表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔法とねこ

作者: 愁しゅう

「キミの願いごとを叶えてあげるよ」


 ある夜、なぜか突然部屋に現れた、真っ黒なフードをかぶったひとがそう言った。


「ひとつだけ、叶えてあげる」


 なんでも?そう僕は訊き返した。


「ああ、なんでもひとつだけ」


 それなら…


「猫になりたい」


 僕はそう答えた。


 猫になりたい。僕の好きなあのひとが大好きな猫に。


 そうしたら、きっと僕を好きになってもらえる。ぎゅっ、て抱きしめてくれる。


「キミの願い、叶えよう」


 魔法使いさん(?)が、大きな水晶がついた杖をえいっとひと振りすると、キラキラと瞬く星が僕に降り注いだ。


 眩しくて目を閉じて、また目を開いたら、魔法使いさんはいなくなっていた。


 あれ?


「にゃぁあん?」


 声を出すと、猫の鳴き声になっていた。


 姿見に映った僕は、蒼い瞳をした真っ白な猫になっていたんだ。


 願いが叶った!これで、あのひとに逢いにいける!


 僕は開いた窓の隙間から、外の世界に飛び出した。




 猫のからだって、すごく身軽なんだ。


 僕は鉄棒で逆上がりもできないし、跳び箱だって飛べない。


 でもいまはぴょんっと塀に登って、やあって屋根に登れる。


 いまのぼくなら、体育で5を取れるかもしれない。


「にゃん♪なぁあん♪」


 鼻歌まじりに塀や屋根を伝って、あのひとのもとへ向かう。


 どきどき、わくわく。


 電気のついた部屋の窓を覗き込むと、そのひとは机に向かっていた。


 遅くまで勉強してるんだあ。頭いいもんね。


 勉強の邪魔、したくないけど…


「にゃあん」


 僕に気づいて。僕を見て。


 僕が僕である限り叶わない想いも、この姿ならきっと叶うから。


 カリカリと窓を引っ掻く。


「あれ?」


 やった!こっち見たよ!


 僕の姿を見ると、彼は顔を綻ばせて近寄ってくると、窓を開けた。


「にゃぁあんっ」


 僕に気づいてくれて、ありがとう。


「どしたの、おまえ」


 いくらなんでも図々しく部屋の中に入れない僕を、彼は抱き上げて部屋に入れてくれた。


 あっ、やめて。顎を擽られるとゴロゴロって喉が鳴っちゃうよ。


 ん…でも、気持ちいい…。


「美人さんだなあ。首輪してないけど、どっかの飼い猫か?」


「なぁう」


 違うよ。僕はあなたにこうしてもらうためにきたんだもん。


「はは、返事してるみたいだ。俺の言葉、わかるのか」


「にゃん」


 うん。


 僕がそう返事すると、ますます彼は笑った。僕の大好きな笑顔で。


 僕の姿は、どうやら彼にとても気に入られたらしい。


 ありがとう、魔法使いさん。


「可愛くて美人な猫さん。帰る家がないなら、今夜は俺と一緒に寝ませんか?」


「なぁあん?」


 いいの?首を傾げてみたりして。


 いきなりそんな…恥ずかしいけど、いいのかな?


 小さな心臓がドキドキで破裂しそうだよ。


「いいよ」


 彼にも僕の言葉がわかるみたいだ。


 クスクスと笑いながら、彼は僕を抱っこしたまま、布団に入った。


「おやすみ。いい夢を」


「にゃう」


 うん。あなたも。


 あたたかなぬくもりに、もったいないなと思ったけど、あっという間に眠ってしまった。




 ふわふわと、まだ夢の中にいるような気分で瞼をあげた。


 すぐ近くには、大好きな彼の顔があって、幸せだけどなんだかくすぐったい。


「おはよう、起きた?」


 僕の顔を覗き込んでいた彼は、僕が目を開けると微笑んでちゅっ、と額にキスをくれた。


「おは…よ…。も、起きてたの?」


 からだを摺り寄せると、彼は僕を逞しい腕で抱きこんだ。


 密着する体温が気持ちよくて、またとろとろと眠気を誘う。


「ああ、起きて…きみの寝顔を見てた」


「…ばか」


 恥ずかしいこと、言わないで。


 朝なんだよ?朝、なんだから…。


「なんか、いい夢見てたみたいだな?嬉しそうな顔してた」


 僕の気持も知らないで、彼はちゅっちゅっって髪とか顔とかに、悪戯なキスを仕掛けてくる。


「見てた…よ。僕が…猫になって…」


「猫になって?」


「…おしえない」


 僕がどれだけあなたを好きか、なんて。いまさらだよ。


 猫になってでも、あなたの顔を見たくて、抱きしめてほしくて…ずっと恋い焦がれて。


 片想いの時間が長かったから、きっとあんな夢を見てしまったんだ。


「俺にはおまえが十分猫に見えるけどな。…気まぐれで、可愛くて」


「そう、かなあ?」


「ああ。真っ白で、きっと目なんか蒼くて…美人なんだろうなあ」


 びっくりした。


 僕が本当に猫だったら、彼の好みぴったりだったんだ。


 …でも、ちょっとフクザツ。


「…猫なら、よかった?」


 ぷうっと頬を膨らませると、彼はまさか、と笑って僕の背中を撫でる。


 少しゾクゾクする触りかたに、思わず小さく声が出てしまった。


「猫なら、こんなふうに愛せないだろ」


「…ばか、ばか…」


 高鳴る鼓動を隠すように、からだを縮めて彼の胸に顔を埋めた。


「もう少し、ベッドにいようか?」


「…うん」


 そうして、僕の意識もからだも、彼の手でとろけていく。


 両想いなら、やっぱり猫よりも…ひとがいいかな?


 贅沢言ってごめんなさい、魔法使いさん。


 でも、僕はいまとても幸せです。

ベタで甘い話大好物です!(…アホ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 私には合わない作品でしたが、文章力などには感心しました。これからも頑張って下さい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