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ショウケースで臓器は思う  作者: 小柴 圭一
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初めての会話

当然、僕に名前などない。ましてや「悟」などという言葉は聞いたことがないがおそらくこの体の持ち主の名前なのだろうと瞬時に理解した。

僕は静かに口を開いた

「すいませんが気分がよくありません。しばらく一人にしてくませんか?」

すると初老の男性は心配そうにこちらを見て

「大丈夫か?手術してからまだ数時間しか経ってないから、おそらくその影響だろう。もうしばらく寝てるといい。」と言った。

しばらくしてその男性は部屋から出ていった

口調はさっきので合ってたらしいが何が何だか分からない。

僕はてっきり記憶を書き換えて移植するものだと思っていたがどうやらそうではないらしい。

おそらく先程の男性はこの体の持ち主の父親で僕を息子だと思って話しているに違いない。

もし僕が息子ではないと知られたら僕の「父親」は真っ先に記憶を除去し、この息子の記憶に書き換えるよう要求するだろう。

だがそれだけは避けたい。なぜなら僕はこのまま記憶を引き継いだまま第2の人生を生きたいからだ。

その為にはできるだけ多くの情報が必要だと僕は考えた。

辺りを見渡すとかなり広い部屋だとわかった。

そして壁にかかっている一枚の写真を見た時僕は人生で初めて驚きという感情を知った。

その写真に映るこの体の持ち主は前の僕の顔とまったく同じだったのだ。

これから推察するに始めから買い手は決まっていて子供の成長と共に僕を成長させ、使う時がきたら臓器を入れ替えるつもりだったのだろう。

もしほかの体でやれば拒否反応で臓器自体が使い物にならなくなってしまう可能性あるがクローンならそんな心配もないのだろう。

よく出来ていると僕は思った。

ところで僕は今何歳なのだろうか。学校には通っているのだろうか。名字は?ここはどこ?

様々疑問が僕の中で交錯した。

きっとこれらの疑問解消するまでにはかなりの時間がかかるだろう。だがそんなことは後々どうにでもなるが一番の問題は僕は人に「人」として扱って貰ったことがない事にある。これには知識でも情報でもなく経験が必要になってくる。

知識は前の「世界」にいた時大体は手に入れたし、情報も時間をかければ手に入るだろう。しかしこればっかりどう足掻いても様々な所に穴ができてしまう。

どうしたものかと考えていると突然扉が開き、見覚えのある顔が入ってきた。

前の「世界」にいた職員の一人だ。

「君はこの状況を理解出来ているか?」とその職員が僕に聞いた。

「いいえ」と僕は答えた。

そう答えた方がより情報が集まるだろうと考えたからだ。

「なら説明しよう」

職員はゆっくりとベッドの脇にある椅子に腰をかけた。



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