第十七話 ただの体育だよね?
あれから二週間ほどが過ぎた。
あの説教を機に心を入れ替えたようで、俺たちの距離感は近すぎず遠すぎず。程よい距離感を保っている。
それに同棲生活にも割と慣れてきて、広瀬は学校に馴染んできたようだった。
「それにしても、広瀬さんの人気はすごいね」
「そうだな」
「やっぱり、彼氏としては不満かな?」
「彼氏じゃねぇ―し」
「ふぅ~ん、そうかい。でも、早坂さんも相変わらずの人気だよね?」
「そうだな。あと、彼氏じゃねぇ―からな」
「先回りするなよ~」
伊織と体育館の端っこで体育座りをして、そんなたわいもない話をしていた。
現在体育の授業中。
隣のコートでは女子がバスケの試合をやっていて、男子は残念な生き物と言うべきか、自分たちの試合を投げ捨てて女子の方の試合に熱狂していた。
そんな男どもの視線を特に集める、俺のよく知っている美少女二人。
「こっちにパスよ!」
「はいっ、広瀬さん!」
パスを受け取った広瀬が、身軽な身のこなしで相手陣地を切り裂いていき、あっという間にボールがリングにしゅぱっ、と気持ちのいい音を立てて収まった。
赤い長い髪が凛と揺れる。
おまけに額には汗が滲んでいて、妙に色っぽい。
「おぉ~すげぇ広瀬さん」
「ってか可愛いな……」
「なんかエロい……」
男子の視線が釘付けである。
すると伊織が、俺の方を見てニヤリと笑ってきた。
「……嫉妬してる?」
「してねーよ」
「ははっ。そうか~」
なんて楽しそうに笑いやがる。
ほんとに、嫉妬なんてしてないのに。
今度は早坂チームにボールが渡った。
早坂が味方が運んできたボールをスリーポイントラインで受けると、ゴールめがけてボールを放り出す。
それは見事な放物線を描き、リングをすり抜けた。
「「「おぉ~!!!」」」
歓声が上がる。
まぁただ、男は別の意味でも歓声を上げていて……。
「な、なんだあのデカメロンは……」
「バスケって、こんなにエッチなスポーツだっけか?」
「すごい……もはや日本代表だ……!」
ほんと、男子ってしょうもない。
だが、最近自分もしょうもない奴らの一味であることを思い知らされたので、他人事にはできない。
「……嫉妬してないからな」
「ははっ、まだ何も言ってないよ」
どうせ言うつもりだっただろ。
しかしこれ以上言うと面倒なことになるし、実際言うだけでも面倒なので胸に止めて起き、妙に沸き立っている試合に視線を戻した。
「やるわね、友梨……」
「そっちこそ、美乃梨……」
……これって、ただスポーツを純粋に楽しんでるだけだよな?
少し心配になりながらも、相変わらず勝負を繰り広げているなぁと、他人事のように思った。
「…………だから、夫でもないからな?」
「先回りして俺のセリフを奪うのやめようか?」
……それは無理。
最近書くスピードが上がって嬉しい僕です。
……現場からは以上です。




