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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
柏学院高等学校
214/362

宮木と伊島 未来予知とは異なる超能力


伊島魁兎、21歳。元特殊部隊訓練生で宮木・妹尾・達己等の21歳組と同期。

人の過去や未来を視ることが出来るため『未来予知』とは異なる超能力を持つ。

現在はこの超能力を活かして占い師の仕事をしているが、客が来ないとなれば散歩に出かけて通行人(

主に女性)に声を掛けて宣伝をしている。


「あぁ、そうそう。僕がどうしてここに来たのかってまだ話してなかったよね?僕は今占い師の仕事を

 してるんだけどぉ~自分の今日の運勢を視てみたら、『ここの病院で懐かしい人達に会えるかもしれ

 ない』って出たからちょっと散歩がてらに行ってみたんだよねぇ~まぁ、その気になればどこで誰が

 何をしてるのかってのも分かるんだけど、そこまでしちゃうとヤバいからしないんだけどねぇ~。僕

 は妹尾みたいに長時間能力を使えるわけじゃないから」

「…へぇ~」

 

 現在、四之宮チームの三人は報告のため外に出ている。そのためこの場にいるのは美月・達己・伊島

 の三人のみである。

 

「ねぇ、美月ちゃんって呼んでも良い?」

「…どうぞ」

「やったぁー!ありがとぉ~!あぁ、僕は別に伊島さんでいいから。下の名前で呼ばれるの好きじゃな

 いんだよねぇ~いろいろあってさぁ~。だから大庭兄とは仲が悪いってわけじゃなくて、僕が『呼ば

 ないでくれ』ってお願いしてるんだよ。よく『仲悪いの?』って聞かれたことがあったから一応言っ

 ておくね」

「…よくしゃべるね」

「うん、僕お喋りが大好きなんだ。でも、あまりに喋り過ぎて『信用できない』って言われたことも

 あるんだよね。その時は『なんでなんだろう?』って思ってたけどさぁ~教えてくれても良かったん

 じゃないかって今でも思うんだよねぇ~。僕間違ってるのかなぁ~ねぇ、どう思う?僕間違ってると

 思う?」と、伊島は美月に尋ねる。


「…まちがってない」

「だよねっ、だよねっ!美月ちゃんならこの気持ち分かってくれるよねっ!まぁ、分かってたんだけど

 さぁ~そう言ってくれると嬉しいよぉ、僕」

「伊島、もう少し小さな声で喋れ。声がでかいぞ」

「あぁ~ごめんごめん。ついテンション上がっちゃったっ~てへっ」と達己にウインクして笑顔で舌を

 出す伊島。だが達己はあえて突っ込みもせず、「分かればいい」とだけ言うのみ。それを聞いた伊島

 は…。


「えぇー!なんでなんでぇー!?なんで突っ込んでくれないのさっ!」

 伊島はまるで子供のようにその場で達己に怒鳴った。


「すまん。どう反応すればいいのか分からなかった」

 達己は伊島に素直に謝罪するが、これがきっかけで話題はあの話に切り替わる。

「もう~大庭は大庭で硬いよっ!分かってたけどさぁ~大庭は弟離れした方が良いよっ。今年で育巳も

 成人なんだし、もう昔みたいにそんなことしなくても大丈夫なんだから自分の時間作って好きな人

 作ったりしても良いんだよ。例えそれが片想いでも、叶わぬ恋でも、いけない恋でもっ!!っていう

 か…僕以外の男子ってほとんど女子に関心がなさすぎ?というか経験なさすっぎぃっ!??」

「声がでかい」

 

 伊島の頭に直撃したのは宮木の右手拳。話に夢中になっていたためか、四之宮チームが帰って来た

 ことに気がついていなかったようだ。

「いったいよ、宮木。さっきよりも痛いんだけどぉ~!」

 伊島は頭を両手で押さえて宮木に訴える。が、しかしこれを聞いて彼は「えぇ~これでも加減してる

 のに」と悪びれもなく言う。

「それでも痛いって。僕はか弱いうさぎなんだからもうちょっと優しくしてよぉ~」

「兎?どこが?」

 

『魁兎』という名前だけに『兎』と言ったのだろうが、宮木達からすれば彼は兎ではないらしい。

 外見や性格、その他もろもろを加えても…。


「ひどぉーい~!美月ちゃん、助けて」

「…むり」

「そんなぁ~分かってたけど、見捨てないでぇー!僕をこの鬼畜から助け…「伊島、ちょっと来い」

「あぁー連れてかれるぅ~こーわいっ!妹尾ー大庭ぁー」とかつての旧友に助けを求める伊島。しかし

 …。

「「諦めろ、伊島」」

 旧友二人は伊島を見放した。それどころか『諦めろ』と同時に言われてかなりショックを受ける。


「すみません、先輩。一時間ほどしたら戻ります」

「いっ、一時間!?一時間も何するの?説教?拷問?それとも…「いいから黙ってついて来い」


 宮木は伊島を連れて病室を出て行った。

 

「遥、隼士について行かなくていいのか?」

「俺が行ったところで何も変わらないよ。あと大庭、何度も言ってるけど下の名前で呼ぶのやめて

 くれ」

「それにしてもあいつ、隼士に何の用があるんだろうな?」


 妹尾の言葉は達己に完全スルーされる。だが、それはいつものことなので落ち込むこともなかった。



 

