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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
柏学院高等学校
222/362

美月の過去が謎家によってばらされて大変なことになった件


「私が関与しているからとはいえ、全てはこの謎家の計画通りに行われた犯行だと思わないでください。

 この件については、私も驚いているんです。本来ならば華原誠史の転落は不幸な事故として終えるは

 ずだった。なのにどうして二人の高校生が命を落とすことになったのか…私にはさっぱり分からない

 のですよ。本当に…おかしな話だとしか言いようがない」

 謎家は『お手上げですよ』と言うように小森と芦達に説明する。


「いいやっ、貴方はこうなることを予測出来たはずだ。さっぱり分からなかったはずがないだろ」

「…例えそうだとしても、私には関係ないことです。それより…」

 

 謎家は芦達との話を無理やり終わらせて、後ろにいる小森の方へと振り返る。

「なっ、なんだよっ?」

 またじっと見られるのかと思い、小森は1、2歩ほど下がる。


すると謎家は小森に右手を差し出して…「スマホをよこせ」と言ってきたのだ。それを聞いた小森は

「はぁっ!?嫌だよっ!これは美月のスマホなんだ。渡せるわけないだろっ!?」とスマホ受け渡しを

 拒否する。


「もうすぐ俺宛ての電話が来るんだ。だからよこせ」

 だが、謎家は諦めずに『スマホをよこせ』と言ってきた。

「なんでそんなことが分かるんだよっ?お前は未来予知でも持ってるのか!?」

「そんなもん持ってないよ。とにかく、よこせ」

「嫌だっ!」

 例えもし未来予知の超能力者だったとしても、小森は謎家に美月のスマホを渡さなかっただろう。

 自分のものならまだしも借りているものをそんな簡単に渡すわけにはいかない。しかし…。

「そうか…なら、これでどうだ?」


 謎家はまたしても上着の右ポケットから数枚の写真を取り出して小森に見せた。


「これが入園式の時の写真だ。そして次に園内にあるブランコで遊んでいる時の写真。そして次にこれ

 はドッジボールをしている時の写真。そしてこれが初めて園内のプールで泳いだ時の写真」

 まるで紙芝居を見せるかのように順番に丁寧に説明する謎家。


「かっ、可愛いっ…」

「だろっ?この写真をお前にやる代わりに少しだけそのスマホを貸してくれっ。俺を信用しろ」

 

 小森は持っていた美月のスマホを黙って謎家に渡し、謎家は持っていた写真を全部彼に渡して取引は

 無事成立した。それから少しして、美月のスマホに電話の着信が入ってきた。チャットの無料電話で

 宮木から掛かって来ていたが、謎家は迷わず電話に出る。


 

