第十五話 風呂場の珍事
風呂場に突然入ってきた美少女二人。
バスタオル越しでもわかる大きな胸の存在感が、脳にダイレクトに刺激を与えてきた。
ほのかに頬を紅潮させた早坂。視線は定まらず、見るからに恥ずかしそうだ。
一方で、綺麗な赤い髪を持っている広瀬は、なんだかワクワクしている様子で……すごく楽しそう。
俺は……言うまでもなく、半端なく動揺していた。
「な、何してんだ⁈」
「お湯が冷めちゃうともったいないかなぁ~って」
「そんなすぐに冷めねぇよ!」
「……透くん、少し疲れてる感じしたし、お背中でも流そうかなって」
「余計なお世話だ」
むしろこの状況は心をすり減らすだろう。
「……ってか、そんなことより俺今、全裸なんだが?」
「「⁈」」
そう言うと、二人の視線が下腹部へと……」
「あ…………」
「お、おぉ……」
必死に手で隠しているのだが……まぁ、隠せないものもあるわけで。
「ご、ごめん透くん!!!」
あわあわした様子で風呂場を出て行く早坂。
なんて無計画なのだろう。
しかし、もう一人の美少女はほんのり頬を赤くして、
「ま、まぁ私は小さい頃に見ているし、大丈夫よ!」
「俺が大丈夫じゃねぇよ!」
「……成長したわね」
「うるさい!」
こいつは痴女なのか?
だが、明らかに動揺していることは確かで。
「と、とりあえずこれを渡すわ!」
バスタオルを投げられて、俺はそれを腰に巻いた。
「バスタオルをくれるくらいだったら、出てってくれない?」
「イヤよ! だって今日は、三人でお風呂に入るって、決めていたもの!」
「は、はぁ」
「友梨! もう大丈夫だから来ていいわよ」
「何が大丈夫なんだ」
年頃の男女がバスタオル一枚で密室にいる状況のどこが。
早坂は風呂場の扉から顔を少し覗かせ、
「ほんと?」
「大丈夫。透の透は隠したから」
「女の子がそういうこと言うな」
早坂が「じゃ、じゃあ」と耳まで真っ赤にした状態で入ってきた。
そしてついに、三人が密室で視線を交わす。
「……はぁ。もう俺、出る」
しかし、出口の前で両手を広げる広瀬。その後ろには早坂が立っていて、難攻不落の壁完成。
強引に突破をすれば、色々と見てはいけないものが見えてしまうだろうし、触ってはいけないあれこれを触ってしまうだろう。
まさに八方ふさがりの状況に、俺は仕方なく浴槽に浸かった。
冷静を装っているが、内心心臓バクバクである。
「……何が目的だ?」
広瀬が胸を張って、堂々と言う。
「これから一緒に暮らしていくわけだし、裸の付き合いになっておこうと思って」
「色々とマズいだろそれは」
「……ダメ?」
「普通に考えてダメだろ。なんなら、裸の付き合いになったら目を合わせるのすら恥ずかしくなる」
「つまり……私のことを意識しちゃうってことね?」
「……は?」
「ならなおさらいいわね、ふふっ」
妖艶な笑みを浮かべて、そして遂に――バスタオルを取り払った。
俺の視界に映るのは、それはそれは形のいいアレで。
アニメみたいに湯気で何も見えないなんてことはなく、くっきりとすべてが見えてしまった。
「な、何してんだ⁈」
「別に私は見られてもいいのよ、透になら♡」
「俺の身にもなれ!」
顔を隠す。
しかし、全裸の美少女が目の前にいると思うと、それだけでヤバかった。
「……わ、私も」
か細い声で早坂がそう呟く。
しゅるしゅる、とバスタオルの擦れる音が聞こえる。
つまり――早坂が脱いだ。
「っ……‼」
さらに頭が熱くなる。
「……もう、ダメだ……」
異性に興味もないはずの俺は、男子高校生の本能に逆らえるはずもなく。
ついにはのぼせ、ガクリとうな垂れた。
「透⁈」「透くん⁈」
……マジで俺のこと考えてくれ。
次回、透、本気の説教……!




