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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
名探偵阿相樹とアシスタントの岸本優樹
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正隊員昇格からしばらくしてまたあの探偵がやって来た!?

遊園地から戻った後、特殊部隊本部の会議室にて四之宮から話があると美月達七人と柊先生が呼ばれた。


「「「「「「正隊員に昇格!?」」」」」」

「そうだ。お前達全員を訓練生から正隊員に昇格させる」

「おぉ~正隊員に昇格。やったな、隊長」

「あぁ…そうだな」

また怒られるのではないかとひやひやしていたのは霜月だけではなかったが、今回七人(正確には阿相

も含まれる)が爆弾を解除し、犯人を逮捕することが出来た。この功績により、四之宮から杉村に七人

を正隊員昇格を申し立てたのだ。

「霜月・瀬楽・綾小路は既にチームを組んでいる。そこで菊馬。お前が隊長となって黒澤・宝正・小森と

 チームを組め」

「えっ!?わっ、私が隊長ですか?」

「いいんじゃないか?バランスも取れてると思うし」

柊先生が言っているバランスとは恐らく人数でのバランスと能力によるものだと考えられる。

つまり黒澤と小森が戦闘向きで、美月と宝正は援護という形で役割分担しやすいのだ。

「先生…他人事だと思って…」

「大丈夫よ。菊馬さんは私がサポートするわ」

「宝正さん…」

「俺も美月が隊長で良い。なっ?小森」

『僕は美月の力になれるなら、何でもするよ』

小森は遊園地の事件が片付いてからは血を吸うことがなかったので、声が出なくなりいつも通りに

ノートに書いて見せる。それを見た美月はこれだけ推されたら後には引けないと思い、覚悟を決めた。


「…分かった。迷惑をたくさんかけるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」と三人に

頭を下げる美月。だがこうしないと気が済まなかった。本来隊長に相応しいと美月が思っていたのは

宝正で、自分には務まらないと考えていた。だが、彼女達は美月を隊長に推したのでせめてこれだけは

言っておきたい。本当ならこんなことしたくないけれど、後々自分が後悔しないようにという気持ちを

込めたものだったのである。宝正はそんな彼女の心を読み取りつつも、優しく彼女に言葉をかける。

「えぇ。こちらこそ、よろしくお願いします。美月隊長」

「あっ…はい!」


「おめでとう、美月」

「おっめでとー!」

「おめでとう。美月ちゃん」

「あっ…ありがとう」


「お前達。正隊員に昇格して浮かれているのは分かるが、もう少し静かにしろ」

「「「「「「すっ、すみません…」」」」」」

『ごめんなさい』


「訓練生から正隊員になるも大変だが、正隊員になっても大変なことはいくらでもある。警察から連絡

 を受けた仕事を貰い受けて出動したり、雑用仕事をしたりいろいろだ。そんな中で正隊員としての地位

 を保つにはそれなりの努力が必要になってくる。能力だけに頼っていては絶対にダメだ」


四之宮がどうして七人にこう強く言っているのかと言うと、それは同期である明智のことが影響してい

る。仕事をさぼっているとか、普段だらしがないとかではない。ただ彼は他の正隊員達のように代償や

欠点が存在せず、能力をほぼ毎日のように使っている。体質ということもあるし過去のことも知ってい

たが…それでも四之宮は彼と同じような人間を生み出したくなかったという気持ちが少しばかりあった

ため美月達にきつく当たってしまったのである。テレパシーを持っているにしても、彼女達に言った

ことは本心であり、そんな深い意味が込められているところまでは読み取れないので宝正にも分からな

かった。


「あの…授業とかってどうするんですか?正隊員になれば出動もするし」

「正隊員になったからと言って特別扱いはない。緊急事態で総動員でも行われない限り、またお前達に

しか出来ない仕事が入った場合は別だ。普段はいつも通りに一般と実技の授業を受けてもらう」

「はい!俺と霜月は一般の男子寮なんだけど、やっぱり移った方が良い…ですか?」

「それはそうだが…何かあるのか?」

「いや。その…」

「瀬楽は僕と同じ部屋なんですが、保護組の黒澤と仲が良くて。正隊員の寮から保護棟までは距離が遠い

 ので…多分そのことを気にしたんだと思います」

「何だそれは。くだらん」

「すみませんでした」


四之宮の言う通り確かにくだらない話であったが、それをばらしてしまった霜月もどうかと思われる。


「まぁまぁ。仲が良いってのは良いことじゃないか?そう言わずに」

「他に質問がないなら、話は以上だ」と四之宮は扉を開けて「…話は済んだぞ。もう中に入れ」と

 誰かに声をかけてからすぐに出て行った。すると入れ替わりに入って来たのは宮木と妹尾の二人。


「美月、お疲れ様」

