ゴンの個室
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餅つき歌を歌いながら、ワームをぶっ飛ばして満足したゴン。
その時の興奮が少し冷めてきて、でもまだ退屈にまで至らない頃
ゴンは コンラッドから たくさんの本をもらった。
これまでは ミューズがたくさんの物語や歌を教えてくれたけど
それも少し種切れになって新鮮味がなくなりかけていた時だったので
「本」という 新しい世界に出会ったゴンはワクワクした。
そして 「本」を読むには 文字を覚えなければいけない。
毎日 ミューズに本を読んでもらうだけでは満足できなくなったゴンは
文字を教えてほしいとミューズにねだった。
ミューズもまた 毎日 毎日 同じ本を あるいは違う本を 何時間も読まされるよりは、ゴンに文字を教えて ゴンが自分で読書できるようになった方がいいと思ったので、ゴンに読み書きを教えることにした。
といっても ドラゴンの体は 物理的に字を書くことにはむいていない。
なので、書くことは ミューズが書いているところを見せて 書き順を教えるだけであったが。
将来 ゴンの魔法の腕が上がれば、魔法を使ってゴンが文字を書くときに役立つだろう。たぶん。
というわけで ゴンは 龍の庭で 普通に字の読み書きを習った。
何しろ コンラッドの蔵書は いろいろな時代の 様々な次元の本が雑多にあったので、それらを読むために覚える言語(文字)も山ほどあったのだ。
一応 ミューズが時渡りして暮らした世界の本から順番に読むことにしたのだが。
(つまり 魔術書に使われる古代文字は まだ教えないことにしていたコンラッドとミューズ。
「魔力のコントロールもできておらん子供に魔術書は害にしかならん!」力説するコンラッド
ミューズも自分自身の過去の失敗を振り返って、同意する。
「魔力コントロールができても、社会の仕組みについて知らなければ
魔法を適切に使うことは不可能だ」)
ゴンは 日向ぼっこをしながら 文字の勉強をすることも
洞窟の中で 本を読むのも大好きだ。
ゴンは 本を読んでいるとき ついつい無意識のうちに
フンフン歌いながら、しっぽをふる。
これは ご機嫌な時に 自然に出てくる動作なのだ。
それゆえ コンラッドとスカイとボロンの3人で、
ゴンの卵があった大洞窟を囲む硬い岩盤の中の、
小さな穴を整備して、ゴンのための読書室を作ったのだ。
岩盤の強度を損なわないように穴を拡張したり空気の通り道を作ったのは、ドワーフ技術を持つボロン。
そこに転移陣を敷設して ゴンの読書室にしたり
岩盤の強度を保ちながら拡張魔法と空間魔法を使って、書庫を作ったのはスカイ。
コンラッドは 作業に必要な術式をスカイに教えても
最近では 疲れるからと言って、
魔術の行使(=魔力を消費する仕事)はスカイに任せている。
最後に ゴンと一緒に調度品を整えたのは ミューズのセンスである。
というわけで 最近のゴンは 地底世界を空中散歩するだけでなく
マイルームで読書する楽しみにもはまっている。
もちろん 空中散歩のあとは 張り出し岩にある温泉プールで泳ぐことも大好きだし、そういう時には ノーム達も交代で付き合ってくれることが多い。
そして ノームの昔話を聞くのも ゴンは大好きだった。
たとえ それが 同じ話の繰り返しであったとしても。
この続きは 明日の朝8時に公開です。
よろしくお願いします。