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戦校  作者: 早瀬 笑
1/1

01 アメリカ入り


 国際戦闘専門高等学校。


 略して戦校。


 古く、著しく欠如した戦闘能力の再興を目的に多くの国がお金を出し合い創られた学校。

 創立以来卒業生の多くが戦闘隊員として活躍しているこの学校は今年で創立50年を迎える。


 倍率にして約10000倍。

 例年全世界からこの学校に入るべくして、各界の英雄の子供、ボンボンの息子が多く受験しに来る。

 全世界にある高校の中で上位に君臨する高校だということは言うまでもない。


 だが、そこまで知名度を持つ高校でも機密事項の情報が一つ。

 入学者の選考方法である。

 その謎に包まれた選考方法は少し狂っている。


 陸上で金メダルを取った選手の息子は落とされ、どこかの八百屋の息子が合格する。

 この高校の選考方法には、その人の背景は一切関係ないのだ。

 それはもちろん頭脳においても。

 全国模試一位をとっても、例えその人が『天才』であっても誰が不合格になるかは分からない。


 つまり受験生からしたら、受かるも受からないも運次第ということなのだ。

 誰でも世界トップの高校に受かる可能性がる。

 だったら『受けるに越したことはない』という思考に至るのだ。

 そんな背景が、この異常なほどに高い倍率を引き起こしている。


---


 今年の新入生は合計300人。

 全世界からその選考を突破したものが集まる。


 全世界から集まる。

 そう、()()()から。

 国際学校創立以前の大きな難点であった言語。


 創立以前から何らかの第二言語の習得の必要があるのか?等と疑問が飛び交っていたが実際はその想像の斜め上を行くものであった。


 史上初の国際高校創立の発表と同時に、アメリカの技術開発の最先端を行く企業により同時通訳機器の発表が為された。

 もちろん同時通訳機器の発表が戦校の為に行われたということは周知の事実だ。


 戦校に出資している国は多いが、その中でもアメリカは特に多い。

 そんな国の下にある企業が戦校に従順であるのは当然だろう。


 戦校のために開発され、販売されていた同時通訳機器も今となっては一人1個持っているのが当たり前となっている。

 現在この世界は、『国』という分類にほとんどの意味がない。


 事実、国は領土を分ける言葉でしかないのだ。

 そこに住んでいる者がその国の出身だなんて事は今やほとんどない。

 言語の壁という概念がなくなった今、自分の住みたいところに住み移るのは難度の高いことではなくなったのだ。

 それもこれも、同時通訳機器の生活への浸透のおかげである。


---


 そして明後日。

 4月2日。

 300人が待ちに待った日の訪れがある。


 国際戦闘専門高等学校50期生入学式。

 行われる場所は戦校の体育館。


 そこに間に合うべくして、新入生300人のほとんどが今日と明日にアメリカに入ってくる。


 城ケ崎 (すぐる)もその一人。

 名前からもわかる通り生まれも育ちも日本だ。

 LOVE JAPANの一人である。


 日本からアメリカまでは極超音速旅客機で約1時間。

 航空及び、水上の移動速度は何年もの時を経て変わってしまった。


 かつて日本からアメリカには10時以上かかっていたのも、今では1時間も要さない程に進化を遂げている。

 陸上を走る自動車はすべて自動化され、この極超音速旅客機さえもが自動運転を為している。

 

 事実、自動化が広まったことにより事故発生数も激減している。

 つい最近、自動車の大手メーカーが主導による運転を要する自動車の販売撤廃に踏み切ったことが話題になった。


 この決定に多くの者が口をそろえて「ようやくか」と言っていたのは記憶に新しい。

 かつて自動車大国と言われていた日本も今や、手動の自動車を使用している割合は1パーセントを切っている。

 

 法律も大きく変わった。

 自動運転の設備を搭載した自動車に関しては、12歳以降から一人での乗車を許可するという法律までできた。

 時代の変化に合わせ法律も大きく変えていかなくてはならないのだ。


---


 城ケ崎傑はアメリカに入った。

 明後日に迫った入学式に向け、意気揚々に宿へと向かう。

 新1年生には戦校から宿が貸し出されている。

 もちろんその宿は一時的なものであって、正式に入学してからは学校付属の寮に住まうことになる。


 と、聞いてきてみたんだが・・・。

 ここ・・・だよな?


 戦校曰く宿という場所に来てみたのだが。


 これ宿っていうより・・・ホテルだよな?


 一等地に聳え立つ高いホテル。

 最上階を肉眼でとらえるのは不可能に近い。

 看板を見てみたら122階建てと書かれていた。

 流石はアメリカ。


 そしてもう一つ驚くことには、このホテルの全部屋が新入生に貸し出されていることだ。

 1階から122階まで全ての部屋を使える。


 カウンターに立っているお姉さんに新入生である旨を伝えると、俺はその女性から鍵を預かった。


「ミスター城ケ崎ドノ。貴方は最上階になります。どうぞごゆっくりしていってください。ご要望があれば、いつでもお部屋にある電話から気軽に申し付けください。できる限りのことは対応させていただきます」


 たまに発生する通訳のバグが起こったが、それでも聞き取れない程ではない。

 完璧な接客だ。


 それより疑問に思うことが一つ。

 なんで俺が最上階なんだ?

 お姉さんの対応からして、おそらく最初から部屋は決まっていた。


 城ケ崎傑。

 出席番号では一番になったためしがないし、運動でも1位を取ったことはない。

 これといって取柄も無い俺が何で最上階なんかに・・・?