「あぁ~もしもし」

 音声を二人にも聞こえるようにして会話をする。だが、相手からの返事がない。


『…』

「もしも~し?聞えてますかぁ~?」

 謎家は電話の相手に問いかける。

『…』

「応答がないなら切りますよ『死ねっ』

 謎家は本当に電話を切ろうとしかけた時、ようやく電話の相手が答えた。着信は宮木からだったが、

 声の主は彼ではなく…美月だった。


「…応答がないから切ると言っただけなのに『死ね』はないだろ?俺はお前に何か恨みを買うようなこ

 とをしたのか?」と、謎家は美月に尋ねる。

『写真だよ』

「写真?あぁ~そういえば真一郎殿に渡したあのアルバム。今はお前の元にあるんだったな。もしかし

 てそれで怒ってるのか?知らない間に盗み撮りされたことを知って腹が立ってそれで…『それもある

 。けど』

「けどなんだ?他にまだ怒ることがあるっていうのか?」

 謎家がそう聞くと、美月は何も答えなかった。

「ん?どうした?」

 心配そうに尋ねる謎家。だが、こうなることは彼にとって想定内だった。


『…他にもあるだろ。このアルバムの他にもまた別のものを…まだ持ってるんだろ?』

 姿が見えなくても、声だけで震えているのが分かる。そう…今にも死にそうな声で。


「そうだな。真一郎殿に渡したアルバム・小森に渡した写真数枚以外にも写真は数えきれないほどあ

 るが…それがなんだ?まさかとは思うが欲しいってわけじゃないだろ?お前にとって昔の自分なんて

 思い出したくない=(イコール)きれいさっぱり忘れたい過去だ。そんなものなんて欲しいどころか

 燃やしてしまいたいだろうに…」


 ここで謎家はふと思い出したかのように美月にこう話し始めた。

「あぁ~そういえばお前。小学生の頃に新聞紙で遊んでたよな?確か…マッチで火を点けて燃やそうと

 してたところを父親に見つかって、ものすごく叱られて…それ以来、家の中ではマッチや着火道具に

 ガスコンロまで、一人では絶対に使うなって言われて…」


 それから謎家の話は続いた。


「あとはこんなこともあったな。近所に散歩へ行った際によくヘビイチゴ摘んでたよな?食べられない

 ことは植物館を見て知ってたものの、お前はそれを家に持ち帰ってすり鉢とすりこぎを使って団子か

 何か分からないものを作ってたよなぁ?あとは…『やめろっ、それ以上言うなっ!??』

 

 黙って聞いていた美月の怒りは爆発する。もしこの場に彼女がいれば、あまりの怒りにこの男を殴る

 なり蹴るなりしていたかもしれない。16歳の少女の怒りを聞いた後、謎家は平然とした顔に平然と

 した口調で美月に次のように話した。


「あぁ~その時の写真を説明文付きでさっき送っといたぞ」

『はぁっ!?』


 それは小森からスマホを受け取った瞬間に行われていた。電話帳を一通り把握した後、謎家は自分の

 スマホに保存してあった美月の写真と説明文を添付。そしてタイミングよく一斉送信した。小森と

 芦達が見守る中いったいどうやってそんなことが出来たのか…それはこの男が持つ能力にある。


「安心しろ。お前の親しい友人達だ。昔やらかした過去のことを知っても、きっと嫌いにはならないよ」

 この謎家の言葉が、美月の心に止めを刺すことになる。


『いっ…いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーー

 -----------!???????????????????』


 

 電話越しなので、どうなっているかは分からない。だが、完全に謎家の思惑通りになってしまった

 ことは事実である。


「よしっ。これでしばらくは立ち直れないだろう」と独り言を呟くと、謎家は小森のいる方向へスマホ

 を投げる。それもまるで犬にフライングディスクを取ってこさせるかのように遠くへと…。


「えぇっ!?」

「叫ぶ暇があったらさっさと取りに行って来い。でないとスマホがパァ~になっちまうぞ?」

「…ちっくしょーっ!!!!!!!!!!!」


 小森は謎家を睨んだ後、全速力…いや死ぬ気で彼の投げたスマホを取りに行った。

 それを見届けた後、謎家は芦達の元へと近づき…「真一郎殿。これ、彼女が戻って来たら渡してあげ

 てください」と上着の左ポケットから一台のスマホを取り出して彼の左手に乗せる。


「これは…」

 芦達は受け取ったスマホに見覚えがあった。それは先程投げた美月のスマホ。今は小森が追いかけて

 いるはずなのに、どうしてここにあるのだろうと芦達は不思議に思っていた。


「先程投げたのは私の古いスマホです。他人の物を壊したら弁償しろだのなんだのうるさいですから、

 投げる前に自分の物とすり替えて遠くに投げたんですよ。例え池ポチャになったとしても問題あり

 ません。弁償しなくても結構です。私は新しいスマホを買うだけですから」


 謎家は芦達にそう言うと、正門へと向かって進んで行く。


「あっ、待てっ!」

 芦達が謎家の右腕を掴もうとする。だが、それを瞬時に察したのか謎家は素早く避けた。


「…っ!?」

「用が済みましたので、私はこれで失礼させていただきます。またお会いしましょう、真一郎殿」


 謎家は芦達に振り向きもせずにそう告げて、すたすたと正門の方へと歩いて外へと出て行ったのであ

 った。



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