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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
保護組新担任登場と四之宮光の過去
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日影の過去の続きと頼み事

 四之宮はすべての真相には辿りつけなかったものの、そのことを日影に伝えるためすぐに彼と面会

 した。


 「俺とお前には血縁関係は存在しない。幼い俺はそんなこと知る由もなくお前のことを実の兄として

  慕い数年間を共に過ごしていた。ところが、両親が離婚することになりお前は父親、俺は母親に

  引き取られることに。だがそうなる前に、お前は能力で当時幼かった俺の記憶…家族で暮らしてい

  た記憶をすべて奪ったんだ。証拠を残さないために」

 「証拠?なんだそりゃ?」

 「伯母から聞いたんだよ。お前が父親と血縁関係がないってことは…幼い俺が教えたと。だから俺の

  記憶を奪ったんだ。でなければここまでする理由が思いつかない」

 

 だが日影は黙ったまま四之宮をじっと見つめるだけで何も答えようとはしない。その様子に四之宮は

 間違っているのか?と少々不安になり始めたが、もちろん表情には出てこない。すると…。


 

 「あのさ、光。俺との血縁関係がないと分かった時点で…どうして調査をやめなかったんだ?赤の

  他人と暮らしていたんだってだけでも十分な収穫だったろ?なんでそこまで調べる必要がある」

 「他人だろうが、一緒に暮らしていたことに変わりはない。俺にはその記憶がないんだし、その目的

  で有給を使って調べてたんだし、使わなきゃもったいないだろ?」

 「お前…そういうところがあの女に似てるよな?時間を有効に使いたいだとかっていろいろと言い

  やがってさぁ~。お前と話してるとますますそう思ってくるよ」


 「お前の実の父親は突然いなくなったと聞いた。あくまでも俺の推測だが…お前の父親は能力金融

  に金を借りていたんじゃないのか?」

 「…あぁ。そうだよ」

 

  四之宮はアパートの元住人から聞いた話を聞き、もしかしたらと思った。日影がもう能力に目覚め

  ているのであればその可能性が高いと…。


 「俺は父親の借金返済のため、能力金融の下で働いてたんだ。記憶操作の超能力を使ってあいつらの

  言う通りに記憶を消したり、記憶を書き換えたりとしていた。逃げられないように金融は当時下っ

  端の渡辺健わたなべたけるに俺を引き取らせた。その後、お前の母親が渡辺と一緒に暮らすよ

  うになって…お前が生まれた。俺は一人っ子だったから、例え血が繋がっていないと分かってい

  ても嬉しかった。弟が出来たことにバカみたいにテンションが上がってさ…」


 『自分に弟が出来たんだってあいつ今まで見たことねぇ顔して伝えてきたなぁ~。よっぽど嬉しかっ

  たんだろうよ』

  

  本当だった…のか。


 「でもそんな幸せな日々は長く続くはずなかった。あの女は密かに探偵を雇って渡辺を尾行させて

  たんだよ、それも数年間にかけて。その調査結果を突然あいつに突きつけてきたんだよ」


 『駆け落ちした相手の男は危ない人間だったみたいでね。バツイチの理由も仕事に勤しんだ結果だ

  とか言ってたけど…一緒にいた男の子とは血の繋がってない赤の他人だったとかで、自分は被害者

  なんだって何度も耳にたこが出来るぐらい言ってたわね』

 

 「…あの人は、俺を利用したというわけか」

 「そうだ。幼いお前をあの女は利用したんだよ。渡辺を脅す材料を得るために…その結果、あの二人

  は離婚して俺は渡辺に。お前はあの女に引き取られることになった。だが俺はお前と離れたくなか

  ったから頭を下げて頼んだんだよ。連れて行かないでくれって…だがあの女は聞き入れてくれなか

  た。お前と別れる前に俺がお前の記憶を消したのは俺の意思じゃなく、あの女の指示でだ。自分と

  血が繋がっているお前に悪影響が出ると困るからとかでな。それをやるついでに…俺はお前から二

  つの感情を奪った」

 

