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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
宮木と美月の関係悪化と謎の訓練生達
177/362

内山と美月

 特殊部隊正隊員男子寮。勝山チームの小山守は朝起きてスマホを確認すると、寝間着のまま部屋を

 飛びだし、同じチームの内山の部屋を訪ねた。

「内山っ、内山っ!!」と部屋の扉を思いっきりドドドドン!と叩く小山。部屋で着替えていた内山は

 小山の声を聴いてすぐに玄関へと向かい扉をガチャンと開ける。

 

「うるさいなぁ…なんなんだよ。こんな朝早くから」

「んなこと言ってる場合じゃないってばっ。緊急事態?いいやっ、これは大事件、大事件なんだよー!」

「はぁ?大事件?」

「内山っ、スマホ見て。ス・マ・ホ!!」

「あぁ、分かった。分かったからその喋り方やめろって」

 気持ち悪いから。と内山は一旦部屋の中へと戻り、テーブルに置いていたスマホを起動して確認する。

 内山は小山と違って普段スマホを使わない。昔はケータイなんていらない派だったが、小山の勧めに

 より初めてケータイを手にし、使い方も小山に教えてもらった。そしてまた小山の勧めでスマホに

 買い換えたのである。言われた通りスマホを見るが特にメールも何もない。


「見たが何もないぞ?」

「ファンサイトだ、ファンサイトを開けっ!」

「あぁ…ファンサイトか」

 

 ファンサイトとは菊馬ファンクラブのファンサイトで、桐島が本人承諾なしで勝手に作ったもの。

 ちなみにこれはインターネットではなく、グループチャットで特殊部隊の訓練生・正隊員は紹介が

 ないと入れない仕組みになっている。内山はこのグループチャットに一応は言ってないが、非通知に

 しているため全く気が付いていなかった。小山に言われてグループチャットを確認すると、内山は

 書かれている内容に目を疑う。


『菊馬さんがお昼頃、どこか出かけたっきり帰ってこない(泣)』←桐島

『さぼりじゃね?』←(菊馬ファンA)

『さぼりにしても帰ってこないっておかしいだろ(笑)』←(菊馬ファンB)

『仕事とかじゃないなら…家出とか?よく知らないけど』←(菊馬ファンC)


