↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/176

決死の作戦


 夢を見ていた。


 前の世界の夢だろうか。

 乃愛と二人で病院へ向かう夢。

 何科かは分からない。


 二人で?

 何かあったのだろうか。何科だけに。


 患者がすわるあの椅子には乃愛が座り、俺も隣に椅子を用意される。

 どうやら一緒に話を聞くようだ。


 乃愛は何やら深刻な顔をしている。


 先生は手に何かのファイルを持ってやって来た。

 そして何かを話し始めるが、聞こえない。





 そこで夢は途切れた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 目を覚ました。

 どこか見晴らしのいい場所だ。


 えっと、何があったんだっけ?


 あ。確かガルバトロンとか言う奴が現れて、乃愛とロザリアが……。


 とにかく状況を把握しよう。


 まぁ、目の前に広がる光景を見れば一目瞭然なのだけれども。


 魔物が、俺の方から(・・・・・)向こうのエルグランド王国軍と思われる人達の方へと襲い掛かっている。


 最前線には、父上の姿がある。

 一国の王が最前線に出るのは、よっぽど重大な問題が起こった時だ。

 それこそ、国が滅亡するような危機。


 父上は剣の腕も立つようだし、国民想いなことで有名らしいが、そうでない普通の王なら、一族全員で尻尾を巻いて逃げているだろう。


 俺はすぐに助けに向かおうとしたが、手錠を嵌められていた事に気付く。

 それに加えて、猿轡さるぐつわと、首に鎖を取り付けられていて、後ろの柱に繋がれているようだ。


 隣をみれば、乃愛やロザリア達が俺と同じような状況になったまま気絶している。



 この判断材料からして、俺は死を悟った。


 だが、不思議と怖くない。

 それは俺がもう死んでもいいと思ったからだ。


 こんな事になって、どう足掻けば元の生活に戻れるんだ?

 誰か教えて欲しいもんだ。



 ……死んだらどうなるんだろう。


 別の何かに生まれ変わるんだろうか。

 それとも、また転生するのだろうか。


 転生したなら、前の世界とこの世界。

 どちらに行くのだろう。

 あるいはまた別の新たな世界なのか。


 何でもいいが、今度こそは乃愛と結ばれる世界がいいな。

 乃愛と結婚したい。

 子どもも……二人は欲しいな。


 乃愛とずっと一緒に居られるのなら身分なんてどうでもいいし、多少貧乏でも構わない。

 ただ、王族はもう懲り懲りだ。



 そんな事を考えながら、目の前の戦いをぼーっと見つめる。

 魔物も人間もバタバタと死んでいくが、なんの感情も湧いてこない。

 アクションゲームを見ているかのようだ。


 ……ん?

 魔物達がいきなり動きを辞めたな。


 お、乃愛達も目を覚ましたか。

 丁度いい。


 死ぬ前に何か面白い事が起きそうだ。


 『クフフフ。よくぞここまで生き残ってやがりますねぇ、国王陛下。お前のしぶとさは、さながら不死鳥(フェニックス)のようだぁね』


 なんだ?この気持ち悪い声と喋り方は。

 あの道化師みたいな奴か?

 まんまピエロだな。

 ホラー映画にでも出てきそうな。


 『しかぁーし。お前は不死身ではなぁい。我々魔王軍幹部が三人がかりで相手をすれば、流石に無事では済むまいよ』


 お前も魔王軍の幹部ってやつか。


 あ、ガルバトロン発見。

 他にも何人かおかしな格好や異様なオーラを醸し出している化け物がいるな。

 全部で何人くらいいるんだろうか。


 まぁ、どうでも良いが。


 『キヒヒヒヒ。そこぉーで!このボクちんが、面白いショーを見せてやろう!ほら、拍手だ拍手。ヒャハハーッ!』


 気持ちわりぃ。

 しかもボクちんとか、無いわー。


 隣を見れば、乃愛達が必死にもがいている。

 けど、無理だよ?


 俺が本気で魔法も使って壊そうとしてもびくともしないんだもん。

 魔法は通用しなさそうだし、お前等の筋力じゃ無理だって。


 全力で抵抗して、それでも無理だと悟ったから、俺は諦めてんの。分かる?


 そう言えば黒竜丸がいないな。

 まぁ、構わんけど。

 母親と好きに生きたら良いさ。


 『そぉーれで、そのショーってぇゆーのがぁ、ここにいるガキ共を使うって奴なんだなぁー。ヒヒヒヒヒッ』


 へぇ。

 俺達を使うって?


 どうでも構わんけど、乃愛とロザリアだけはむごい殺しはナシだぜ?


 それ以外なら、まぁ、内容によるな。

 死に方くらい選ばせてくれよ。


 『まずぅ! お前の息子はさらし首の刑だぁーっ! 残った民衆共に、逆らったらどうなるのか、教えてやるゼッ!』


 お前はずっとそのテンションでないと死ぬのか?

 うるさ過ぎて頭に響くんだが。


 って言うか、俺は生首ですか。

 道の真ん中にでも立てられるのかな?


