表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/362

謎の能力者Xによる手術

 その頃。柊先生が四之宮と話をしている間、三人は台所へにいた。

 廊下で待っていたのだが、宮木が「おなかすいた」と言うので美月が台所へと

 二人を連れて行き、ホットケーキを作っているのだ。


 「ごめんね。こいつこれでも大食いで」

 「だっておなかすいちゃうんだもん~」

 「もうすぐ出来るので、待っててくださいね」

 

 美月は宮木と妹尾の分のホットケーキを焼いてお皿に入れる。

 「はちみつとバターのせか、イチゴジャムどっちがいいですか?」

 「はちみつとバター」と二人同時に揃った。

 

 注文通りにはちみつとバターをかけてテーブルの上に置く。

 「俺の分までごめんね」

 「いえ。ついでですから」

 「妹尾、いらないなら僕が食べるけど「いや、食うから!」

 

 そしてぱくぱくとホットケーキを食べる二人。

 本当なら美月の三時のおやつ用にとっておいたものだが、おなかすいてると

 言うし、ほっておくのもよくないと思ったため彼らのためにホットケーキを

 焼いたのであった。


 「あ~美味しかった。ごちそうさまでした」

 「美味しかったよ」

 「それは良かったです」


 美月は、食べ終えた二人の皿をもらって後片付けを始める。

 すると妹尾が「手伝うよ」と立ち上がって美月の所へと近づく。


 「いえ、大丈夫です。慣れてますから」

 「いや、これぐらいはさせてくれ。宮木、お前も手伝え」

 「えぇ~おなかいっぱいで動きたくない」

 

 結局、妹尾と美月で皿やフライパンなどを洗って片づけ、拭き終わると

 元の棚へと戻していった。

 

 「ありがとうございます。助かりました」

 「いえいえ。いつも、一人で料理してるのか?」

 「はい。先生は発明ばっかりなので、私が家事掃除洗濯を毎日やってます」

 「うわぁ~なにそれ、大変じゃん。あの人、やらないの?」と椅子にずっと

 座りっぱなしだった宮木が妹尾の背にしがみつき、美月に向かって聞く。

 

 「先生はそういうの全然ダメなので、やらせると大変なことになります」

  大変なことってどんなことだろう?と妹尾と宮木は思う。

 けれど、聞かない方が良いとも考えたので二人はそのことに対して追求は

 しなかった。


 「っていうかさ、妹尾。やっぱり僕達も聞く権利あるよね?」

 「いきなりなんだよ、おい」

 「四之宮さんだけに教えてもらって、妹尾は悔しくないの?僕達完全にのけ

 者じゃない。そんなの僕、嫌なんだけど」

 「んなこと言ったってお前、四之宮さんに出ろって言われた以上どうしようも

 ないだろうが」

 「もういい。僕が直接こいつに聞く」と宮木が美月に近づく。

 

 「本人だったら、どうやって今の身体になったかってことぐらい分かるよね?

 教えてよ。あんたの重症だった身体をいったいどうやって元のように戻したのか。その手術をした人間はいったい何者なのか…正直に答えろ」

 「おい、宮木。いい加減に」

 

 「そこまでだ、宮木」

 「っ!?先輩」

 「そいつに聞いても無駄だ。彼女は手術を受ける前日に麻酔をかけられて

 気が付いた時には手術は終わった後だったそうだ」

 「はっ!?なんですか、それっ?ますます怪しいじゃないですか?!」

 「そんなに知りたかったら、俺が話してやる。ただし、もしばらしたら…

 今後一切、お前の食事代は自腹だ」

 

 「それだけはやめてください、先輩!?」

 「四之宮さん…」

 「分かったな?本部に戻るぞ」

 「は~い」

 

 そして、四之宮達は柊家を後にした。


 「先生。あの人に話したんですか?」

 「ああいう性格の人間は苦手でね。あいつのこと以外は全部話したよ」

 「…そうですか」

 