「宮木さん。妹尾さん。お疲れ様で…うわぁ!??」

宮木は美月を軽々と持ち上げ、まるで小さな子供に「たかいたかーい」するような形となってしまう。

「正隊員昇格おめでとう」

「ちょっと何やってるんですか!?やめてください、っていうか下ろして!」

「おいこらっ、おっさん!美月を離せ!?」

「やーだよ~」

「この野郎!!!ぎったぎったにしてやるー!!!」

宮木の取った行動が気に入らなかったようで黒澤は食って掛かる。それを見ていた霜月が慌てて黒澤を

止めに入って来た。

「黒澤やめろって!宮木先輩も菊馬を離してあげてください。綾、悪いが手伝ってくれ」

「うん、分かった。黒澤君、落ち着いて!ぎったぎったにしちゃだめだよ」

霜月に助けを求められて綾小路も黒澤を止めようと説得する。それを柊先生と瀬楽はただぼーっと遠く

から見つめているだけであった。


「青春だな~」

「ですな~」

「すみません。四之宮さんとは別の仕事を二人で任されてて…入るに入れなかったんですよ」

入ろうとすれば入ることが出来たが、どこで入ろうかと二人で悩んでいた結果あんな形となってしまっ

たというわけである。

「遅くまでご苦労さんだね。それにしても…あんなに嫌がってたのに、今ではすっかり仲良しだな」

「そうですね。宮木とは同期で一緒にいることが多かったですが、あんなふうに楽しそうな顔をして

 …なんか、我が子の成長を見ているかのように」

「妹尾君は宮木君の保護者みたいなもんなんだね」

「大変ですなぁ~」

「瀬楽君、貴方がそれを言えないと思うわよ?」

「あはははっ~」

『笑いごとじゃないよ?』


「さて、もう遅いから今日はこれにて解散としよう。明日も仕事だしな」と柊先生の合図で全員は

会議室を出て、自分達の部屋に戻って行ったのであった。



正隊員に昇格してから5日後のこと。美月達をある人物が訪ねてきた。

「やぁ、また会ったな。お前達!」

「おぉ~探偵さんだ」

「何だ。仕事かと思って武器持ってきたのに、探偵のおっさんかよ」

「そうか。この私に会えて嬉しいんだな?私もまたお前達に会えてとても嬉しいよ!」

「それで、何しに来たんですか?まさか仕事を手伝えとか?」

「いやいや、今日は仕事では来たわけではないのだ。実は、お前達に紹介したい者がいるんだが…

 おい、もう出てきていいぞ」と阿相が声を上げた瞬間、近くにあったロッカーから小さな少女が

 出てきた。そして、すぐさま阿相に向かって大声で怒鳴り声を上げたのだ。


「あぁーもう!いったいどうして僕がこんな狭くて汚いロッカーに身を隠さなければならないんだ!

 阿相、お前は僕を殺す気か?!」

「いやぁ~すまんすまん。ロッカーから出てきたら面白いかと思ったが、よく考えてみればダサかった

 な?はっはっはっはっ!!」

「笑い事で済まされると思ったら大間違いだぞ、このくそったれ!他人で試す前にまず自分があの中に

 入ってから実戦しろ。そして味わえ!!」


よく分からないけれど何やら喧嘩を始めてしまった二人に代表として霜月が恐る恐る声をかける。

「あっ、あの…」

「おぉ、すまんすまん。お前達に紹介しよう。私のアシスタントをしている岸本優樹きしもとまさき

 だ」と阿相がそう紹介すると、先程のことがまるで嘘かのように礼儀正しく美月達に挨拶をする。

「初めまして、岸本優樹です。遊園地の件については、うちの阿相がご迷惑をお掛けしました」

「いや迷惑なんて。むしろ逆に助けてもらいましたし…」と霜月が言った後、阿相も続けて彼女に

「そうだぞ、岸本。私はこいつらに迷惑などかけていない!」と堂々と言い切る。だが…。

「んなわけないだろう!「分析」で分身二人をゴミ箱に詰められて、挙句の果てには先走りすぎて

 女の子に手錠をかけたって話じゃねぇか!僕が入院している間はなつに警護させるってあれほ

 ど言ったのを忘れたのか!?」

「だってあいつ、影薄いし…なかなか出てこないから忘れてしまうんだよ」

「そうなったのいったい誰のせいだと思ってんだよ!?そもそもお前が原因でっ」

「あー!もう、分かった。その話は後だ。ここに来たのはその話のためではない」

「ちっ。…皆さん、お騒がせして大変申し訳ございませんでした」


見た目からしても年下な彼女に圧倒され、話を一旦保留(または一時休戦)にし、本題に入ろうする

阿相。気に入らなかったのか小さく舌打ちした後、岸本は美月達に深々と謝罪したのであった。

どうやら岸本と美月は似たような感じだったため、遊園地でも冷静に対応出来たものと考えられる。


「実はお前達にお願いがあって来たのだ」

「お願い?それはなんですか?」

「柊先生にも話したのだが、この岸本をお前達のチームに入れてやってはくれないだろうか」

「「「「「「…えっ?!」」」」」」

『どういうこと?』


突然のことで驚く美月達。阿相が岸本を連れて彼女達に紹介し、彼女達のチームに入れてほしいと

お願いした本当の理由はいったい何なのであろうか…。


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