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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
故郷と幼馴染と・・・
93/362

特殊部隊に帰還後…

二日前。特殊部隊に帰った後、美月と宮木はまっすぐ保護棟へと向かった。


「美月、宮木君おかえり。久し振りの実家はどうだった?」

「…先生、それよりも聞きたいことがあります」

「ん?どうした?」

「菊池朱莉の名前に心当たりはありますか?」


「菊池朱莉?誰だそれは?」

「とぼけないでよ先生。やっぱりまだ僕達に何か隠してたんだね?いい加減白状しろよ?!」

宮木は柊先生の態度にイラついて、彼の両腕を強く掴んでしまう。

「いたたたっ。宮木君腕を強く掴まないでくれっ!いたいっいたい!!?「宮木さんやめてください。

 先生の仕事が出来なくなっちゃいます。骨折して入院でもされたらお金かかりますよ、宮木さん払っ

 てくれるんですか!?」と美月に言われて我に返った。具体的に言うとお金の話が耳に入って力が

ぐっと緩んだのだ。

「…ごめんなさい」

「先生、大丈夫ですか?」とすぐに柊先生に声をかける。

「あぁ…大丈夫だ。助かったよ美月」

美月が止めなかったら絶対に柊先生は骨折で両腕が使い物にならなくなっていたことだろう。そうなれ

ばしばらくの間は仕事が出来なくなっていたので、柊先生は美月にお礼を言う。


宮木が落ち着いてから美月は話を再開させた。

「菊池朱莉という女の子が私と同じ小学校に四年生まで通っていました。でも彼女と私は同じクラスに

 なったこともなく面識はありません。ですが、卒業アルバムにあった写真と峰滝が持っていた写真の

 中に彼女が写っていた。その彼女が今の私とそっくりだったんです」


「なるほど。それで宮木君は俺を疑ったというわけだね?今の美月の姿、つまり元の持ち主がその菊池

 朱莉じゃないかと。確かに疑うよね~それなら」


「どうなんです、先生?やっぱり菊池朱莉なんですか?」と宮木が柊先生に尋ねる。すると…。

「そうだな…恐らくそれで間違いないだろう」

「ちょっと、なんでそんなにあやふやなわけ?はっきりしろよ!?」

柊先生の答えに宮木は怒鳴る。美月が知らないのだから、このことを知っているのは柊先生ただ一人。

そんな彼が曖昧な返事を出すことがひっかかっていた。

「宮木君は四之宮君に話を聞いたかもしれないけど、美月の手術を行ったXは俺の知り合いで能力者

 だった。俺は彼の条件をのんで美月の身体をXに治してもらった」

「確かに先輩にはそう聞きました。自殺した娘の遺体を使って、美月の身体と入れ替えたって話です

 よね?現代医学で治すことが出来なかった美月の身体を、その能力を使うことによって今の美月に

 した」

「その通りだ。じゃあここで宮木君に質問するけど、なんで俺は名前も言わずにXと言ったんだろう

 ね?」

「はぁ?ふざけてるの?そりゃあ手術するっていうぐらいなんだし、名前言うとすぐばれるからでし

 ょ?そんな単純な質問、瀬楽とか黒澤でも分かっちゃうことだよ!?」


宮木さん、なんかそれひどい…。と美月は言わないものの宮木を見てそう思う。


「そうだね。でもね…言えない理由があったんだよ」

「言えない理由?それって何なの?」

「それはね。俺はそのXの名前を知らないんだよ」

「「はぁあああ!???」」

ここで新たな真実が発覚した。手術を頼んだ本人がXの名前を知らないと言い出したことに二人は驚き

声を上げる。二人の反応を見て柊先生は苦笑いをして次のように話し始める。

「やっぱりそういう反応するよね?だから関係者以外にこの話したくなかったんだよな~」

「関係者以外言えないってそういうことだったのかよ!?名前言えないんじゃなくてただ名前知らなか

 っただけ?それってかなり危険じゃん?」


宮木が柊先生に激怒する。美月は言葉も出なかった。


「ひょっとして手術っていうのも…「いや、そいつはちゃんとした医師免許を取得してるって言って

 たから問題はないよ」

「いやそれ、本人が言ってるだけで実際にその医師免許っていうの見せてもらったことあるの?ない

 としたらそれまずいんじゃない?麻酔使ったって言ってたよね?」

「まぁまぁ。例えそいつがヤブ医者だったとしても、今こうして美月が生きてるんだから大丈夫だよ」

柊先生の言っていることはさておき、Xが医師免許を取得していないということはかなりまずいもので

詐欺師と変わらないだろう。そんな彼に宮木はまたしても怒鳴る。


「全然大丈夫じゃないよ!?僕が美月の保護者だったらそいつぼっこぼこにしてるよ?っていうかそい

 つの連絡先とか知らないの?知り合いだとか言ってたよね?知ってるなら今すぐ連絡して…「それは

 無理。美月の手術が成功してしばらくしてから連絡しようとしたけど、ケータイを解約したみたいで

 連絡が取れないんだ。ちなみに登録名は、「宇宙人」だ」


「「宇宙人!??」」

「いや、ふざけてるわけじゃないぞ?名前聞いても教えてくんないから仕方なく…」

柊先生はまた宮木に怒鳴られるのを恐れて二人にそう説明する。名前が分からないから仕方ないとはい

え、どうして宇宙人なのだろう?別にXでも良かったと思うのに。


本当にその人、宇宙人じゃないよね?

