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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
すべてはホットケーキから始まった
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護身術とか身につけるためであって、決してお金で行くとか決めたわけじゃない


 「手伝ってもらう前に、宮木君あれから調子の方はどうだい?というより、

 まず使ってもらえてる?」


 「杉村さんの許可はもらったので、能力者に対する事件の際は度々使わせて

 もらってますよ」

 「おぉ~そうかそうか。それで能力使用時の代償となる食欲の方は?」

 「…特にこれといって変わってませんね。いつもどおりお腹はすきます」


 「あちゃあ~。じゃあ、力の制限に関しては何か問題はない?」

 「それは全然問題ありません」

 「ふむふむ。よし、わかった。ありがとね」

 

 「それで先生。手伝ってほしいことってなんですか?」

 「おぉ。今度はお前の制御装置を作ったんから、そのテストをしてもらいた

 いんだよ」


 「私の?」

 

 「そう。まぁ、難しいことは考えるな。俺の発明の手伝いだと思ってやって

 くれ」

 「…はい」

 「よし。それじゃあ、早速これを装着してくれ」


 柊先生が美月に渡したのは、ヘルメット・両肘と両膝サポーター・スニーカー

 ・手袋で全部赤色で揃えられていた。


 「先生、これはいったい…」と疑問に思いつつもその場で身に着ける美月。

 「いや~美月ってだけに青にしようかと思ってたが、赤も良いなぁと思って

 なぁ~」

 「私が聞きたいのは、そういうことじゃない」

 

 「とりあえず、外に出よう。そこでテストするから」

 

 三人は柊先生の部屋を出て、外に出た。

 天気はあまり良いとは言えず、今にも雨が降り出しそうな雰囲気だった。


 「さて、それじゃあ始めるかな」

 柊先生はそういうと、宮木の方を向いてこう言った。


 「宮木君、試しに美月に全力で攻撃してみてくれ」

 「えっ?!先生、何をっ」

 「心配すんな。俺を信じろっ!」と柊先生は親指を突き立ててグッドサイン

 を出し決め顔で美月に言い張るが、彼女はますます心配でならなかった。


 いくら危機回避能力があるからといっても、それが100パーセント回避

 できるとは限らないからだ。もしそれが、可能ならば生まれてから一度も

 怪我や病気、災害などの危機に陥ることなどなかったであろう。

 

 また怪我でもしたら、通院費・そして家事掃除洗濯などの仕事が出来なくなる

 と美月はまたしても頭が頭痛が走り出した。


 「先生。菊馬が頭抱えてますけど、大丈夫ですかね?」

 「気にしなくていい。いつものことだ」

 

 宮木は柊先生のことを初めて「先生」と呼んだ。

 今まで一度もそんな呼び方はしていなかったが、美月や制御装置のことも

 あって少しばかり距離を縮めたようである。

 

 「それじゃあ、俺が合図したら全力で頼むぞ?」

 「はい」

 「3…2…1…始めっ!!」

 

 柊先生の合図で、宮木は美月の方へ向かって走りだし右手拳を彼女の顔

 めがけて攻撃する。しかし、すぐさま彼女の危機回避能力が発動して

 美月は宮木の攻撃を避けようとした。


 しかし、身体とは逆に右手が勝手に動いて彼の拳を右手で受け止める。


 「っ!?」

 「そんなっ。どうして?」


 美月は避けようとした。

 しかし、右手は彼の拳を見事に受け止めている。

 宮木はというと、自分の攻撃を受け止めた美月に驚いて一瞬硬直状態。

 全力でと言われて出したものの、まさか受け止められるとは思っても見なか

 った。

 

 「お前ら、驚いてる場合じゃねぇぞ。続けろ!」

 柊先生が二人に叫ぶ。


 それを聞いた二人はとりあえず距離を取り、宮木の攻撃を美月が能力で

 回避する。回避しようとする度に、美月の手と足が勝手に防御に入る。

 

 避けようとしているのに、手足が勝手に動いて出来る限り攻撃をする。

 これはいったいどういうことなのだろうか?



 「そこまで!」

 

 「「はぁ…はぁ…はぁ…」」

 「お疲れさん。いやぁ~良かったよ」

 柊先生は満足そうにげらげらと大笑いをする。


 「先生、それより…」と美月は柊先生に聞きたいことが山ほどあった。

 「まぁ、待て待て。それよりもう昼だから飯にしよう。話はそれからだ」


 時刻はもうすぐ12時。

 美月達は家に戻り、水分補給を取った。


 「またサンドイッチ?」

 「…そうですけど?」

 「というか、お昼はサンドイッチって決まってるの?気にしてなかったけど」

 「手軽に食べられる物がいいと言うので作ってるだけですよ」

 

 作業しながら手軽に食べられる物はサンドイッチの他にもいろいろある。

 例えば、おにぎり・ホットドッグ・ハンバーガー等。

 

