢、俺は和風を頼んだんだが」
「いいじゃん。バジル美味しいね」
同じような毎日を一緒に生きる、この時間だけ。
「どんだけのもん背負ってようが、明日が来る限り、俺は今の俺のまま生きていく。それが、俺が生かされてる理由だ。それと」
「あ、全部食べちゃった」
「お前には”待つ”躾を教えなきゃならねえな」
「ごめんちょ」
「出せええええええええ!!!俺のピザ!!!!」
「隼人やめろ。出されても処理が大変だ」
「俺のほっぺが内側に凹むううううううううううううううう!!!!!」
「許さねええええええええ!!!!」
毎日続く、愛おしい者たちとの、愛おしい時間。