 「感情?」

 「嬉しいとか悲しいとかっていうやつだよ。思考操作を無意識のうちに使うお前にとっては制御する

  必要があったんだ。まぁ、もう大人だしそれぐらいはもう自分で出来るだろって思ってな」

 「ちょっと待てっ。つまり俺の感情は能力の代償ではなく…お前によって守られていた。と言うこと

  になるのか?」

 「あぁ。そう受け取って構わねぇよ。まぁ、今更かもしれないがな」

 「…」


 「光。帰ってきて早々に悪いんが…お前に頼みたいことがある」

 「頼み?」

 「俺の知り合いがいるんだよ。今こんな状況だから連絡がつかねぇんだ。だからお前代わりに行って

  来てくんない?今日中に」

 「急すぎるな。で、その知り合いに会って俺にどうするんだ?」

 「会ってくれさえすればいい。あとのことはそいつに聞いてくれたらいいからさ」

 「…分かった。で、その知り合いがいる場所は?」


 断る理由もなかった四之宮は日影の頼みを聞くことにした。タクシーを利用して向かった先はとある

 住宅街で赤い屋根の家だと説明された。


 

 「…ここか?」

 赤い屋根の家にたどり着き、四之宮はその家のインターホンを鳴らすと扉はすぐ開き中から一人の

 少年が現れた。

 

 「あっ、どうも。確か…四之宮さんでしたよね?」

 「あぁ。君は確か…「要恵です。あっ、どうぞ、中へ」

 「あぁ。お邪魔します」

 赤い屋根の家は、要恵の家だったらしく四之宮は内心驚いた。日影の言っていた知り合いとは彼の

 ことなのか?とそう思いながら彼の後を付いていくと突然怒鳴り声が響いてきた。


 「ふざけんなよっ!たかがそんなことのために私を呼び出したわけ?」

  

 「この声…」

  四之宮にはその声に聞き覚えがあった。決して気のせいではない。



 「美月ちゃん、私は貴女を危険な目に遭わせたくないの。危険な目に遭うと分かった上で自ら火の海

  に飛び込むなんて馬鹿な真似はやめなさい」

 「あんたには関係ないでしょ!?とにかく私帰るからっ」と扉を開けた瞬間、美月は四之宮と目が

  合い身体が一瞬固まるが、後ろから追ってきた陽子に「待ちなさい、美月ちゃん」と右腕を掴まれ

  てしまったので、四之宮に向けていた視線を陽子に向けて「うるさい、離せ!」と怒鳴りつける。


 「ちょっと二人共喧嘩はやめなって。陽子ちゃん、美月ちゃん」とその様子を見ていた恵が二人の

  喧嘩を止めようとするのだが…。

 「恵君、今は美月ちゃんと話してるの。ひっこんでなさい」

 「でっ、でも…「悪いけど私はこいつに怒ってるの。要君が話に割り込まれると正直言うと邪魔だか

  らひっこんでて」

 「そっ、そんなぁ…」


 「美月ちゃん、そんな言い方はないんじゃない?」

 「はぁ?あんたと言ってることとあんまり内容変わらないでしょ?」

 「でも邪魔って言い方はよくないわ。私は『ひっこんでなさい』って言っただけで決して『邪魔』と

  は言ってないわよ?」

 「あぁ~はいはい。私の言い方が悪かったわよ。ごめんなさいね~」

 「とても反省しているようには見えませんね。むしろ悪意を感じます」

 「謝ったでしょ?それとも土下座して謝れって言いたいの?そんなの私はお断りだからね?」

 「別に土下座して謝れとは言っていないし。それにどんどん話の話題が逸れて来てるんだけど…」

 

 そう。恵が乱入したことによって話が段々逸れてきていた。


 「いい、美月ちゃん。貴女が特殊部隊に戻ったところで未来は何も変わらないの。私は貴女のために

 やってるのよ?」

 「うるさいっ。これから起こることを察して私を助けたとか言ってたけど、結局あんたは自分のため

  にやってることに変わりないじゃない。他の人間はどうでも良い、私だけ助かればそれでいいだな

  んて…自分勝手すぎるよっ!私はとにかく帰る。たとえ信じてもらえなくても…ひどく嫌われよう

  とも…私は「菊馬、落ち着け」

  感情が入り過ぎて目から涙を流している美月に四之宮は彼女の右肩にそっと手を置いて呟く。する

  と美月は少し落ち着いて大人しくなった。

 

 「悪いがその話、俺にも詳しく聞かせてくれないか?これから特殊部隊に起こることを…そのために

  日影を使って俺をここへ呼んだんだろ?星野陽子」

 「えぇ。美月ちゃんがこうなることも想定済みだったので、貴方にここまで足を運んでもらったわ

  けですよ。どうか…私達に協力して頂けませんか?四之宮光隊長殿」

 

  これから特殊部隊に何が起こるのか。そして、その先の未来には…いったい何が待ち受けている

  のか…。

 

 

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