美月と宮木は本気でXを宇宙人ではないかと考え始めた。宇宙人が人間に化けて柊先生とあったのかも

しれない。それなら名前を言えなかった理由も説明がつく。だがこれはあくまでも二人の勝手な想像で

あり本当にXが宇宙人なのかは分からない。


「とにかく俺はXの深いことは知らないんだ。あと美月の身体に使われたのがその菊池朱莉というのも

 断言できない。もしかしたらその菊池朱莉とよく似た女子かもしれないぞ?世の中には似たような人

 間が三人いるっていうしな」

「…確かにそうですよね。やっぱり阿相さんの調査結果を待つしかないか」

「役に立てなくてすまないな」

「本当ですよ。言い出した本人が名前知らないとかどうかしてますよ?そんなんだったら、いづれ詐欺

 にでもあっちゃいますよ?」

「あぁ~あったな~そういえば」

「あるのかよ…」


宮木はますます心配になってきた。こんな人が美月の保護者で本当に大丈夫なのかと。

あらゆる意味で…。


仕事の途中だったので美月達は柊先生の部屋から退出し、エレベーターへと向かっていく。

「美月大丈夫?」

「大丈夫ですよ。別に過去のことでいちいち文句を付けても、戻れないのは分かってますから」

「そりゃそうだけどさ…」

「あの人がいなければ今の私はいません。天涯孤独のかわいそうな女の子として世間からあわ

 みの目で見られて一生を終えていたと思います。だからあの時のことを責め立てようとは思っていま

 せん。生きているだけでも十分ですし」


エレベーターの前に辿り着き、ボタンを押してしばらくすると扉が開かれ、宮木が6階のボタンを押し

扉を閉める。


「美月、本当にそれで良いの?生きてさえいれば何だっていいの?」

「…別にそういうわけじゃないですけど」


6階についてエレベーターを下りて美月の部屋の前に来ると宮木は美月の腕を掴んで中に入るのを

阻止する。


「何するんですか?」

「話はまだ終わってないから、部屋に入らないで」

「…はい」

「怒ってるわけじゃないけど、美月はあの人のことをもっと疑うべきだと思う。いくら命の恩人でも

 世間上ではやっぱり他人と同じなんだよ?そりゃあ、あの人がいなかったら美月と会うこともなかっ

 たからそれについては感謝してる。でも、さっきの話聞いたらもう分けわかんないことばっかりで

 怪しすぎるでしょ?黙ってたけど本当は美月も先生に呆れてたんじゃないの?腹が立ったりしなかっ

 たの?まさかとは思うけど保護者だからって特別扱いしてるんじゃないよね?」

「そんなことしてません」

「だったら文句の一つ二つぐらい言えばよかったじゃない?」

「それは…そうですけど」


なんで?なんでこんなことを…この人に言われなくちゃいけないんだろう?怒ってるわけじゃないって

言ってたけど、これってどう見ても説教にしか聞こえない。確かに柊先生は保護者とではあるが、血縁

関係はない赤の他人。だが美月はまだ未成年なので、一人ではまだ生きていけない。やはり誰かの助け

がなければやっていけないのが現実なのだ。宮木もそのことは分かっているだろうが、美月は宮木の言

葉をあまり快く聞き入れてはおらず不愉快に思っていた。


「僕は美月のことを心配して言ってるんだよ?今は大丈夫でもあの人がいつ美月に何するか分からない

 し、僕だっていつでも美月の側にいるわけじゃないんだから」

「そんなこと分かってますよ。私には危機回避能力がありますから問題はありません。自分の身は自分

 で守ります。だからそんな心配はいらなっ「バカっ!なんで分からないんだよ?!」


「ばっ、バカ?」

「そうだよ、バカだよ。大バカだよ!なんで一人で解決しようって話になるわけ?一人でどうこう出来

 る問題じゃないでしょ?ちゃんと脳みそ入ってるの?一度病院に行って検査でもしてもらったら!?」


あまりにも彼女が先生を信用しきっていて、疑うどころか怒りもしない。そんな彼女に質問した結果、

出てきたのは曖昧な返事と能力があるから一人で対処するということだけで、宮木は頭にきてとうとう

彼女に怒鳴ってしまう。怒鳴り声は廊下全体に響き渡った後、沈黙の空気が流れ美月は宮木に向かって

口を開いた。


「…自分だって他人のくせに、偉そうに説教しないでよ!?脳みそ入ってるかとか病院に行って検査し