と、チャットにはさぼり・家出・誘拐などという書き込みがたくさん。


「なっ、なんだよ…こ…れっ」

 内山はスマホの書き込みを一通り見終わると、魂が抜けてその場でバタン!と倒れ込んでしまう。

「内山っ、しっかりしろ!内山っ。内山ぁーー!?????????」



その頃、特殊部隊本部では杉村と柊先生。そして四之宮・勝山・鮎川達が会議のため集まっていた。

「それは確かなのかね?」

「はい。彼女達を襲った男性数名の身元を調べたところプロの殺し屋と判明しました。しかし未来予知

 …そして吸血鬼能力者となった星野陽子にあっさりやられてしまったと、菊馬が証言しています」

「プロの殺し屋かぁ~怖いねぇ~」

「菊馬を呼び出したのはこれから起こることに彼女を巻き込ませないため。彼女さえ無事でいてくれれ

 ば他の人間のことなどは自分には関係ないと」

「しかし未来を予知することが出来るとはいえ、それが現実になるかどうか分からないじゃないか?」

 と勝山が四之宮に尋ねる。


「星野陽子は実の妹である菊馬にはべったりです。予知が変わったならそれはそれで良し。しかしその

 予知が命の危機に関わるものならば、すぐ側にいた方が都合が良いと」

「なるほど」

「ようするに大庭兄弟の女性バージョンってところね」

「でも、本当に予知なんて当たるんですかねぇ~。正直、俺には信じられないですわ」

「あらっ、富崎君は占いとかそういうの信じない方?」

「そうですね。どちらかといえば」


 特殊部隊正隊員。富崎チーム隊長、富崎刃とみざきやいば、17歳。

 メンバーは副隊長兼恋人の志倉香織しくらかおり、17歳。斎藤祈さいとういのり、17歳。

 満岡沙良みつおかさら、16歳と彼以外は全員女子。しかしメンバー全員特殊危険能力に分類

 される超能力者で主に暗殺系の仕事を担当しているチームである。


「富崎。信じる信じないにせよ、何かしらの対策はしておかなければならんだろう。現実に起こって後

 々後悔することにならないよう、我々はこうして集まり会議を開いているのだ」

「…そうですね。余計なこと言ってすみませんでした、勝山さん」


 出たよ、正義感の塊。余計なこと言わなきゃよかった。と富崎は後悔したのであった。それから約二

 時間後に会議が終わると富崎は授業を受けるため、速やかに会議室を出て行った。そして訓練棟にあ

 る教室へ向かうと同じメンバーの斎藤祈が自分に気づいて手を振った後、教室の中に入って「シー

 クラ~。刃が来たよ~」と席に座って本を読んでいた志倉香織に大声で叫んだ。


「おはよう、イノー。…おはよう、シークラ」

「…おはようございます。富崎隊長」

「シークラ、今は仕事じゃないんだからもう少し柔らか~くならないか?俺達同い年だし」

「それよりも朝から呼び出されたと斎藤さんから聞いたのですが…どうして私には教えてくださらなか

 ったのですか?」

「あぁ…今回は隊長のみってことだったからな。それにお前に教えたら何が何でも絶対ついていくだろ

 ?だからあえて言わなかったんだ」

「…そうですか」

「それで刃、今回の仕事はおもしろ系?それとも…超おもしろ系」

「う~ん~そうだな……とりあえず超おもしろ系で」

「おぉ~!なんだかわくわくどっどきの予感がしてきたわぁ~」

テンションあがるぅ~楽しそうにしている斎藤に対し、志倉はチラッと見るのみで済ませ富崎の方に

視線を送る。


「隊長。満岡さんにはもうそのことは…「いいや、今回あいつは連れてかない。でもお昼に一度顔を

 見に行こうと思ってる」

「では私も連れてってください。久し振りに満岡さんとお話がしたいです」

「おう。イノーはどうする?」

「ごめん、私はパス」

「…分かった。じゃあ俺達だけで行ってくるわ」



一方その頃、四之宮は勝山に頼まれて小山と内山を連れて要家へと車でやって来た。


「というわけで菊馬。内山を生き返らせてくれ」

「お願いします!」

四之宮からある程度の事情を説明され、小山は無気力状態の内山を抱えながらも後輩である彼女に頭

を下げて頼み込む。突然やって来て『生き返らせてくれ』と訳の分からないことを言われて動揺して

いたが、このまま黙っているわけにもいかないので恐る恐ると小山に向けて話し始める。

「いやっ、あの…私を頼るよりも病院に連れて行った方がいいんじゃ「病院に行っても治らない病気と

 いうものがあるだろ。ほら、お前のすぐ隣にいるやつもその病気に掛かってるんじゃないのか?」


 四之宮の言葉を聞いて美月は後ろにいる宮木に目を向ける。しかし、それはほんの数秒間で美月は

 すぐに視線を四之宮の方へと戻し「そうですね」と短い返事を返した。そんな彼女に宮木は少しば

 かり寂しい感じに襲われる。


「とりあえずこの方を精神的に生き返らせればいいんですよね?四之宮さん」

「そうだ」

「ふむふむ。…では宮木さん、この方を2階の私の部屋に運んでください」

「はぁ?なんで僕がそんなことを…「いいから早くっ」

「…あぁ、はいはい。分かりましたよ」

 

