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第二十六話 熱っぽい吐息②


「えっ、透、くん……?」


 急いで帰宅し、早坂の部屋に入る。


 すると案の定、顔を真っ赤にして苦しそうに寝込んでいる早坂の姿があった。


「大丈夫か?」


「う、うん。大丈夫、だけどぉ……」


「噓つけ。熱は?」


「は、計ってない、けど」


「そうか」


 力を振り絞って最低限連絡だけ入れたって感じか。


 とりあえず、今の早坂の状態を確認する必要があるので、ベッドの脇にある椅子に座り、早坂の顔を覗き込む。


「失礼するぞ」


 もはや許可を取らずに、湿って額に張り付いた前髪を持ち上げて、手を当てる。


「ひゃうっ⁈ と、透くん⁈」


「う~ん……結構熱ありそうだな。倦怠感は?」


「か、かなりあるけど……って、ち、近いよぉ……」


「あっ」


 早坂の大きな瞳が、すぐそばにあったことに気が付いて、慌てて距離を取る。


「ごめん」


「い、いいよ。透くんなら、別に……」


 もぞもぞと布団の中に顔を半分埋める。


 ひとまず早坂が俺とかろうじて話せることに安心感を感じる。


 思い返せば、早坂はここ最近くしゃみや咳をよくしていた気がする。


 それにちょうど季節の変わり目で寒暖差が激しく、乾燥もしているので風邪を引きやすい時期ではあるだろう。


「とりあえず、スポドリとか諸々買ってきたけど、飲むか?」


「う、うん」


 もぞもぞ、とゆっくり体を起こす早坂。

 

 頬は紅潮していて、「んっ」と漏れる吐息は熱っぽく、妙に色っぽい。


 加えて緩めのパジャマがはだけていて、ちらりと白い下着が見えてしまっていた。


「と、とりあえずこれ」


「あ、うん。ありがとう」


 蓋を開けて渡すと、早坂がグイっとあおる。


 一挙一動がいつも以上に艶めかしく、見ていいのかという気持ちになるのだが、正直今それどころではない。


 俺の理性とか羞恥心とかよりも、早坂の体調が優先だ。


「他になんか欲しいものとかあるか?」


「うぅ~ん……ボーっとしてて、よくわかんないなぁ……」


「そうだよな。じゃあ、腹とか減ってるか?」


「お腹は、空いてる、かも」


「わかった。じゃあお粥かなんか作ってくるよ」


「と、透くんが?」


「あぁ。できる限り普通に作るけど、マズかったらすまん」


「ううん。大丈夫、透くんが作ったご飯なら、絶対に美味しいよ」


「そ、そうか」


 料理に関して全く自信がないのだが、理科実験だと思えばいいと伊織が言っていた。


 だから俺にもきっとできる……はずだ。


「その前に、冷え〇タ貼っとくか」


「う、うん。お願いします」


 目を閉じる早坂の額に冷え〇タを貼り付ける。


「ん、んっ。……はぁ、き、気持ちいい」


 その反応、なんだかこっちがイケないことをしてるみたいな気持ちになるからやめていただきたい……。


 色々何かがマズいと察した俺はすぐに離れた。


「あと他にやってほしいことあれば、思いついたときすぐ言えよ」


 再び布団にもぐりこんだ早坂にそう言い、キッチンへ向かおうとしたそのとき。


「ちょ、ちょっと待って、透くん」


 引き留められ、早坂の方を見てみると、早坂は乞うように潤んだ瞳を俺に向けた。


「今思いついたんだけど……体、汗でビチョビチョだから拭いて欲しい、な?」


 早坂と目が合う。


 上目づかいで熱っぽい吐息を漏らす早坂に、俺はどうしていいのか分からずに硬直した。


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