 てもらえだなんてふざけんなっ!脳がなかったらこんなに必死で思い悩んだりすることなんてないん

 だよ?貴方みたいにほいほい文句が出るならとっくに文句の一つや二つ出てるつーの!それに一人で

 解決するしかないでしょ?いつでも一緒にいるわけじゃないのならそうするしかないじゃない。自分

 の身は自分で守るしかない、誰かが自分を守ってくれるわけじゃないのなら…それしか方法がないじ

 ゃない!それ以外にどうしろって言うのよ!?…もう…わけ、分かんない」

美月は右手で頭を抱え込み、ふらついてその場に座り込んでしまった。


「美月っ!?」と宮木は美月に駆け寄る。

「すみません…急に立ちくらみが…」

「大丈夫?医務室に行く?」

「よくあることなので…大丈夫です」と美月は頭を抱えたまま立ち上がるが、身体がふらふらしていて

 、とてもではないが大丈夫ではなさそうだった。


「全然大丈夫じゃないじゃん。一緒に行ってあげるから医務室行こう?倒れたら大変でしょ?」

「…はい」



宮木の誘導で美月は医務室を訪ね、医師に診察してもらう。その間宮木は外で待っていると、大庭兄弟

が声をかけてきた。


「隼士」

「ん?あぁ…大庭達おおばたちか」

「どうしたんだ?医務室の前で」

「美月が立ちくらみ起こしちゃって、それで今診てもらってるから外で待ってるの」

「そうだったのか」

「宮木先輩、菊馬さんとずいぶん仲が良いんですね?一緒に休みを過ごすぐらいに」

「いやそんなことないけど。たまたま休みが一緒になっただけで…」

「育巳、それぐらいにしておけ」

「兄上は気にならないのですか?今じゃもう彼女は有名人なんですよ?」

入隊して半年足らずにして正隊員に昇格し、黒澤蓮・小森夜月の特殊危険超能力者と宝正奏でチームを

結成。同時に昇格した霜月チームを引っ張る影の支配者的存在。小森と同様にファンクラブが存在する

ほど有名になりつつあり、彼女の名前を知らない者は誰もいない。


「気にならないと言えば嘘になるが、あまり二人のことを他人が言うのは良くないだろ?休みだという

 のに二人はどこで何をしに出かけたとか、どこまで進展しているのだとかを聞くのは…「大庭、わざ

 と言ってるでしょ!?」


「隼士、医務室の前で叫ぶな。怒られるぞ?」

「…お前のせいだろうがぁ」


それから大庭兄弟と別れた後、宮木は医師に呼ばれて中へと入って行った。特に異常はないということ

で、宮木は美月を連れて医務室を出て保護棟の6階へと向かってゆっくりと歩いていく。


「宮木さん、もうここで大丈夫です」

「いいよ、部屋まで送るから」

「…はい」


そして保護棟の美月の部屋へと到着した。

「いろいろご迷惑をかけてすみませんでした。じゃあ私はこれで…」


ぎゅっ。

「何ですか?」

「…」

「宮木さん?離してください」

「…」

「ちょっと…離してください。宮木さん」

「…」

「あーもう離せっ!!!」


むぎゅうううううううーーーー。

「ぎゃああああああああ、いたいたいっ!?いたいって!???誰か助けてーー!????」

「うるさいな…少し黙ってよ?」と宮木は美月の顔に自分の顔を近づけようとする。

「えっ…ちょっ、待って、やめてっ…いっ、いやぁああああああああーーー!??」と大声を上げて

すぐのことだった。


バシッ!!と何かが高速回転で宮木の頬に当たり、その勢いで宮木は美月から離れて倒れてしまう。

「いったぁぁ!???」

「えっ?なっ…なに?」


いったい何が起きたのか二人には分からなかった。宮木は左頬にくっきり靴の跡が残っていて痛そうに

擦っている。その証拠にスニーカーが彼の近くに落ちていて、いったいそれが誰の物なのかそれはすぐ

に分かった。足跡が聞えてきて美月は振り返ると、そこには小森がいた。


「…小森?」

美月は彼の下の名前を呼ばず、苗字で呼んだ。ずっと苗字呼びだったのが未だに直っていないので、よく

小森に指摘されているのだが、今はそれどころではなかったのであえて美月に何もいうことはなかった。

ペンとノートを持っていない彼は、すぐに美月の首元をガブっと噛んだ。美月は痛みをじっと耐えてい

ると小森は美月の頭を優しく撫でる。「痛い」とも言っていなかったのに、どうして気づいたのだろう?

