ここから始まる
レリア帝国は、現在世界一の国力と経済力を持つ国である。
観光地としても有名なのだが、人知れず、ひっそりと佇む店がそこにあった。
『イア・ルイン』
その店は、一軒家のように見えて実は「依頼屋」という立派な店である。
従業員はたった四名。男女それぞれ二人ずつ。
内観はどうだ。どこかオシャレなカフェのような、木の香りがふわりと漂う木造建築だ。
二階建てであり、一階が、オフィスルーム、二階がプライベートルームとなっている。
路地裏に建っているので、一日・・・いや一ヶ月の依頼件数はたったの二件である。
果たして店として、成り立っているのか、いささか不安ではあるが、今日、珍しくお客様が一人来ていた。
「ここか...」
見た目19歳程度の一般女性よりも少し大きめの少女がそこにやってきた。
この状態を人々が見れば「よくそんな店見つけれたね」という反応をするだろう。
なにせ、この店には業務的意欲が全くないのである。
「お客さん禁止」
とでも言いたそうな佇まいであった。
しかし、入るしか他にない。他に申し込んでも無駄だからだ。
少女は、なぜか深呼吸をし、その店に入った。
チャリン、という鈴の音と共に、少女は扉を開けてその中へ入っていった。
意外なことに、中はとても綺麗である。
しかし、人が見当たらない。
「すいませーん」
と呼んでも誰も来ない。物音すら聞こえない。
辺りを見回してみると、テーブルの上に、置き手紙のような物が置いてあった。
少女はその紙を手に取った。
その内容は、それはそれは酷いものだった。
"一週間、イア・ルインはお休みです。社員で旅行です。まぁ人なんて来ないと思うだろうけど一応ここに記しておきます。"
オーナー
「えぇぇ.......」
だったらどうして外に貼らなかった。それにこの皮肉った内容。本当にここでいいのだろうか?
少女は、目的をしばし失った気がした。
少し腹がたった少女は、こう一文を加えた。
"あなたは馬鹿ですね"