 王族の滅亡って、大体そんなもんか。

 じゃあ別に良いのかな?

 いっか。


 ただ、俺が王子って分かるやつが果たしてどれ位生き残っているのか。

 それによって反乱の起きる頻度とかも違ってくるぞ?とかアドバイスしてみる。


 『そしてぇっ! 残りの奴らはみぃーんなボクちんのペットのエサにしてやんよぉー』


 ペットねぇ。

 どうせ気持ち悪い頭が三つある化け物なんだろ?ケルベロスとか。


 喰われるのは気に食わんけど、変な男に売られてまわされるよりはマシか。


 『あとぉー、お前の妻と赤ん坊はボクちんが貰ってやんよぉ!妹の方は育ったらお前の妻と一緒に適当な店で売ってやろうかなぁー。弟はボクちんの奴隷として一生ボロ雑巾のように扱ってやるよ。感謝しなぁー。ヒャハハハハッ!!』


 んんはぁ?

 今、なんつった?


 俺や乃愛達を殺すだけじゃ飽きたらねぇってか?


 何の罪もない俺の弟妹にまで手を出すのか?


 俺はレオとリリィの成長を楽しみにしてたんだぜ?

 二人とも成長が早くて、最近はハイハイをし始めたし、昨日の朝なんか「にぃに」って笑いながら呼んでくれたんだぞ?


 健やかに育ってくれれば良いと思っていたのに、それすら叶わずに、殺すより惨い事をサラッと口にしやがったな。



 ……流石の俺も限界だ。

 テメェは俺にとっての禁句を口にした。

 絶対に許さない。


 考えてみたら、乃愛とロザリアを殺されるのも腹立つ。もちろんリックも。


 ロザリアとだって約束したし。

 と言うかルナだって絶対コイツのせいだ。



 あーもうムカつく。





 おい黒竜丸。

 お前さては近くにいるな?

 テレパシーみたいな魔法使ってるから、聞こえるはずだぜ?


 (ご主人。殺る?)


 おう。殺るよ。殺る気満々だよ。

 だからこの手錠とかを何とかしろ。


 (任された)


 黒竜丸が後ろからゆっくりと近づいてくるのを索敵で感知している。

 見張りとかは何故か付けられていないので、そのままスパッと切ってもらった。

 が、すぐには動かない。



 黒竜丸。そのまま乃愛達のも切れ。


 (了解)


 そして乃愛達のが終わるのを見計らって、みんなにテレパシーで伝える。


 (みんな、聞こえるか?)


 (さ、さっくん?)


 (ちょっと黙ってて。今から作戦会議)


 そして俺は一人一人に内容を伝える。


 (えっ?それって……)


 (サニー様はどうなさるのですか?)


 (知らないよ。もしかしたら死ぬかも)


 (約束しましたのに……)


 (こんな状態になって安全なんて確保出来るわけ無いだろ?)


 (……)


 (良いから言う通りにしろ!王子の命令だ)


 そして俺の合図とともに行動に移す。

 まず、勝算は無い。


 だから逃げる。

 みんなを連れて。

 例えバラバラになっても。


 まずリックはサヨナラだ。

 適当に強制ワープでどこか遠くに飛ばす。


 かなりアバウトだけど、ワープのモデルとなっているあのピンクのドアも存外適当なので、大丈夫だろう。


 そして残りは姿くらましだ。

 例により、幻魔法で透明化する。

 モデルはマントでも何でもいいや。


 ただ、光を反射しないようにするようなイメージだから、虹彩や水晶体も透明になるので、恐らくなんにも見えなくなるだろう。


 だから安全そうな所でじっとしててもらう。


 で、俺は黒竜丸片手に突撃よ。

 目的は母上と弟妹の救出。

 そして父上と逃げる。

 これで完璧。


 あのピエロも俺達が急に暴れたり消えたりして、無茶苦茶暴れている。


 今の隙に行きたいが、目的地は他の幹部がズラリと並んでいる先なのだ。


 特にガルバトロン。

 あれはヤバい。と言うか無理。

 捕まったら最後。


 なので、ステルスと高速化だけに特化する。

 完全透明とは行かなくても、目で追えないくらいにはなるだろう。たぶん。



 そして幹部の間をすり抜け、ガルバトロンを横切った所で、ガルバトロンだけがこちらに気付いた。


 アイツヤバい。マジでヤバいって。


 ほぼ透明、身体能力三倍、風魔法での高速化と無風移動、風圧緩和に重力無効、障害物すり抜けとエンジンを模したブーストを身に纏って飛んでも追いかけてくる。

 追いつきはしないが、引き離せない。


 尋常じゃない恐怖だぜ?

 止まるに止まれないから、軌道を読まれないように蛇行運転しながら目的地周辺を延々と飛び続けるしかない。

 果てしない追いかけっこ。


 俺のタダでさえ少ない魔力はみるみる減っていく。体力の消耗も激しい。

 魔法の重ねがけは負担が大き過ぎるのだ。


 もはや詰んでる。

 どうしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。