と美月が疑問に思っていると小森は血を吸うのを止めて首元からゆっくりと離れた。


「美月、もう大丈夫だよ」

「小森?」

「ちょっと、小森いきなり何してくれるのさっ!?ほっぺすごく痛いんだけどっ!」

「宮木さんが美月に変なことするからですよ。美月が怖がるようなことしないでください」

「怖がるようなことってなに?」

「美月、悪いけどしばらくの間部屋の中に入ってて」

「えっ?なんで?」

「いいから。終わったら呼ぶから、それまでは絶対に外に出ちゃだめだからね?あとテレビモニター

 で外の様子を見るのもなしだよ。もし破ったら…後でお仕置きするからね」

「…分かりました。大人しくします」


美月は小森に従って部屋の中へと入ってすぐにロックを掛けた。そして玄関で靴を脱ごうとした瞬間、

「ぎゃああああああああああああああああああ!????????」と宮木の悲鳴が扉越しからでも

大きく聞こえてくる。小森はいったい宮木に何をしているのだろう?助けたいけど、外に出たらお仕置

きされるということで、美月は助けたくても助けられない。いったいどうしたらいいのかと悩んでいる

と悲鳴は止み、小森がインターホンを押して「もういいよ」と声を掛ける。それを聞いてすぐ扉を開け

ると目の前に宮木が倒れていた。


「宮木さんっ!??」

美月は慌てて宮木に駆け寄り、身体を起こして呼びかけた。だが応答がない。

まさかと思い彼の首元を見ると、そこには噛まれた跡がくっきりと残っていた。


「小森っ、宮木さんに何したの!?」

「血を取って気絶させただけだよ」

「気絶させたって…いくらなんでもやりすぎでしょ!?死んじゃったらどうするの?」

「大丈夫だよ。それに美月を怖い目に遭わせたんだから、これぐらいやらないと…」

「バカっ!何てこと言ってるのよ!?今すぐ血を元に戻しなさい!隊長命令よ!」

「いや、それはちょっと…「できないの?」

「…ごめん」

「とにかく宮木さんを部屋に運ぶの手伝って。横になっていればそのうち目を覚ますだろうし」

「…分かった」


宮木の血を吸ったことにより、小森は一人で彼の身体を持ち上げ美月の部屋へと運び込んだ。

本当なら医務室に連れて行くべきだが、倒れた原因が吸血鬼能力で血を吸われたことによる失神だなん

て言えるはずがない。なので美月のベッドで寝かせて意識が回復するのを待つしかなかった。


「ところで、どうしてあそこにいたの?たまたま通りかかったとか?」

「それは…なんとなく、かな?」

「何それ?全然説明になってないけど」

それは前にもあった。瀬楽の速度計スピードメーターで美月と走っていた時にも彼はそんなことを

言っていたのだ。


「部屋にいたんだけど、なんか急に外に出たくなって…そしたら美月の声がしたから慌てて六階まで

 降りて行ったら…あんなことに」

「それって予知?」

「分からない」

それがもし本当ならすごいことだ。柊先生や星野先生がそれを知ったら大喜びというか、科学者魂?に

火が付いて吸血鬼能力についてこの間よりも更に徹底的に調べるかもしれない。そして彼の身体を解剖

しようと言う科学者も現れたら彼はいったいどうなるのだろうか…。


そして約一時間後、宮木が目を覚ました。

