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ショウケースで臓器は思う  作者: 小柴 圭一
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初めての疑念と信頼

僕の思考は放たれた言葉によって停止してしまった。


様々な疑問と疑念が頭を駆け巡った。


なぜバレてしまったのだろうか。とりあえず惚けてみるか。


「何を言っているのか、分からないんだけど...。」


すると彼女は微笑し、

「なるほど、そうくる。別に隠さなくたっていのよ?」


隠すに決まっている。もし記憶が残っていることが施設の内通者にでもバレたら記憶が削除されてしまう。


それだけは嫌だ。


「安心して。私も施設の出身だし記憶もその時のまま受け継いでるから。」


中森の事が、分からなくなった。


なぜなら僕の記憶の有無を確かめるだけならわざわざそんな事を話す必要がないからだ。



彼女は信じていいのだろうか。


生まれて初めて恐怖を感じた。

素性が全くわからないただのクラスメートかもしれないやつを、信じていいのだろうか。


「なぜ僕に接触をはかってきた。僕が施設の出だという根拠が乏しすぎるだろ」

聞かずにはいられなかった。


「接触をはかったのは仲間が欲しかったら。根拠はさっきも言った通り今までのあなたの挙動、すべてよ。」


彼女は少し離れた椅子に座りながら話を続けた。


「今の悟くんは知らないだろうけど前の彼は酷く臆病で傲慢だった。 みんな少しは不思議に思ったはずよ。まあまさか頭だけ交換なんて発想、小学生にはおもいつかないだろうけど。」


やはり不自然だったか。完璧に同じにするのはなかなか難しいものなのだな。


それに、と中森は付け足した。

「なんの迷いもなく人を助けるために窓から飛び出すなんて人間することじゃないのよ。悟くんは少し人間ぽさを勉強した方がいいと思うわ。」


確かにそれもそうだ。


「中森はいつからこうなってる。」


僕は視線を変えずに問いかけた。


「一年前くらいかな。この子の体は病に犯された。 そこであの施設に依頼があった。全身に転移してしまってどうにもならないからストックしてあるクローンと交換してくれって。悪性の癌だったそうよ。」


僕とは少し状況が違う、ということか。


僕は気になったことを口に出してみた。


「じゃあ移植手術は受けてないの?」


「まだその時点では、ね。」

と答えた。


「ただ私の場合遺伝子に問題があったみたい。そのせいで何度も癌になったわ。その度に体を交換し続けた。脳を除いた他の全パーツをね。滑稽よね。生まれた時からそうなるように組み込まれてるんだもの。しかもそれをわかった上で繰り返すなんて。」


「え....。」

僕は思わず言葉が漏れた。


「じゃあ中森は何回手術を受けたの?」


「24回よ。」

中森はさらりと答えた。


「だから悟くんとほぼ同じ状況ってわけよ。」


全く違う。

僕は1回しか手術を受けていない。その時点で決定的な差だ。


「それで中森の目的はなんなの?」


「ほかのクローンの抹消と施設の破壊よ。その為にはあなたのような人が必要なのよ。同じ施設出身で私と同じ知識を持つ人が。」


救出と抹消か。


そこだけ正反対だが、施設の破壊という目的は同じだ。


これからの為にも手は組んでおいた方がいいだろう。

中森は席から立ち上がり、

「協力してくれる?」 と聞いた。


僕は頷いた。

「じゃあ決まりね。」


これからしようとしていることとは裏腹に晴れやか笑顔でそう言った。


彼女は教室の鍵を開けながら、

「それとこれからはお互い下の名前で呼び捨てね。」と言った。


「なんのために?」


「決まってるじゃない。これから一緒に行動をすることが多くなるのに君付けじゃ怪しいでしょ?」


一理ある。


僕はわかった、と鞄から教科書を取り出しながら答えた。


今日は初めての当番で緊張していたが、もはやそんな緊張はどこかへと消えてしまった。


僕は教室を出て真っ直ぐと職員室へ日誌を取りに向かった。














読んでいただきありがとうございました!

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