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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
特殊部隊訓練教育学校
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審査で起爆装置を解除するなんて聞いてない!

 特殊部隊訓練教育学校とくしゅぶたいくんれんきょういくがっこう

 その名の通り特殊部隊訓練生を育成する施設で、警察学校に入るより難関、

 一般的にはエリート学校と言う形で呼ばれている。


 しかしその実態は超能力者・能力者の集まりであり、訓練生になるには

 厳しい審査を突破しなければならず、たとえ能力者であったとしても

 犯罪に一度手を染めていたりしたら、すぐその場で落とされてしまう。

 また、本人による意思で入ることを希望しており、家族から「入りなさい」と言われたからという理由では通用しない。だが特例により、虐待やなんらかの理由により一般家庭にいられなくなった能力者を匿名の通報を受け次第、本人と面談し、調査した上で学校側が「未成年超能力者・能力者保護法」に基づいて本人が成人するまでの間、保護することが可能である。


 ようするに、教育学校と保護施設の二つの看板を持っているというわけだ。

 

 そんな超能力者・能力者達が集まる学校へと、菊馬美月は今日から訓練生と

 なって新しい生活を送ることになる。


 美月が特殊部隊訓練教育学校に入る際に行ったのは、一般の学校でいう

 「入学試験」とは全く異なるものだった。


 学力があるかないかどうかなどは関係なく、問題なのは個人情報や犯罪履歴、

 組織のスパイではないかというものだ。本来なら一週間のところを柊先生が

 杉村にお願いして免除してもらった。やましいことなどはしていないが、彼女

 にはあの事件で大けがを負って、手術を行った。その手術に関してに触れられ

 ると説明するのが難しいし、美月自身にも怪しい目で疑われることを避ける

 ためだ。


 あと残っている、さけては通れないことは「超能力者・能力者であるかないか

 」の審査。複数の人間の前で自分の能力を見せて能力者であることをアピール

 する。これが美月の最大の問題だった。


 しかし、それは柊先生のある思いつきによって無事に彼女の危機回避能力を

 人前に見せることができたのである。

 

 審査当日。特殊部隊本部内にある会議室へと案内され、ノックをして中へと

 入るとそこには三人の男性の姿があった。


 その三人のうちの一人は、柊先生。

 「初めまして。菊馬美月さんですね?」とメガネをかけた白衣姿の男性が

 美月に尋ねてくる。

 「はっ、はい。本日はよろしくお願いします!」

 美月は勢いよく頭を下げた。


 「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。どうぞ、こちらにお座りください」


 美月は白衣姿の男性に言われて「はい、失礼します」と用意された椅子に腰

 かける。


 「私は星野と申します。左隣にいるのは山田先生」

 「よろしく」

 「よっ、よろしくお願いします」

 「気にしているかとは思いますが、柊先生も一応審査員として参加していま

 す」

 「美月、頑張れよ~」


 柊先生は、一応審査員らしい。

 山田先生という人は、二人とは違って厳しそうな先生という印象が強く残る。

 美月はますます緊張感が高まっていった。


 「では、これより審査を行います。それでは柊先生、お願いします」

 「はいよ~」

 柊先生が星野先生に言われて立ち上がり、美月にある物を持ってきた。

 

 「美月には、これをやってもらいまーす」と美月に渡した物は、よく刑事

 ドラマで見るような大きな機械だった。


 「えっ?」

 「制限時間は1分。コードを間違えれば爆発する仕掛けになっています」

 「ばっ、爆発!??」


 美月は思わず椅子から立ち上がり、柊先生に抗議する。

 「先生、どういうことですか?爆発するっていったい何を…」

 「俺は審査員だからな。お前の危機回避能力を証明するにはこれしかないと

 思って…俺が心を込めて作った爆弾を制限時間以内に解除しろ」

 「良いこと言っているように聞こえますけど、他にも方法がっ」


 ぽちっ。

 柊先生がポケットから取り出したボタンを押した途端、爆弾の起爆装置を

 オンにした。


 「スイッチ押したぞ~」

 「って話聞きなさいよっ!」

 「はい、このペンチでコードを切るんだ」

 

 爆弾を制限時間以内に解除…。

 美月はとりあえず起爆装置を椅子の上に置き、受け取ったペンチを使って

 慎重にコードを選び始めた。

 

 「…これかっ?」

 爆弾処理班でもない少女がこんなことをさせられるとは夢にも思っていなかっ

 ただろう。それにしても制限時間が1分だなんていくらなんでも短すぎる。

 もっと時間が欲しいと美月はコードを選択しながら思った。


 とりあえず、目に止まった赤いコードを切ることにした。

 パチン。

 

 どうやらセーフだったみたいだ。続けて、黒いコードを切ろうとした時だっ

 た。


 ドクン!!

 「…これはダメだ」と黒いコードを切らず、緑のコードを切る。

 

 切りかかった瞬間、またドクン!と心臓が痛くなる。

 「これもだめか…もう時間がない」


 ピンクのコードを見つけて、それを切ってみる。

 …パチン。


 「まだ止まらない。あとは…」

 美月は右奥にある黄色いコードを見つけた。これを切れば終わるかもしれない

 と思い、一気にこれを切れば…とその時だった。


 ドクン!!ドクン!!

 「ひぃっ!?」

 美月は黄色いコードを切る前に、心臓の音が響いてきて思わず爆弾から

 距離を取るとドカーン!!とすぐさま起爆装置がその場で爆発した。


 「そっ…そんなぁ…」

 けがはしていなかったものの、起爆装置を制限時間以内に解除できなかった。

 美月はもう終わったと思った。すると…


 「合格です」

 「えっ?」

 

 星野先生が、美月に向かって合格と言い出したのだ。

 美月は解除できなかったのに何を言ってるんだと思った。

 

 「君は爆発する直前、制限時間まであと10秒前だったにも関わらず、君は

 すぐに何かを察したかのように起爆装置から離れた。これは明らかに予知

 していなければ不可能だと判断できる」

 山田先生が美月に向けて説明をする。よく観察していなければできない

 ところまで正確に…。


 「よって、菊馬美月を超能力者と認める。以上だ」

 「菊馬さん、おめでとうございます」

 「美月、おめでとう」


 「…あっ。ありがとうございます」


 こうして、菊馬美月は超能力者と認められ無事に合格することが出来たので

 あった。

 


 

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