「…ん?」


目が覚めた宮木はゆっくり起き上がると、美月の部屋だということに気が付き気絶する前のことを

思い出した。


「そっか。僕…小森に血を」

「目が覚めましたか?」

「うわっ!?びっくりしたぁ…驚かさないでよ」

「すみません。気分はどうですか?」と小森が宮木に尋ねてくる。

「…あぁ、大丈夫だよ。それより美月は?」

「あそこで寝てますよ。横になったらすぐに寝ちゃいました」


「そう」

「本当にすみませんでした。つい頭にきちゃって…その」

「いいよ。僕も少しどうかしてたし、何であんなことしたのか…正直覚えてないんだけど、小森に止め

 てもらって助かったよ。ありがとね」

「…はい。じゃあ、僕はこれで失礼します」と小森は宮木に伝えた後、部屋から出て行った。


小森が出て行った後、宮木がベッドから起き上がり美月の元へと近づいて彼女を起こす。

「美月、起きて…美月」

「…んんっ。まだ眠いよ」

「お願い起きて。起きて美月」

「…ん?宮木さん?…宮木さん!?」と美月はそうだ!?と思いだし、宮木をじっと見た。


「良かった。目が覚めたんですね?」

「うん。その…ごめんね。僕」

「あっ、いえ。そういえば小森は?」と小森を探そうと立ち上がるが彼の姿が見当たらず焦る美月。

「僕に謝って、すぐ出て行ったよ」

宮木の言葉を聞いて美月は「…そうですか。それなら良いんですけど」とほっとする。だけど、なんで

帰ってしまったのかよく分からなかった。別にここにいても問題なかったというのに。


「あっ、何か食べます?お腹すきましたよね?」

「いいよ。大丈夫だから」

「でも…」


血を抜かれたから何か食べた方が良いんじゃないかと思っていた美月。しかし宮木はいらないと言うの

で美月は言葉に詰まってしまう。すると宮木はそんな彼女の様子を見て…。


「もう少ししたらホットケーキでいいから作ってくれる?」

「…分かりました」


正直、またホットケーキかいっ!?と突っ込みそうになるも雰囲気が悪くなってしまうのを恐れて

美月はその言葉を心の奥底にしまい込む。


「正直小森がいなかったら、僕美月に嫌な思いさせてたよね。本当にごめん…」

「…はい」

「怖かった?」

「…ちょっとだけ」

「本当に?」

「…はい」


だがどう見ても美月は怖かったらしい。身体がぶるぶる震えている。だから、いつものように抱きし

めることはせず宮木は美月の頭を優しく撫でた。小森にもされたが、宮木がやるとなぜか美月は変な

気分になる。嫌と言うよりもやもやとした感じで…。


「美月ごめんね。もうあんなことしないから怖がらなくていいよ」

「だっ、大丈夫ですよ。もう怖くないですから!」

「そう?じゃあ…」と宮木が頭を撫でていた右手を美月の腕に持ってこようとすると、美月はそれを

見てぱっと避けてしまう。


「気を遣わなくていいよ」

「…ごめんなさい」


とりあえず仲直りは出来たのだが、美月は宮木のした行動により男性恐怖症とは言えないかもしれない

がそれに近いものにかかってしまったのであった。




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