表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の危機回避能力はあてにならない  作者:
すべてはホットケーキから始まった
24/362

お金の力で人の気持ちは買えません

 宮木の(自称:告白)プロポーズを断った日から約一か月。

 美月の怪我は完治し、いつもどおりの生活に戻って一安心したある日。

 

 もう手伝いは必要もないのに、宮木が柊家を訪れて美月が玄関先で話を

 聞くことにした。

 「はい、これ」


 手渡されたのは茶封筒ちゃぶうとう)で、美月が宮木に「なんですか、これ?」と封筒の中身を取り出して確認しようとすると…。

 「今月の給料」

 

 彼の言葉と同時に美月は中身を見て絶句してしまう。

 チャリン!!という効果音が出るほどの大金を目の前にし、しばらくの間

 見つめた後、「お返しします。さようなら」と丁寧にお金を茶封筒に閉まっ

 て本人に返却し、扉を閉めようとする。

 

 「ちょっと待って!お願い、話を聞いて!」

 宮木は扉を閉めさせないように「怪力」の力を使って必死に彼女を説得

 しようとするが、美月はそれに負けずと全力で扉を閉めようとする。


 「やめてください。扉が壊れちゃいます!」

 「だったら、閉めるな!」

 

 バキッ!

 「「あっ…」」


 扉は二人により、完全に壊れてしまった。

 

 「もう…あんたが閉めるからいけないんだよ」

 「そりゃあ、閉めたくもなりますよ。お金の力で人の気持ちを買収しようと

 するなんて怖くて逃げ出したくもなりますよ」

 「だから違うんだって…」

 

 宮木は美月に誤解を解くために詳しく説明した。

 

 「僕、給料のほとんどをすぐにお菓子とかに使っちゃうからすぐ金欠になって

 先輩とか妹尾に頼りきりの生活になっちゃうんだ。だから、菊馬に預かって

 もらいたいんだよ」

 

 「そんなのダメですよ。汗水流して働いたお金を他人に預けるなんて無防備

 にも程がありますよ!」


 それを聞いた宮木は、こう答えた。

 「他人じゃないよ。お嫁さんでしょ?」

 「違いますよ!っていうか、まだあきらめてなかったんですか!?」

 

 「お腹がすいた」という彼のために、自分がおやつで食べるために買ってお

 いたホットケーキを作って食べさせたことからすべてが始まった。

 そもそも、どうしてホットケーキを食べただけでこんなことになってしまった

 のかは美月ですらも分かっていない。


 「当たり前でしょ?そんな簡単にあきらめるわけないじゃん」

 「この間も言いましたけど、料理が作れる女性なんて探したらいくらでも

 いますからね。それにホットケーキだけで将来のパートナーを選ぶのは

 明らかに間違ってます。人生を棒に振るだけです」


 「現実的で夢がなさすぎだよ?」

 「宮木さんが現実離れをしてるだけです。世の中そんな簡単に物事が上手く

 行くとは限らないんですから」

 

 美月の言う通り、現実はそう甘くない。

 宮木のように単純に将来のパートナーを決めてしまっては、後からのしかかる

 「現実」が重みとなり、あっという間に「破滅はめつ」する。

 美月と宮木は生まれた年も、育った環境も、考え方も全く違うため

 上手くいくかどうかは、彼ら次第で変わってくる。


 「菊馬はしっかりしてるねぇ~。僕そこまで考えてもいなかったよ」

 「それなら今からでも遅くないです。ちゃんと考え直してください」

 

 「やっぱり僕のお嫁さんになってよ」

 「って話を聞きなさいよ!」


 宮木は全く自分の意思を変えることはしなかった。

 というか、ますます美月を自分のお嫁さんにしようという気持ちが強まって

 しまう。


 美月は、もう彼にはお手上げ状態だった。


 

 「怪我の方はどう?まだ痛い?」

 「見ての通り、大丈夫ですよ」と美月は右腕を宮木に見せる。

 すると宮木は、美月の右腕を手に取ってじろじろと観察し始めた。


 「えっ、ちょっと…なんですか?気持ち悪い」

 「肌白いね?」

 「あぁ…ずっと家の中にいることが多いですから。出るといえば買い物

 ぐらいですし」

 「すごく柔らかいし、それに細っ」

 

 「あの…やめてください。くすぐったいです」

 「えぇ~やだよ。もうちょっと触りたい」

 「やだじゃない!離せ、セクハラ!!」

 

 「お二人さん。いちゃいちゃしてる所悪いんだけど、ちょっと手伝ってくん

 ないかな?」とそこへ柊先生が玄関前にいる二人に声をかけた。


 「いちゃいちゃ」と聞いた美月は、顔を真っ赤にして柊先生に怒りをぶつけ

 る。

 

 「誰もいちゃいちゃなんかしてませんよっ!」

 「あれっ、そうだったのか?俺はてっきりそうかと…」

 「先生何を変なこと言ってるんですか、もうー!?」

 「あぁ~ごめんごめん。とりあえず、来てくれ。宮木君もよろしくね~」と

 柊先生は逃げるように部屋へと立ち去って行く。


 

 「もう、宮木さんのせいですよ!?」

 「えぇ~僕のせい?っていうか、あんた顔真っ赤だけど?」

 「怒ったからですよ。からかうのやめてください」

 「はいはい。とりあえず行こうよ」

 

 宮木は靴を脱いで、先に柊先生の部屋へと向かって歩いていく。

 その後に美月も続いて部屋の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