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ショウケースで臓器は思う  作者: 小柴 圭一
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初めての名前

僕らは人間じゃない。人間として扱われていないのだ。

なぜなら僕らはクローンであり、病気を患った人々の血となりに肉となり臓器となるためだけに作り出された商品だからだ。

もちろんこんな事は他の子供たちは知らない。僕だけが唯一「脳」が商品だからこのような考えに至ることができる。

僕は商品として売りに出せるようにするためだけに教育を受け、ちゃんとした食事食べている。

ただほかの子供は作り出されたあとガラスの瓶の中に値札と共に閉じ込められる。そこから出ることはなく、そこで一生を終えるのだ。彼らとってそこが「世界」であり、全てなのだ。

彼らには担当部位がありそれ以外は作られない。そのため言葉を理解することさえ出来ない肉人形になってしまうのだ

僕にはまだ買い手がつかないから生きながらえている。

買い手が僕の人生にピリオドを落とすのだ。

ただその事について僕はなんとも思わない。

僕は喜怒哀楽の概念は知っているがその本質を理解している訳ではないからである。

いつかは怒ったり泣いたり笑ったりしてみたいと思う時もたまにあるがそんなことは多分僕の雀の涙にも満たない「生涯」を終えるまでにはないだろう。

そんなことを考えていると僕の担当部位の買い手が現れたと職員の会話から理解出来た。

僕は今この瞬間が僕の人生の終幕を意味することを知ったのだ。

そうこうしている内に職員が注射らしきもの持って入ってきた。

僕はこの小さな小部屋という「世界」からようやく

「死」という鍵で解き放たれるかと思うと少し鼓動が早くなった。これが喜びという感情なのかもしれない。

職員はゆっくりと僕の腕に針を刺した。

僕は目を閉じた。





「悟」

誰かの声が聞こえる。ゆっくりと目を開けるとそこには初老の男性が涙を浮かべながらこちらを見ていた。


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