 フライドポテトのように塩が付いているものは、作業に戻る時に塩が中に

 入る。油がつくということから却下されている。だが、それをいうなら

 おにぎりはご飯粒やノリのべたべたがつくし、ホットドッグやハンバーガー

 もケチャップやマスタードがあるのでこぼれる可能性がある。


 だが、そんなこと言っていたら食べられる物も食べられないので

 美月は簡単に家でも作れるサンドイッチをお昼限定で作っているのだ。


 「そっか。でも、僕すぐお腹すいちゃうから物足りないな」

 「ホットケーキ作りますから、それまで我慢してください」

 「分かった。我慢する」


 試しにホットケーキを作ると言ったら、あっさりと承諾されてしまった。

 この人の頭の中はホットケーキしかないのだろうか?と美月は本気で心配

 になってきた。


 サンドイッチを作って、三人でぺろりと食べ終えると

 柊先生は、さっそくテストでのことを二人に話し始めた。

 

 「さっき美月に装着させていたのは、危機回避能力を利用した「制御」

 「防御」と兼ね備えた物だ。宮木君に渡したのは、力加減の制御だったが、

 美月の場合は回避を利用した意識に関する「制御」だ」


 本来の危機回避能力と言われるものは、とっさに起きた危機や出来事を

 直感や勘により回避したり行動したりするもの。

 それを利用して、回避しようとする動作を防御しようとする動作へと制御

 することで、防御・そして隙を見て攻撃することを可能にしたのである。


 「宮木君は怪力の能力があったから、美月の危機回避能力と制御装置が

 しっかりとリンクしているかを確認するのには持って来いの存在だったん

 だよ」

 「なるほどね」

 

 「でも、避けようとしているのに無意識に防御や攻撃を仕掛けるって

 それだと操り人形みたいですよ?」

 美月は自分の意思でないのに攻撃したりすることが気に入らず、柊先生に

 不満をもらした。


 「避けるだけだといづれは限界が来る。それに力がないなら防御に徹底した

 方が生存っていうのはおかしいが、一つの手だと俺は思ったんだがな~」

 美月は柊先生の言葉を聞いて黙り込んでしまった。

 言い返せる言葉が思いつかなかったからだ。


 するとそれを聞いていた宮木は美月に話しかける。

 「あんたのその能力は本当にすごいと思う。でも、先生の言う通り避けてば

 かりじゃだめだと思う。僕みたいな力のある能力者、無能力者でも大人の男

 を相手にすれば、怪我だけではすまない。護身術とか空手・合気道とかを

 身につけているなら話は別だけど、今のままだとあんたの能力はただ避ける

 だけのための存在にしかならないよ」

 

 「そんなこと言われても…」

 美月は宮木に責められているとしか思えず、ますます顔がしょぼんとなる。

 

 「あんたのやる気次第で、その能力は誰かを守るための武器になれるよ」

 「っ!?」


 誰かを守るため。という言葉に美月は反応した。

 そして過去のことを思い出す。あの時、自分がやれなかったことを…。


 「操り人形はともかく、それが自分の能力をより活用することが出来るのな

 ら…利用しても損はない。相手は人間じゃなく機械で、それはいつでも作り

 手に言えば改良することが出来るし、それができないなら空手でも習って

 自分の意思で防御や攻撃に専念すればいいだけの話。まぁ、それはあんた

 次第だけどね」


 能力者の先輩としてのアドバイスというやつか、彼の言葉に美月は

 心を打たれた。子供っぽい彼が大人に見えた。

 

 大人なのに…。

 

 「護身術…習おうかな」

 「それだったら、良いところがあるよ?しかもタダで」

 「えっ!?どっ、どこですか!??」


 「「特殊部隊訓練教育学校」」

 「えっ…?」


 二人同時に言ったために、美月は両サイドを見て動揺した。


 「やっぱりな。そういうと思ったよ」

 「あそこなら徹底的な指導が受けられますからね。それに今後のことを

 考えれば、彼女は特殊部隊に入った方が良いと思いますし」

 「そうだな。俺もそろそろ話そうかと思ってたんだよね~」

 「って、ちょっと待ってください!私まだ!」


 「美月。俺のことなら心配しなくていいぞ?」

 「ふぇ?」

 「実は哲から、装備開発の方へ戻ってこいって話がずいぶん前から来ててな」

 

 美月は初めて聞いたため、目が点となり頭が真っ白になった。


 「訓練生になれば寮に入ることになる。俺も装備開発で忙しくなって帰れない

 こともあるから家を空けることが多くなる。だからお前が学校へ行けばその

 心配がなくなるわけだ。一人ぼっちで留守番してる間に誘拐されたりでも

 したら大変だからな」


 「先生、だから私はまだ入るとは…」

 「大丈夫だよ。あんたなら、あっという間に正隊員になれるって。

 そしたら僕達のチームに入れば一石二鳥じゃない」

 「それは宮木さんだけでしょ?!」

 

 「美月、訓練生でも給料は出るんだぞ?」

 「えっ!?」

 「宮木君、訓練生の時の給料っていくらぐらい貰ってた?」

 「あぁ…確か…最低でも5万は貰ってましたね」


 「5万!?」

 「超能力者や能力者は貴重だからね。まぁ、能力によって仕事は限られる

 けど。あとは授業で正隊員の指示で動くこともあるから」


 「どうだ?訓練生になって基礎体力が付けられて出来次第で給料が貰える

 んだぞ?」

 「入って損することは特にないと思うよ。まぁ…入ってからが大変なんだけ

 どね」


 

 そして、美月が考え込んだ結果…


 「…私、学校行きます」

 

 

 


 


 

 

 

 

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