よっこらせっ。と宮木は小山から内山を背負い、2階の陽子が使っている部屋へと運んだのである。

美月が陽子の指示で布団を敷き、そこへ内山を寝かせる。


「それで、寝かせたけどどうするの?」と陽子に尋ねる美月。

「簡単です。内山さんが目を覚ますまで美月ちゃんが看病すれば良いんです」

「それだったら病院に行って診てもらった方が…「約一時間半後に目を覚ましますから、それまでの

 辛抱ですよ」

「一時間半って…それでも結構ながっ「じゃあ私達は1階にいますので。宮木さんいきますよ」

「えっ、ちょっと…」

 陽子は宮木の右腕を引っ張り、美月と内山だけを部屋に残して出て行ったのであった。


 そして約一時間半が経過した頃、陽子の言う通りに内山が目を覚ました。

「…うっ」

「あっ、起きた?」

「……ここはっ…どこだ?」

「内山さん、大丈夫ですか?私のこと分かりますか?」

「…っ!?」

今までは布団に横になっていた内山がここで美月の存在にようやく気がついた。そして布団から物凄い

スピードで彼女から離れる。


「あっ、あの…」

「…夢?俺は今、夢でも見ているのか…?」

 現実を受け入れられず、夢だと思っているらしい。

「いえ、夢じゃないです。小山さんと四之宮さんが車を使って内山さんをここまで運んできたんですよ」

 本来なら病人は安静にしておかなきゃいけないんだけどね。いったい何考えてるのやら…。


「そっ、そう…」

「内山さん、お身体の方は大丈夫ですか?小山さんから倒れたって聞いたんですけど」

「っ!?そうだった忘れてた。菊馬さん、昨日いったい何が…「すみません。そのことについては四之

 宮さんか小山さんに聞いてください。私、小山さん達呼んできますから」と美月はすぐさま立ち上が

 り、部屋を出ようとドアノブに手を掛けると内山に「待って」と言われた直後に右手首を掴まれてし

 まう。


「なっ…何ですか?」

「教えてくれ。昨日、いったい何があったんだ?」

「…それは、特殊部隊正隊員の先輩として聞いてるんですか?それとも個人的にですか?」


 結局この人も…一緒だ。変な質問する子だと思われてるかもしれない。でも聞かずにはいられなかっ

 た。下にいる四人はもう陽子の未来予知のこと、そして昨日起きた出来事を知っている。だから、

 自分に聞かなくてもその四人から事情が聴ける。何も私じゃなくたって……いいはずなんだ。


「正直言うと、俺は菊馬さんとあまり仕事で一緒になったことないから…先輩としてよりも、個人的

 な方かなとは思う」

 

 内山の回答に美月は耳を疑った。だがもう一度聞き直すことはせず、彼女は内山に次の事を尋ねた。

「内山さん。私って…甘ったれなんでしょうか」

「えっ?」                          

「特殊部隊の正隊員としても…個人的にしても。ネガティブで、いつまでも昔のことを引きずってて…

 感情的に行動する甘ったれな人間なんでしょうか…私はっ」


 美月の目には大量の涙が溢れ、それを掴まれていない左手で必死に拭おうとするが全く止まることは

 ない。そんな彼女を内山は黙って見るはずもなく掴んでいた右手首を解放しすぐさま自分の元へと

 引き寄せる。


 「っ!?」

 美月は気がつくと、内山に抱きしめられていた。


 「あの…内山さん」

 「覚えてるかどうか分からないけど、俺は一度訓練生の時の貴女に会ったことがあるんだ。どっかの

  誰かの嫌がらせで変なシールを肩に貼られてね。もし、あのまま気づいていなかったら…もっとた

  くさんの訓練生達に見られて大笑いされてたかもしれない。それを…菊馬さんだけが俺に知らせに

  来てくれた」

 「…ごめんなさい。覚えてないです」

 「そうだよね。まだ訓練生だったし、通りすがりだったから覚えてないのも無理はないよ」

 「…ありがとうございます」

 

 「誰に言われたかは知らないけど…俺は貴女を甘ったれだとは思わないよ」

 「…はい」

 

 まぁ…そいつが誰なのかは、見当がついてるけど。

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