 選考方法と同じく部屋の選び方にまで同じ方法がとられているのだろうか。

 真相は闇の中。


 最上階で3日間を過ごせることは喜びの他ないが、何らかしらの形で注目を浴びることになりそうで怖い。

 選考方法が謎だとはいえ、多くの権力者が参加しているのも事実。

 その人たちから変な注目を浴びる事だけは絶対に避けないとならない。

 今後(3日間)の生活が思いやられる。


---


 エレベーターに乗って最上階へと上がる。

 鍵を使うことで自分のフロアにしか行くことが出来ないようになってるらしい。

 セキュリティ面は完璧だということか。

 良いことだ。


 1階を出発した時点では、エレベーターには6人ほどが乗っていたが30階ほどで4人が下りて行った。

 残ったのは自分と同じ年齢の女子が一人。


 その長い髪を後ろで結んでまとめ上げているその女性は、まだ6人乗っていた時から異彩を放っていた。

 明らかに大金持ちの御令嬢だろう。


 俺はその女性に目を付けられないよう、直立して一切の言葉を発せず、鼻息すら響かないようにした。

 60階を過ぎたほどから、耳がキーンとしたが唾を飲み込んでその違和感を抑えた。


 121階。

 そこでようやくエレベーターが止まったのと同時に降りて行った。

 俺の一階下だから絶対足音を立てないようにしよう。

 俺はそう心に決めた。

 女性は降り際に「お前が最上階?」と言わんばかりの顔をしていたがそんな事は無視。

 そして俺は一人になったエレベーターで最上階まで行った。


---


「3番、3番・・・3番。」


 お。あった!!

 ここだ。ここが俺の部屋だ。


 カードキーを使って扉を開けるとそこには高校生が一人で住むには広すぎる程の部屋が広がっていた。

 部屋には机・椅子・テレビ。

 風呂もあれば、キッチンもある。

 元々はホテルとして使われていることを考えれば当然だが、ここまで広すぎると逆に恐ろしい。


 部屋に入ってすぐにベットにダイブをして見せた。

 小学校と中学校でそこそこ上手かった俺の飛び込みは見事なものだと我ながらに思った。


 にしてもどうしたものか。

 部屋に入ったのは良いものの。


 学校からの指示で何も持ってきてないから何にもすることがない。

 隣の部屋に行って遊ぶということも気が引けるし・・・。


 まあ・・・寝るか。


 旅客機に乗って疲れがたまっていたし、休憩するにはぴったりすぎる。

 色々と、この3日間の計画は立ててきたが行動を予定しているのは明日からだ。

 だから今日は明日の為にもゆっくりと休んでおこう。



 そうして眠りについた。


---


「ピンポーンピンポーン」


 気づくとチャイムが鳴っていた。

 チャイムの音はめざし替わりにはぴったりみたいで。

 すぐに俺の脳は目を覚ました。


「はい。はーい。ちょっと待ってくださーい」


 部屋中に響き渡る声で、そう言うと、俺は小走りで玄関の方へと向かう。

 扉を開けてみるが・・・。

 友達を作りに誰かが来たのか、という希望はすぐに消えた。


 そこに立っていたのは1人の女性だった。

 女性は女性でも20代前半の美人な大人。

 俺の担任だ。


 入学式前に各家庭に配布された資料で、クラス分けと担任の先生が紹介されていたのを思い出した。

 確か・・・(すめらぎ)先生とか言ったか?

 下の名前まで覚えているほど俺の記憶力は優秀じゃない。


「君が城ケ崎君だよね?」

「はい、そうですが・・・何か用でしょうか?」

「いやぁ。ただ顔を見てみたくなってね。ほら君かっこいいじゃん?」

「そ、そうですか・・・」


 傑は苦笑を浮かべながらも、しっかりとした受け答えをする。

 出来るだけ不自然の無いように。


「俺はそんな事一度も言われたことないですけど・・・」

「ふーん、なるほどね。それはドンマイ!!」


 この人が担任なことに不安を持ったが、俺がどうこう言って何か変わるわけでもないので黙っておいた。


「それより一つ質問いいですか?」

「なになに?」

「何で僕が最上階なんでしょうか」


 ずっと疑問に思ってたことを、聞けるチャンスだ。

 まあ、これも機密情報だとか理由付けされて答えが返ってくることは期待していないけど。


「ああ、分かんないの? それは君の能力が高いからだよ」

「?」


 あからさまに分からない顔をしたが、それ以上は教えてくれなかった。


「まあ、学校が始まったらわかるからさ! それまで楽しみにしてなよ」

「へえ」


 そう、腑抜けた声で返事をしたのを最後に皇先生は帰っていった。

 訳の分からない話ばかりで余計に頭がこんがらがってしまった。

 むずむずした感触が感じられた。


 と、また何もない時間が始まってしまった。

 今の時間は9時ごろ。

 さっき寝始めたのが4時頃だったから5時間は寝たことになる。


 こんな微妙な睡眠をとった後で、微妙な時間に寝れる訳無いだろうが。

 初対面だが皇先生。

 恨むぞ。


 今度ばかりは本当にすることがなくなってしまった。

 が、やることがない以上寝る以外の選択肢がないので結局寝た。


 明日はアメリカを探検しよう。


読んでくださりありがとうございました。

ラノベに関しては稚拙ではありますが、精一杯頑張りたいと思います。


良ければブックマーク、評価お願いいたします。

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