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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
宮木と美月の関係悪化と謎の訓練生達
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知られてはいけないこと

  その日の夕方。瀬楽達は授業が終わり、食事を済ませるとすぐさま保護棟にある柊先生の部屋を

  訪れていた。

 「菊馬からメッセージが届いた」

 「俺んところにも」

 「スマホ組は全員送ってると思うぞ。霜月、お前はどうだ?」

 「あぁ、うん。僕のところにもきてるよ」

 

 『四之宮さんからスマホを受け取ったので皆にメッセージを送ります。事情はもう知ってるかもしれ

  ませんが、しばらくの間は特殊部隊には戻らず要恵君の家にお世話になることになりました。私は

  無事なので心配しないでください』


 「四之宮さんの言ってたこと、本当だったんだな」

 「四之宮さんが嘘付くわけないだろ?隊長」

 「いやそれは分かってるけどさ…ちょっとまだ信じられなくて」

 「でも良かったわ。美月が無事で」

 「そうだね。あれから全然帰ってこないから、もしかして事故にでも遭ってるんじゃないかって思っ

  ちゃったよ」

 「綾。菊馬さんには危機回避があるんだぞ?さすがにそれはないんじゃ…」

 「いやいや隊長。あいつの性格なら、自分よりも他人を救うために行動するだろ?俺もあいつに助け

  てもらったし。まぁその時は俺が悪かったんだけど」

 「俺も美月に助けられたぞ。そん時はまだ二重人格だったけどな」

 『僕も助けてもらったよ』

 「…そりゃあ僕も、能力金融の件で一度助けてもらったけど」

 「そんなことよりも隊長。どうして菊馬に会っちゃいけないんだ?あいつと俺達は友達で霜月グルー

  プのメンバーなのに」

 「そうだぞ。なんで会いに行っちゃいけねぇーんだよ、霜月」

 「お前達何度も霜月に言わせるな。美月が要家にいることは四之宮と他の正隊員数名、それと杉村

  校長と柊先生。四之宮から事情を聴いた霜月と瀬楽。そして僕達五人だけだ。クラスメイトやその

  他訓練生正隊員にそのことを知られてはいけないんだ」

  ただ四之宮が話した時点では、まだ小山と内山はこのことについて知らなかったため話には出てこ

  なかったが、彼らも美月の居場所を知っているメンバーの数に入っている。あと、美月がいなくな

  ったことについて桐島や永田、その他のクラスメイトが心配して瀬楽達に聞いて来たが、スマホを

  瀬楽に預けて行ってしまったために本人との連絡が取れないと説明するとますます不安のみが募っ

  ていき自然とクラスの空気も重くなっていった。本当のことを言えないのは辛いが、四之宮から

  『他の人間には言うな』と言われた以上はそれに従うしかなかったのである。


 「じゃあ飛鳥先生はどうなんだ?さっきからそこにいるけど」

  柊先生もいるが、飛鳥についてはどうする?と瀬楽から尋ねられる岸本。

 「奏に頼んで口止めさせるから問題ない。とにかく、美月は昨日の昼から帰ってこず失踪したままに

  なっている。絶対に他の奴等に美月の居場所を知られるな…特に瀬楽と黒澤」

 「わっ、分かってるよ…」

 「ボロを出さないよう気をつけるでありますっ!」

 「瀬楽、なんか喋り方がおかしいぞ?」


 「なんだか心配ね」

 『うん。すごく心配』

  小森は宝正の問いかけにノートを使わずに答える。これは彼女の能力がテレパシーだからこそ出来

  ることで他のメンバーには真似できない。血を飲めば普通に会話することが出来るのだが、供給源

  である美月が不在のためノートを使って会話する。決して彼女の血でなくても良いが、緊急時以外

  ではなるべく他の人間の血を飲むことを好まない。まりものような吸血鬼能力者でないだけ、彼は

  まだ人間としてかなりマシと言えるだろう。


 

 その頃、内山は正隊員男子寮にある自分の部屋で何やらそわそわしていた。理由はスマホだ。

 普段なら部屋に帰るとすぐ充電して放置するはずなのに、今日はどういうわけか部屋に帰って来た後

 すぐ深く深呼吸をし、スマホをテーブルの上に置く。あまり使わなかったので充電に掛けることは

 なかった。だが気にしすぎるあまり風呂に入ることを忘れてしまい、急いで風呂に入って行った。

 それから約二十分後、風呂から上がると内山はスマホにメールが届いているのに気がつくとすぐに

 メールを確認する。


 「…」

 『お疲れ様です。今日はありがとうございました。電話番号とメールアドレスの登録よろしくお願い

  します。  菊馬美月』

 「ほっ、本当に来ちゃった…」

 

 内山は小山には黙っていたが、美月に自分の連絡先を書いたメモをこっそり渡していた。しかし、

 四之宮のように強制的にではなく、あえて本人に任せる形を取っていたためにメールが来るかどうか

 も分からなかったが、メールが届いたことにより安心…よりもこれは夢ではないかと疑う内山であっ

 た。その後届いたアドレスと電話番号を登録すると、自然とチャットにも彼女のものが追加されるが

 、内山はあえてメールで送り返した。するとその数分後に、今度はチャットの方にメッセージが届い

 た。


 「…ん?」

 『連絡先交換するのは良いけど、手は出さないでね? 宮木』

 チャットは美月からだったが、どうやら宮木が彼女のスマホを使って内山のチャットにメッセージを

 送ったらしい。宮木から送られたものだと知った内山は、「あいつぅ―!!」と宮木に対して怒りを

 覚えたのであった。ちなみに美月のスマホから送られたメッセージは既読が付いた後、宮木によって

 削除される。このことを知っているのは近くで見ていた陽子以外は、誰も彼がした行為に気がついて

 もいなかったのであった。

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