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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
治癒能力を持つ少年
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少年の捜索

「美月、機嫌直せって」

「そうだぞ、菊馬。誰だって失敗の一つや二つはする」

「瀬楽。お前が言えたことじゃないぞ。それ…」

「美月ちゃん、元気出して」


美月達は清掃活動を終えた後、訓練棟にある食堂でご飯を食べていた。

少年を取り逃がしてしまい、美月の機嫌はかなり悪かったが、ただそれだけで機嫌が悪いわけじゃない。彼は「警察」と聞いた途端、すぐに逃げようとしていたことが引っかかっていたからだ。


どうしてあの時、彼は逃げようとしたのだろう?

警察に行ったら何かまずいことでもやってしまったのか?だが、それだと美月にわざわざ首を振って行く

だろうか?すぐに逃げれば済むことなのに。


それだったら、いったい彼はどうして逃げたのだろう?


「あらあら、どうしたの?」

「あっ、宝正さん」

そこへ宝正が美月の心を読んで心配そうに声をかけてくれた。


「ごめんなさいね。ずいぶんと悩んでいたようだから、つい声をかけてしまって」

「あぁ、うん。いいよいいよ」


「誰?」

「宝正奏さん。私達、保護組のクラス委員長をしてるの」

「へぇ~そうなのか」

綾小路が瀬楽と霜月に宝正を紹介していると、宝正は美月に次のように話しかける。


「もし良ければ相談に乗るわ。何か力になれるかもしれないし」

「あぁ…うん。実は―――」


美月は宝生にすべてを話した。

治癒能力を持った少年を助けたこと。そしてなぜか彼は警察と聞くと逃げ出してしまったことを――。


「なるほど、確かに気になるわね」

「でも逃げられてしまって。名前とかもないって言ってたし」

「孤児院を調べればいいんじゃないかしら?能力者を引き取る専門の孤児院で検索すればすぐに見つかる

かと思うけど」

「えっ、そんなことできるの?!」

「えぇ。授業が終わった後、私の部屋に行けばパソコンがあるからそれで調べましょう」



そして、授業が終わった後に霜月・瀬楽・黒澤・綾小路・美月の五人は宝生の部屋へとお邪魔させてもらうことにした。


彼女の部屋は、なんというか…「お嬢様」という感じで家具や小物などどれも高級品物ばかり置かれていた。そのせいか眩しくてとてもじゃないが、じっと見ていられない。


「能力者、孤児院…」

宝正は慣れた手つきで打ち込んでいき、検索する。

すると該当する所が三件出てきた。


「…ここは、遠いわね。菊馬さん達がその少年と会った場所からして、この二件のどちらかにいる可能性

 が高いわ」

「ふむふむ。じゃあ休みの日にその二件を訪ねて見ようぜ。手分けして」

「あっ、でも…美月ちゃんと瀬楽君と黒澤君しかその人の顔知らないよね」

「「「「あっ…」」」」


綾小路に言われてすっかり忘れていた。

少年を見たのは、美月と瀬楽と黒澤の三人で霜月と綾小路は少年と会っていないのだ。


「二件ですから、どちらかに振り分けたらどうです?それなら…」

「瀬楽、お前あいつの顔覚えてるか?」

「いや。俺全然覚えてない。なんせ、横の顔しか見てないからな~」


これを聞いた宝正は「この人達はだめだわ」と心を読まずとも当てにならないと確信したのであった。

そのため唯一、少年の顔を間近で見ていた美月のみが頼みの綱となってしまう。


「それなら彼女の力を借りましょうかね」

「彼女?」

「もしかして、近藤さんのこと?」

「そうよ。呼んでくるから、皆はここで待ってて」


綾小路と宝正が言う近藤とは、保護組の近藤由美子こんどうゆみこのこと。

彼女は人の記憶を読み取ることができる「記憶複写メモリーコピー」を持っており、その能力を

使って菊馬の記憶から少年の姿の似顔絵を描いてもらおうというのが狙いだ。


宝正が近藤を呼び出し、すぐに美月の記憶を読み取り似顔絵を描いていく。

そして五分後…。


「おぉ~すごい」

「どう?これで間違いないかな?」と近藤が念のため、美月に似顔絵を見せて確認してもらう。

「…うん、大丈夫。この人だよ」


「じゃあ、次のお休みの日に皆で孤児院へ行きましょう」

「えっ?宝正さんも行くの?」

「あら、私が行ったら困ることでも?」

「いっ、いえ…そんなことは」


こうして、次の休みの日に宝正を加えて六人で孤児院へと行くことになったのであった。


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