 宮木と伊島が病室を出た後に向かったのは病院近くの公園。平日ではあるが、まだ2歳か3歳ぐらい

 の子供が母親と共に遊んでいる姿が見られる。二人は自動販売機で飲み物を購入すると、空いている

 ベンチへと座った。


 「伊島…僕に何か話したいことがあるんじゃないの?」

 「うん、あるよ。たくさん」

  伊島は宮木にそう言うと、先程購入したホットココアをごくごくと飲み始める。

 

 「…美月の何を視たの?」

 「あぁ~美味しっ。…美月ちゃんって可愛いよね?」

 「伊島、ふざけな…っ!?」


 宮木が『ふざけないでよ』と言い終える前に、伊島は宮木に近づいて「でも、本当の姿じゃないよね

 ?彼女」と、先程と違い真剣な目で尋ねてきた。まるで問い詰めるかのような冷たい目で。


 「…まぁ、それも仕方ないよね。両親を亡くしたうえに自分自身も身体と心に深い傷を負っちゃった

  わけだから。あのままだったら完全に美月ちゃんの人生は終わってただろうからねぇ~。あぁ、そ

  うそう。僕が彼女の『何を視たか』って話だったよね?そのことなんだけど、これをお前に言うの

  はちょっと気が引けない?というか…言いにくいんだけど……」

 「なっ、なんだよ。言いたいことがあるならはっきり言えよっ!」

 「そう?じゃあ言っちゃうけど、聞いたことを後悔しないでね?」


  伊島はそう言うと宮木から一度視線を外し、残っていたホットココアをゴクゴクと全部飲み干す。

  その後立ち上がって空き缶をベンチの近くにあったゴミ箱の中へ捨てると、ぐるっと回転して宮木

  の方に振り返ってこう言ったのだ。


 「お前は今すぐあの子と距離をとった方が良い。それがお前と彼女のためになる」

 「…はっ?」

 

 宮木は最初、伊島の言葉が理解出来なかった。その様子を見た伊島は…。


 「残念だけど…お前は好きな人と結ばれない。このままじゃ互いに傷つきあうだけで終わってしまう。

  だから今のうちに距離を取るんだ。でないとお前は…「なんでお前にそんなこと言われなくちゃい

  けないんだよっ!!」

 

 「僕と美月は結ばれない?このままじゃ傷つきあうだけ?…さっきからいったい何言ってるんだよ!」

 「理解出来ない気持ちは分かる。だけどこれは本当のことなんだ…宮木。このままじゃ宮木や美月ち

  ゃんの心に大きな傷を負うことになる。美月ちゃんが入院している時が距離を取れる、別の言葉で

  いえば『自然消滅』出来るチャンス…「ふざけんなっ!!!!!!」


  宮木は我慢の限界で、伊島を殴ってしまう。その光景を見ていた母親達は子供を連れて素早く

  公園から逃げて行くのが見えたが、そんなこと彼らは気にしていなかった。

 

 「…ふざけんなよ。美月と距離を取るだなんて、そんなこと…出来るわけないだろうっ!」

  宮木は倒れている伊島に向かって叫んだ。すると伊島は倒れたままの姿勢で宮木にこう話し始める。


 「…宮木は今まで異性に対して、本気で好きになったことはなかった。美月ちゃんに出会うまでず

  っと…。美月ちゃんの方は、片想いしてた幼馴染君に裏切られた過去もあるけど…今までお父さん

  だと思っていた人が本当のお父さんじゃなかったりして……精神的に参ってる状態だ。お前が美月

  ちゃんと仲良くしていられたのは…彼女がお前に気を遣っていたからなんだよ。お前は美月ちゃん

  からすれば5歳年上の大人で、先輩で…そして恐怖を植えつけられるかもしれない存在だ。あの子

  はお前に好意を抱いているけど、それは好意じゃなくて興味。自分のことを『好きだ』って言って

  くるお前に興味が湧いてきてた。けどお前は…美月ちゃんと二度目の喧嘩をしている。本来なら

  最初の喧嘩で縁を切ったら良かったんだけど、能力の代償のこともあって結局仲直りした。今回の

  ことでも仲直りしようと思ってるんだろうけど…これから起こることが現実になれば、お前達はま

  た喧嘩することになる。『喧嘩するほど仲が良い』とか『愛があれば年の差なんて関係ない』とか

  そういうのじゃ片付けられないぐらいの大喧嘩をすることになっちゃうんだよ」

 「…それで、距離を取れって言ってるの?」

  宮木は伊島の話を黙って聞いた後、拳を鳴らしながら彼に尋ねる。もはや殴る準備万端で…。


 「宮木、ただの喧嘩じゃないんだよ!?詳しいことは言えないけど、二人が次喧嘩する時は本当に

  まずいんだってっ!下手したら殺し合いに発展するかもしれない喧嘩になるから、ここで距離

  を取っておかないと大変なことになるんだよっ!」と伊島は倒れていた身体を一気に起こして宮木

  に訴える。すると…。

 「殺し合い?美月と僕が?」

 「あぁー!!しまったぁー!????」

  

 つい口が滑ってしまったらしく、伊島は慌てて口を塞ぐ。だが既に宮木に聞かれてしまった以上は

 もう遅い。

 

 「…いっ、今のはなかったことにしてください!」

 「嫌だ」

 「お願いします!」

 「嫌だ」

 「そこをなんとか「いーやーだー!!」


 土下座して先程の言葉を取り消してほしいと頼み込む伊島に、宮木は何度も『嫌だ』と断り続けたの

 であった。

 

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