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皎天  作者: うちょん
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おまけ① 【紡】


おまけ① 【紡】





 「イデアムさん、目を覚ましました!!」

 イデアムと呼ばれた男は、寝ていたにも関わらずすぐに起きあがる。

 そして、目的の場所へと走っていく。

 そこには、横たわっているものの、目を薄っすらと開けている男がいた。

 男はゆっくりと視線だけイデアムに向ける。

 「よう。やっと起きたか」

 「・・・し、信様、は」

 「てめぇの心配より先にあいつの心配か。さすがというべきか。あいつなら無事だ。今は寝てるよ。ずっとお前のことが心配で起きてたからな」

 男は安心したように目を閉じる。

 イデアムを呼びに来た男がイデアムに椅子を持ってくると、イデアムは男に礼を言ってそこに座る。

 ぼろぼろになりながらもなんとか目を覚ました男に、ゆっくり話しかける。

 「海埜也でいいんだよな?あいつ・・・信から聞いた。何があったのかは、死神って奴から聞いた」

 「・・・・・・」

 「お前の体調がもうちっとよくなったら全部話す。それでいいな?」

 「・・・今、話していい」

 「けど」

 「頼む・・・」

 海埜也の弱弱しい声に、イデアムは一瞬躊躇したものの、話をしていく。




 「李って奴は亜緋人に連れていかれて、拓巳って奴は・・・死んだ」

 「・・・・・・」

 「俺はあの場にいたわけじゃねぇけど、よくあの程度で済んだと思うよ。お前が体張って戦ったから、信は無事だった。そう思う」

 「・・・・・・・」

 「慰めにもなんねぇよな。悪い」

 「・・・あなたには、助けられた」

 「俺じゃねえ。お前を助けたのはあいつら」

 そう言って、イデアムは自分の仲間の医療に精通している者たちを指さす。

 自分たちの話でもしているのかと思ったその者たちは、軽く手を振ってきた。

 「私は、どのくらいで、動けるよう、に、なる?」

 「だいぶやべぇからな。本来なら半年はおとなしくしてほしいところだが、お前、おとなしくしてるなんて無理そうだな」

 「信様を、守る、のが、私の、役目です、から」

 「・・・守るのはいいけどよ、あいつをもうちっと強くした方がいいと思うぜ、俺は」

 「信様、は、本来、戦う必要など、ない、お方です・・・。私が、お守り、すれば・・・それで、いい」

 「お前はそう思ってても、本人は違うみたいだぜ?」

 イデアムがどこかを見ると、そこには起きてきた信がいた。

 少し寝ぼけているようだが、目を覚ましている海埜也が確認できると、一目散に駆け寄ってくる。

 そしてまた、わんわんと泣き出す。




 「馬鹿野郎!!!無茶すんなよ!!よかった!!!!」

 「信、様・・・よくぞご無事で」

 「俺はいいんだよ!!!自分で言うのもなんだけど大して戦ってねえから!!!お前がやばかったの!!!まじで!!!このままッ!!!起きなかったらどうじようがど!!!!」

 「こいつ、まだお前のこと守るって言ってたぜ?」

 イデアムがまるで茶々を入れるようにそう言えば、信は海埜也を少しにらみつける。

 「海埜也!俺!この人たちに今特訓してもらってるんだ!!!」

 「特訓・・・?」

 「俺、もっと強くなるから。俺がもっと強くなって、足引っ張らねえようにするから。だからっ・・・!!今は、ゆっくり休め」

 「しかし、私は」

 「もう二度と、失いたくないんだよ、俺は」

 信の声は、とても真っ直ぐだった。

 海埜也の目に映る信は、もう、あの頃の信ではなかった。

 「拓巳のときみたいに、目の前で誰かが死んでいくのも嫌だ。ゝ煉のときみたいに、俺のために人が傷ついて、気づかないままいなくなるなんてもっと嫌だ。俺は、守られるだけじゃない。守ってもらってきた分、それ以上に、俺も守りたいんだ。海埜也、お前のことも」

 人はいつか亡くなるものだとわかっていても、それは突然やってくる。

 冷静に対応できる者の方がほとんどいないだろうが、目の前にあるそのひとつを、守れる可能性が少しでもあるなら。

 「しかし、敵は、とても強くて」

 「わかってるよ!」

 「私は、信様を守る役目を仰せつかっており、もし、何かあったら、顔向けが」

 「はいはい、そこまで」




 二人の会話をずっと聞いていたイデアムが、二人の間に割って入る。

 信の頭に手を置きながら、イデアムは海埜也に向かって笑みを向ける。

 「頼もしいじゃねえの。なあ?」

 髪の毛をわしゃわしゃと撫でられた信は、あまりそういうのに慣れていないからか、少し照れたようにしている。

 「強くなりてえって思うのは悪いことじゃねえ。だろ?しかも、自分のためじゃねえ。お前のためだ。自分以外の誰かのために求める強さだ。あるに越したことはねえと俺は思うぜ?」

 「しかし」

 「自慢じゃねえが、俺たちもそれなりに修羅場くぐってきてんだ。お前が万全な状態に戻るまでは責任もってこいつを強くしながら守っていく」

 「・・・・・・」

 「お前は、今は自分の体のことだけを考えてりゃいい」

 「・・・名は」

 「ん?」

 「あなたの、名は」

 「俺か?俺はイデアム。よろしくな」

 「イデアム・・・どこかで・・・」

 イデアムは小さく笑うと、後ろから声が聞こえてくる。

 「イデアムさん、ご相談が」

 「おう、今行く」

 「よっこらせ」と言いながら立ち上がったイデアムは、「何かあったら呼べ」と伝えて背を向け歩く。

 その見慣れない背中がなぜか恰好よく見えた信がじっと見ていると、海埜也に呼ばれ慌てて顔を向ける。

 「お怪我は、ありま、せんか」

 「うん。俺は大丈夫。海埜也はしばらく休んでた方がいい」

 「なにか、あったら、”龍海”という男、もしくは”黒夜叉”という男に、力を借りて、くだ、さい」

 「海埜也の知り合い?」

 「俺と同じ、くらい、強い、者たちです」

 「わかった。でも、何かないように、俺も今強くなってるから」

 「・・・ええ。わかり、ます」

 「え?」

 珍しく見る、海埜也の柔らかい表情だった。

 「以前、と、顔つき、が、少し、違います」

 信は色んな感情がこみあげてきて泣きそうになるが、ぐっと堪える。

 それを少し離れたところから見ていた男。




 「ひとまず、あの男の強化訓練からですね」

 「任せたぞ、ブライト」

 「イデアムさんは加わらないんですか」

 「俺は別件。ちょいと出かけてくるわ」

 「いつお戻りになりますか?」

 「すぐ戻るよ。んなお留守番する犬みてぇな顔すんな」

 「していません」

 「安心しろ。俺を誰だと思ってんだ」

 「イデアムさんです」

 「そうだ。俺は」




 「泣く子も黙る、革命家イデアムだ」






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