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ピアノとわらべ歌

(3/3)

コンラッドの蔵書の中には 歌の本があった。


歌の本には 歌詞だけでなく楽譜も書いてある。


はじめて楽譜を見たとき ゴンは これは魔術書なのか?!と興奮した。


「ねえねえ 僕も 魔術をならえるの?」

ゴンは コンラッドの所にすっ飛んで行った。


「えっ?」(魔術系の本は 一切いっさい渡しておらぬはずだが)

コンラッドは 急いで書庫に向かった。ゴンと一緒に。


念話で知らせを受けたミューズもついてきた。


5本一組の線が 並んだページをみせられて、けげんな顔を浮かべるコンラッド。


「ああ これ 楽譜だね」ミューズ


「楽譜?」ゴン&コンラッド


「曲を(しる)してあるんだ」


そういって コンラッドとゴンに楽譜の役割を説明するミューズ


「ほぅ 聞き覚えではなく 書き記して曲を後世に伝えるとは

 なかなかのアイデアだな」コンラッドは感心した。


「とにかく 魔法や魔術とは関係ないのなら 安心じゃ」

そういって ミューズに後を任せて立ち去るコンラッド。


「ねえねえ 楽譜の読み方をもっと教えて♡」


「いいよ。 せっかくだから 楽器の使えるところに行こうか」


ミューズは ゴンと一緒に龍の庭にもどったものの・・・

「うーん 僕がうかつに歌ったりハープを演奏すると魔法が発動してしまうからなぁ。


 ねえねえコンラッド。

 魔法のない世界の 魔力と無縁の楽器を持ってない?」

ミューズは 休憩中のコンラッドに念話を送ってねだった。


「ふ~む」

コンラッドは 少し考え込み、

「ゴンのはいれる広さのコンサートホールが用意できるなら

 楽器を出してやれんこともない。

 ただし その楽器は 大きくて嵩張るから そうそう動かせん

 湿気に弱く 水濡れ厳禁 火気厳禁 乾燥にも弱い」と言った。



というわけで いつのまにか、「楽譜を読みたい♡」というゴンの素朴な願いは、「コンサートホールを作ろう」という話になってしまった。


 (なんでこうなるのかなぁ・・)とゴンとボロンは顔をみあわせた。


「異次元のものを持って来て それをこちらの世界で使おうと思えば

 こういう展開になるのじゃ。


 魔力や魔法や魔術と無縁の世界のモノを

 魔法の世界に持って来て

 魔力たっぷり 魔術にもたけたエルフが活用するとなれば

 不測の事態を防ぐために 大掛かりな防護措置が必要となる

 それだけじゃ」コンラッド


「ただ 楽譜を読みたかっただけなのに?」ゴン


「お主もまた 力を秘めたるドラゴンだもの

 今はまだ 幼くて できることは限られておるが

 それでも 日々成長を続けておるからの。

 成長にあわせて 力の使い方、それは発するだけでなく抑えることもどちらもできるように制御することも含むのじゃが

 そういう力の働きを学んでいかねばならぬ。

   そのためには 場の準備も必要なのじゃよ」コンラッド


というわけで、龍の庭でも まだこれといった使用がなかった、草原の南側(魔獣の放牧地帯との境の近く)に コンサートホールが設置された。


 この建物も コンラッドが個人で持っている収納空間から出て来たのだ。


「君は 一体 どれほどのものを 持っているのだ!?」驚く一同


「滅びた文明一式じゃな」耳をかきつつこたえるコンラッド。


コンサートホールの中には グランドピアノが置いてあった。

 建物を出す前に、コンラッドはあらかじめ、

 ホール内の仕様も含めて「ゴンが使いやすい建物にするため」の改築案を、ボロンと作り上げ、

 それに沿った改造した建物を、

 中に備品を配置済みの状態で、

 コンラッドは 魔法でポン!と出したのである。


 もちろん 手入れや調律に必要な道具等は 付属の備品倉庫に置いてあった。

 備品倉庫の中は ガランとしていたが。


「混乱を避けるために ピアノのレッスンに必要なものだけしか置いてない」とコンラッド


 それでも 棚の上には 手巻き式のメトロノームが置いてあったのは さすがコンラッドだ。


「懐かしいなぁ

 お師匠様の部屋にあった ピアノとメトロノームだ♡」ミューズ


「大量生産品だから 同型のものがあっても不思議はないさ」コンラッド


「楽譜も豊富だねぇ」

ミューズは 楽譜棚からショパンのエチュードを取り出し、

木枯こがらし」のページを開いて弾き始めた。


コンサートホールの中の見学に来ていた クランメンバーたちは

まるで深い森の中で響く音 続いて風の音を聞いているような気がした。


「すごい!」ゴンはうっとりとしてため息をついた。


「じゃ レッスンを始めよう。

 まずは 音符の読み方 音符があらわす音から覚えよう」

ミューズが 明るい声で言った。


というわけで、ミューズの「楽譜の読み方講習」が開かれ

ゴンと一緒に ボロンとデュランも参加した。


楽譜の読み方を一通り覚えたゴンは、

読書部屋で 歌の本を読んで楽しむようになった。

 楽譜を見ても イメージがうまくつかめない童謡わらべうた

 ミューズに頼んで ピアノの伴奏つきで歌ってもらった。


一方 ミューズは空き時間に、一人でピアノの練習をするようになり

そうやって ミューズがモノにした曲の演奏を、コンラッドは聴いて楽しむようになった。


ドラゴンクランのお楽しみ会に 「発表会」が加わった。


そこでは ミューズのピアノ伴奏つきで ゴンが童謡をうたったり、

ミューズが演奏するピアノ曲を みんなで鑑賞して楽しんだ。


「歌には 音頭おんどとちがう愉しみ方もあるんだなぁ」ボロン


「楽団とはちがう演奏スタイルが新鮮ですね」清明


「ピアノ曲って 刺激的でリフレッシュされるなぁ」スカイ


「魔術が発動しない魔法を見ているようじゃ」コンラッド


感想は各々《おのおの》違えど、演者も聴衆も 共に楽しむひと時であった。

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