 四之宮達はその頃、本部の敷地内にある寮にいた。

 特殊部隊は訓練生も正隊員も寮に入ることが義務付けられている。

 ちなみに訓練生は二人か三人で一部屋。正隊員になれば一人部屋になれるの

 だ。宮木と妹尾は一か月前まで訓練生だったが、四之宮とチームを組むこと

 になって正隊員に昇格したので、一人部屋を許されている。しかし、宮木が

 だらしがないということで同じチームの妹尾と一緒の部屋を使っている。

 一方、四之宮はそういうこともないので堂々と一人部屋を使っている。

 

 宮木と妹尾の部屋へと入り、さっそく本題かと思いきや…

 「宮木、お前はバカか?」と最初に入ったのは説教だった。

 それから約30分、宮木は四之宮の説教を受け続け正座させられ、足がしび

 れて崩そうとすると「崩すな」と言われてしまい、目に涙が出るのをじっと

 耐えていた。隣で見ている妹尾は、助けてやりたいが助けるとこっちまで

 説教されるということから黙って見ているしかなかったのでありました。


 「まったく。いくら気になるからと言って、直接本人に聞くな」

 「はい…反省してます」

 「四之宮さん。本当に話してもよろしいんですか?柊さんは四之宮さんに

 教えたのに」

 「本人にも了解を得ているから問題はない。問題なのは、お前達が他人にうっ

 かりばらさないかどうかだ。特に宮木」

 「言いませんよ。自腹とか言われたら僕、生きていけません」

 

 宮木の金銭はだいたい食べ物で消えている。

 生活に関することは給料から毎月引かれるので心配はないが、災害があった

 時、手元にお金がなかったらこいつはいったいどうするのだろう?と妹尾は

 本気で心配していた。


 「本当にお前は食べ物のことしか頭にないのか…」

 「四ノ宮さん、その話は後にしましょう。それより、彼女についてそろそろ」

 「あぁ、そうだな。危うく忘れるところだった」

 

 そして、いよいよ本題へ入る。

 「話した通り、菊馬は手術前に麻酔を打たれていて本人が目を覚ます頃には

 手術は終わった後だった。その手術をほどこした人間の名を仮にXとして

 彼は俺に話してくれた」


 (回想)

 「Xに俺は、美月の身体を治してほしいと頼んだ。最初は断られたが、俺が

 何度もしつこく頼むもんだから観念して俺の依頼を受けた。ただし、ある条件

 をつけて」

 

 「条件?それはいったいどういう…」

 「Xには当時美月と同い年の娘がいたんだが、あの事件が起こった一週間前

 …自殺したんだ」

 「自殺?」

 「Xは真実を受け入れられず、一人娘の遺体を家にずっと置いていた。それか

 らあの事件が起こって…」

 「っ!?まさか…」

 四之宮はある想像が浮かんだ。でもそれは単なる想像であって真相がどうで

 あるかなど分かりはしなかった。

 

 「Xは…美月の身体と自分の娘の遺体を入れ替えさせてほしいと頼んだんだ。

 だが、肝心の脳や心臓等の臓器はどうするんだってことに俺は気づいた。

 でもその質問をするのは間違いだった。俺は忘れていたんだよ…Xの能力なら

 他人の身体を入れ替えられることなんて簡単なことだってね」

 

 「そんなことが可能なのか?」

 「だから俺はこの話をしたくなかったんだ。美月のためにも…。この話を

 君が信じるか信じないかは君に任せるし、宮木君や妹尾君に話すのも自由だ。

 だが…他の奴らにばらしたりしたら、俺は絶対に君らを許さないぞ?」

 

 (回想 終わり)


 「話は以上だ。正直俺も信じられない話だが、作り話にしてはできすぎて

 いるし、柊瑞生がそんな嘘をついても何も得しない。これは本当に起きた

 ことと言って間違いないだろう」

 

 「自分の娘の遺体を使うとか…その人どんだけ娘に依存しちゃってるわけ?

 マジで引くんですけど」

 「いくら自殺したからって、俺も父親だったらそこまではしないですね」

 

 四之宮達は、とんでもないことに首を突っ込んでしまったと深く反省した。

 しかし、一度踏み込んでしまった以上は知らないふりをすることはできない。

 

 柊瑞生と菊馬美月の存在がある限りは…。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