不審者が出るなんて聞いてない
その頃、少女が向かう商店街ではある騒動が発生していた。
「お前ら、とっとと下がれ!さもないとこいつがどうなってもいいのか!?」
「きゃあー!?」
1人の武装した男性が若い女性を人質にとり、目の前にいる警察官達に脅しをか
ける。どうやら宝石強盗らしく、鞄には大量の宝石が入っていた。
「くそっ。これでは手が出せない」
「あきらめるな。まだ、チャンスはある…そろそろ到着する頃だろう」
上司の男が話をしていると、噂をすればなんとやらで彼らは挨拶もなく強盗の男
の目の前に突然現れ、男の頭を足でけり倒した。
「ぐはぁ!?」
「大丈夫ですか?怪我は?」と人質の女性を抱えて声を掛ける少年の姿。
「あっ、はい。ありがとうございます」
女性は解放されたことにようやく気付いて、見ず知らずの少年に涙を流して
お礼を言う。
「くそがきがっ!?なめた真似しやがってぇ!!」
強盗の男は持っていた大きな刀を振り回し始めた。しかし、突然バキュン!と
いう大きな発砲音で、男の手に握られていた刀が折れてしまう。
「なにぃ!?」
「これで終わりだ」と男が襲いかかろうとしたもう一人の少年が右手拳で男の
腹を思いっきり殴り、男は戦意喪失したのであった。
警察はそれを見て、強盗の男を逮捕し事件は解決した。
「はぁ~、また無能力者か。つまらんな」
「こら、なんてことをいうんだ」
「分からなくもないけど。でも人質の女の人が無事で良かったよね?」
「そうだな。お前も綾を見習え」
「えぇ~隊長、俺ばっかりに冷たくないか?差別だぞ」
「そんなことはしてない。それより瀬楽、さっきのはなんだ?」
隊長の少年が瀬楽少年に説教を始めたその矢先のことだった。
瀬楽がまた始まったよ~と、話を聞きたくないので空でも眺めいようと思った
ら…
「こら、瀬楽!人の話をっ「何か来る」
「えっ?」と同時に二人は瀬楽が見つめる方向に自分たちも向ける。
すると、確かに彼のいっていた通りに何かがこちらに向かってくるのが見えた。
「なんだあれ?鳥?」
「いや…あれは」
段々と近づいてくる物体。それは明らかに…「人っ!?」
三人一斉にそう叫んだ。そう、彼らが見たのはスケートボードに乗った少女で
商店街を目的地にセットし、森の家からここまで飛んでやって来たのだ。
「いいか。さっき教えたとおりにやれよ?」
無線機内臓で男の声が掛けているメガネのスピーカーから聞こえてくる。
「分かったけど…なんか目立ってるんですけどっ!??」
「そりゃそうだろ。スケートボードに乗って飛んでるんだからさ」
「恥ずかしいっ」
と、それを地上で見ていた三人は
「ねぇ、どうしよう。あれ、助けた方が良いの?」
「当たり前だろ!?どうしよう、どうしよう。あっ、そうだ本部に連絡して…」
「ダメだ隊長。事件制がない以上、本部に報告したって無駄だ」
「じゃあどうするんだ、瀬楽?!あのままほっておくのか?」
「何もそんなこと言ってないだろ?俺達でなんとかするんだよ」
「隊長、やりましょう」
「綾…瀬楽…。よし、やるぞ!」
「おう!!」と一致団結で勝手に少女救出作戦を立てられてしまった。
そんなことも知らずに少女は男の指示に従い、着陸する用意を始めていた。
「準備完了。あとの作業は?」
「了解それじゃあ…「そのスケボよこせぇ!」
突然、空から飛んできた中年男性がスケートボードに捕まった。
「うわっ!?なにこいつ!?」
「どうした!?」と何が起こったか分からない男は部屋の中で1人で叫ぶ。
「先生、不審者!どうしよう」
「なにっ!?」
地上での三人組はその光景を目の当たりにしていた。
「おい、あれまずくないか?」
「あぁ。俺、行ってくる。綾も行くぞ!」
「うん!」
綾と瀬楽は隊長を置いてどこかへと走って行ってしまう。
「先生、これどうしたらいいの?!ここままだと着陸できないよ!???」
「落ち着け!すぐに向かうから何とか持ちこたえろ」
「そんなぁ!??」
少女は混乱中。そして不審者の男はスケートボードにしがみ中。
「そのスケボーを俺によこせ!そしたら俺は億万長者だ!」
「あぁ、もうこっち来ないでよ!」と少女が叫ぶと『緊急モード発動』
「えっ?なにこれ?」
アナウンスが流れると同時に固定していた足が自由となり、足がふらつく。
「うわぁ!?」
ドクン!!と少女の心臓が跳ね上がるかのように全身に震えが伝わった。
そして、少女はスケートボードから足が離れ地上へとゆっくりと落ちていく。
すると、それを待っていたかのように救世主が少女の身体を受け止めて
隊長が用意したどこからか持ってきた布団に無事着地する。
そして残ったスケートボードと男は『緊急モード』によって逆に男の腕を固定
し着陸。綾によって拘束された。