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転生なんてしたくなかった


  (あれ?ここはどこだ?)


 恐る恐る目を開けると、そこには見たことのない天井が広がっていた。

 病院か?とも思ったが、それはすぐに否定される。


 俺が混乱していると、隣から明らかに地毛だと分かるとてもキレイな金髪をした美少女、いや、女性が覗き込んできた。

 俺は余計に混乱した。


  (え?誰?日本人、じゃないよな。)



 すると突然、聞いたことのない言語でその女性が笑顔で話し掛けてきた。


 「ーー・・・ーーー・・ー!」


 (んーと、なんだ? 日本語でも英語でも中国語でもないな。だとすると俺の知らない言語か?)



 さらにその隣からメイドの様な服装をした黒髪の女性が嬉しそうに、これまたよく分からない言語で女性に話し掛け、そして俺を持ち上げてきた。


 (はぁっ?! 60kgはある俺を軽々と持ち上げやがったぞ、この人!)


 俺はますます混乱した。

 一旦冷静になろうと深呼吸し、落ち着くと同時に重要なことに気付く。


  (え、えーと。たしか俺は……そうだ、乃愛だ! 俺は乃愛を庇おうとして……)



 乃愛の安否を確認しようと声をだすも、「あー、うーぁー」としか発音できず、事故の悲惨さを物語っているように感じた。


 慌てて周囲を見渡したが、先程の女性と、メイドの様な服装をした女性、そして見るからに身分の高い人物だとわかる男性が居るだけで乃愛の姿は見当たらない。

 部屋は洋風の広い寝室のような場所で、高そうな家具や絵画などがあるだけだ。


 と、同時に不安と絶望感が襲ってきた。



 そして俺は泣いた。

 年甲斐も無く大きな声を出して泣いた。


 何故そんなに泣きたくなったのか、よくは分からなかった。

 乃愛を助けられなかったと悟ったからなのか、はたまた見知らぬ場所で見知らぬ人たちに囲まれて怯えていたのか。


 それは分からない。

 ただ身体中から泣き喚きたくなるような衝動に駆られた。



 それからは無我夢中で泣き疲れるまで泣いた。






 あれから(体感で)一ヶ月ほど経った。


 結論から言おう。


 どうやら俺は異世界に転生してしまったらしい。

 それを把握するのに時間がかかってしまった。

 というのも、俺が赤ん坊になってしまったため、思うように動けなかったからだ。


 不自由な身体、自分のものとは思えないほど小さい手足。

 思うように動かず、座っていないと思われる首。

 相変わらず言葉が理解できず、身体もまともに動かせなかったため、情報のを入手する手段が少なかったのだ。


 ちなみに泣き喚いていたのも、赤ん坊特有のアレだ。年相応というやつだ。

 ダカラアレハ、オレノセイジャネェ。


 最初はいきなりこの世界の母親と思われる女性の母乳を吸うことになり驚いたが、本能からか身体が勝手に吸い出した。

不思議と興奮もしなかった。


 俺に出来たことは、誰かに抱えられて移動するか、「あー、うー」と言うだけだった。


 そして、異世界だと気付いた決め手は、俺が王族の第一王子だという事実を知ったときだった。

 どうりで父親らしき人は派手な服装に王冠を被っているなとは思ったんだ。

 メイドや執事の様な人も大勢いたし、どの部屋もとてつもなく広く、いろんな貴族らしき人たちが俺や両親を見ると、揃って頭を下げていた。


 父親はたいてい、玉座に座っていた。

 親であろう人たちと会ったのも最初の数回だけで、あとはメイドさんや乳母の人と過ごすことが殆どだった。


 ここだけを知れば俺も凄いと思っただろう。

 しかし肝心の乃愛は見つからなかった。


 恐らく乃愛はあの時、俺と一緒に……



 クソッ!

 乃愛のいない世界なんて俺にはやっぱりなんの意味もない。


 こんなことなら、転生なんてしたくなかった!


 こんなことなら、あの時死んだままになっていれば。

 なんで俺だけが、こんな訳の分からない異世界なんかに……




 そんな後悔をしながら更に数日が過ぎた。



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