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柊瑞生と菊馬美月の過去と出会い

一部修正しました。

 柊先生が彼らを家の中へと招き入れた。

 「う~ん~じゃあ、俺の部屋にでも…「ダメですよ。とてもお客さんに見せら

 れる場所じゃないですから」


 柊先生の部屋に通そうと思ったら、美月に反対されて「じゃあ、美月の部屋に

 でも」と笑いながら言うと「やっぱり先生の部屋にしましょう」と本人からの

 圧力がかかり、結局は柊先生の部屋へ彼らを通すことになった。


 「飲み物何かいりますか?コーヒーくらいは出しますけど」

 「僕、コーヒー飲めない」と宮木が言うので、「じゃあ、オレンジジュースと

 リンゴジュースは?」と美月が聞くと「オレンジで」と返答された。

 「お二人はコーヒーで良いですね?」

 「はい」

 「それでいい」と聞いて「分かりました。じゃあ、今から作りますね」と

 美月は台所へと向かった。


 

 「さて。四之宮君に先に話しちゃったけど、君達もやっぱり話した方が良い

 よね?」

 「当たり前でしょ?」

 「柊さん。俺達にも詳しく事情を説明してもらえませんか?」


 「わかった」と柊先生は宮木と妹尾に聞いたところで本題に入った。

 

 「最初に言うのは、俺と君達のお偉いさんとの関係だ。俺は彼とは幼馴染で

 あり…特殊部隊の元装備開発責任者だった」

 それを聞いた二人は驚いていた。科学者とは聞いていたけど、まさか特殊部隊

 で働いていたとは予想もしていなかったからである。


 「もし、それが本当だったら…なんでやめちゃったの?特殊部隊の装備開発

 なんて儲かる話じゃない?なのにどうして今はこんな所にひっそりと暮らして

 るの?」

 宮木は食いついた。メカに関してではなく、ただ単純に「お金」のことで。

 ようするに、そのお金でどれだけの食べ物が買えるだろうと…。


 「そうだな。俺だって続けたかったよ…あの事件が起こらなかったらな」

 「事件?」

 「それは、いったいどういう事件ですか?」と妹尾も質問してきた。

 すると柊先生はたばこを取り出そうとするも、美月がコーヒーを持って帰っ

 てきてしまい、慌てて取り出すのをやめた。


 「はい、オレンジジュース」と宮木から順番に四之宮と妹尾にコーヒーを

 置く。

 

 「先生、たばこは外で吸ってください」

 「ばれた?」

 「いつも胸ポケット入れてるからすぐわかりますよ?」

 

 どうやら見られてしまっていたらしい。

 美月は別にたばこが苦手というわけではないが、部屋にその匂いが充満する

 と咳き込むので室内で吸うのを嫌がるのだ。


 「それで、事件っていうのは?」

 「それは…「○■※デパートのテロ爆発事件」

 柊先生が言う前に、隣にいた美月が彼らに答えた。

 

 「美月…」

 柊先生は、美月を心配そうな目で見ていた。

 美月も先程とは違って暗い表情をして、胸を右手で押さえていた。

 

 「なにそれ?」

 「えっ、お前知らないのか?」

 「知らないものはしらないもん。僕テレビとか興味ないし」

 「お前、責めてニュースぐらい見ろよ」

 「妹尾。その話は後にしろ。それで、そのテロ事件の現場にお前もいたんだ

 ろ?」と四之宮は美月に聞く。

 

 「家族三人で、久しぶりのお出かけだった。なのに…デパートについてしばら

 くして、爆発に巻き込まれて…気が付いたら病院にいました」

 「美月は一命は取りとめたものの、全身に大きなダメージを受けて自分の力

 では動くことすらもできないぐらいになってしまった。そして、美月のご両親

 は…残念ながら助からなかった」

 

 「信じられなかった。自分はこうして生きてるのに、どうしてお父さん達は

 助からなかったんだろうって…そう考えるとすごく悔しかった。自殺しよう

 と思ったこともあったけど、それすらもできなかった」


 美月は思いだし、目に涙を浮かばせ…ぽつぽつと一滴一滴がゆっくりと頬か

 から零れ落ちた。

 

 「それからしばらくして、先生が私の病室を訪ねてきた」

  

 (回想)

 美月の病室に一人の男性が彼女を訪れた。

 しかし、彼女にとってその男性は初対面であったためすぐに「誰?」と

 質問する。

 

 「俺は柊瑞生。漢字は違うけど、君と同じ名前だ」

 「…」

 「ご両親をこの間のテロ事件で亡くされたそうだね?それで君は天涯孤独」

 「…それがなに?」

 「それで、俺が君を引き取ることにした」

 「勝手に決めないでよ。引き取るったって、私はこの身体で…動くことすら

 できないのよ?」

 

 美月は、怖かった。

 初対面の男性にそんなこと言われて、何されるか分からなかったから。

 恐怖に感じた美月は声に反応するナースコールで助けを求めようとしたが、

 それは柊先生のある一言を聞いて、呼ぶのをやめた。


 「君のその身体を治せるかもしれない」と。

 「…えっ?」

 今の医療では、全身を元のように戻すことは不可能だった。

 そんなことが出来るなら、今頃こんな身体で入院生活を送っているはずが

 なかった。美月は信じられなかった。


 「俺にはそれをやってのける知り合いがいる。だから君はそいつの手術を

 受けるんだ。そして、手術が成功して元のように動けるようになった時には

 …俺に協力してほしい」

 「協力って?」

 「それは…」

 (回想 終わり)

 

 「それは…○■※デパートテロ爆発事件の首謀者、柊美鶴ひいらぎみつる

 の捜索と身柄の拘束だ」

 

 「柊美鶴は二卵性双生児で俺の双子の兄だ。それが理由で、俺は犯罪者の

 弟ということで装備開発の仕事を辞めざるを得なかったってわけさ」


 本当、迷惑な兄貴だよ。と柊先生はたばこを持って窓の所まで行き、

 ライターでたばこに火をつけて一服した。


 「美月の手術が無事に成功して、こうして動けるようになるまで一年ぐらい

 かかった。そして、俺の家で家事掃除と発明の試作品テストをしながらひっそ

 りと生活しているというわけ」

 

 予想していたよりもだいぶ深い話だったために、しばらくの間

 部屋には沈黙の空気が流れた。


 

 

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