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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
保護組新担任登場と四之宮光の過去
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飛鳥が借りているマンションに侵入。そして脅迫状を届けた高校生ぐらいの女の子とは?

  

  翌朝。美月達八人は飛鳥が借りているマンションへとやって来た。もちろん遊びに来たわけでは

  なく…仕事で。


 「鍵穴にこじ開けた形跡はないな?飛鳥先生、このことを警察には言ったのか?」

 「いいえ。このことをお話したのは皆さんと柊先生…そして杉村さんだけです」と岸本の質問に

  答える飛鳥。他のメンバーは手がかりがないかどうかを調べていた。すると綾小路が飛鳥に話し

 掛ける。

 「でもここに来た時、お部屋綺麗でしたけど…」

 「確かに普通の人が見れば綺麗に片付いていてどこも不審には思わない。ですが…それが怪しいので

  す」

 「言ってる意味わかんねぇーんだけど」と今度は黒澤は言う。

 「私がこの部屋を借りたのは保護組教師に採用されてからです。でもそれから教師として皆さんとお

  会いするまでの間、情報収集などをしておりましたので、この部屋に帰って来たのは昨日の深夜。

  その際に私は違和感を覚えました。この部屋には誰か侵入した可能性がある…と」


 「気のせいじゃねぇのかよ、先生」

 「黒澤君、さっきからその場所に座りっぱなしで一向に動いてませんが…ちゃんと手を動かしてくだ

  さい。これも立派なお仕事なんですよ?」

 「すっ、すみません」

  

  黒澤だけがそう思っているわけじゃない。他のメンバーも同じことを考えていたのだから。

  こんなに綺麗な部屋なのにどうして侵入された可能性があると言えるのだろうかと…。


 「ちなみに飛鳥先生、情報収集とはいったい…」

  霜月は気になったのか飛鳥に情報収集について質問する。

 「奏様を狙う連中のアジトです。金を払えば何でも引き受ける…そういう奴等に関する情報を得るた

  めにいろいろとやってるんですよ」

 「ふむふむ。夜のお仕事ってやつですな」

 「そういうことです」

  

 「それで飛鳥。その連中のアジトを突き止めることは出来たのかしら?」

 「申し訳ございません。何しろ、能力金融が特殊部隊に潰されてしまってからか…警戒が厳しくなっ

  ておりまして。それに関する情報がなかなか…」

 

 それを聞いて岸本以外の全員が静まり返った。なぜなら能力金融を潰したのは、四之宮チームの三人

 と当時訓練生だった岸本以外のメンバー七人だったのだから。

 

 「いや。別に皆さんのせいとは言っておりませんが、それでもやりづらくなりましたね~」

 「それ完全に俺達のせいだって言ってるようなもんじゃねぇーか!」

 「黒澤君、落ち着いて。飛鳥先生、何かなくなった物とかありませんか?お金とか…何か大事な物

  とか」


 「いえ、特に盗られたものはありません。金銭類も無事でした」

 「それ、侵入した意味あるのか?何も盗らないって」

 「不法侵入罪にはなるぞ、瀬楽」

 「あぁ~そっか」と瀬楽は霜月に言われて納得する。

  物を盗らなくても、他人の家に勝手に入ってしまえば不法侵入罪となり逮捕されてしまう。これも

  立派な犯罪だ。


 「やっぱり、奏ちゃんを狙ってる人が入ったのかな?」

 「その可能性は否定できません。私の借りているマンションを突き止められてしまった所を見ると

  …」

 「先生、どうするんですか?もうこの部屋に住めないでしょ?」と美月が飛鳥に聞く。

 「それについてはご心配なく。しばらくの間特殊部隊に寝泊まりしますから」 

 「いや。そういう問題じゃないと思うんですけど…」

  仕事場で寝泊まりするのは良いが、ちゃんと自分の部屋でゆっくり休息を取るべきだと美月は思

  う。柊先生もそうだが、たまに帰ったりしてのんびりとしている。どんな理由であろうと、やはり

  帰る家は必要だ。だが飛鳥は変わった人間で、帰る家がなくとも、安全が確保出来た場所ならどこ

  でも寝られるらしい。これは宝正以外のメンバーは知らない。もし知られれば、飛鳥の印象は

  がらりと変わってしまうだろう。


 「…聴き込みは無理だよね?さすがに」

 「そうだな。下手に騒いだらご近所の人を不安にさせるだろうし」と美月と霜月が話していると

  突然インターホンが鳴った。

 

 ピンポーン!

 「ん?誰か来たみたいだぞ?」

 「私が出ます。皆さんは引き続き調査をお願いします」と飛鳥は八人に告げて玄関へと早歩きで

  向かって行き、ガチャンと扉を開けた。


 

 「はい。どちら様でしょう?」

 「あっ…どうも。お隣の横永よこながです」

 「おはようございます。それで、何かご用でしょうか?」

 「あぁ~いや。昨日の夕方ぐらいに飛鳥さんを訪ねた人がいたんですけど、留守だったからって

  僕がこの手紙を預かってたんです」

 

 「手紙?」

 「はい。高校生ぐらいの女の子でしたよ」

 「高校生…」

 

 瀬楽はそろりと二人に近づいて話を盗み聞き。そして美月達に小声でその内容を伝えたのである。

 だがそうしなくても二人の話はだいたい聞いていたが、空気を読んでメンバーは瀬楽の話を

 黙って聞いていた。

 「なぁ、菊馬。まさか犯人は星野陽子じゃないよな?」と瀬楽が美月に尋ねる。

 「いや。陽子は今刑務所にいるはずだけど…」

  そう。現在陽子は刑務所の中。高校生ぐらいの女の子と言うだけで犯人は陽子であるということ

  は有り得ない。


 「奏。飛鳥先生の親戚か知り合いに高校生ぐらいの女の子はいるのか?」と岸本が宝正に聞く。

 「いいえ。飛鳥は一人っ子だし、親戚もいないわ」

 「じゃあその女の子って誰なんだろ?」と綾小路が言う。するとそれを聞いた瀬楽が冗談なのか

  本気なのか分からないが「飛鳥先生の彼女とか?」と言う。


 「かのっ?!…それはないんじゃないかな~」

 「「どうしてそう言い切れるんだよ?」」

  霜月の発言に瀬楽と黒澤は声を揃えて尋ねる。

 「いや。年離れすぎなんじゃないかと…」

 「でも、菊馬と宮木先輩も年離れてるぞ?」

 「ちょっと瀬楽、私と宮木さんは付き合ってないから!!」

 『瀬楽、変なこと言わないで』


  瀬楽は美月と小森に怒られてしまい、すぐ「ごめんなさい」と素直に謝罪する。

  どうしてこんな話になったのだろうか?10歳や20歳ならともかく美月と宮木はたったの5歳

  しか離れていないというのに…。それも年の差と言えるのだろうか?

 

 「お待たせしました。隣人の人がその女子高生から預かった手紙です」と飛鳥は美月にその手紙を

  手渡す。手紙を受け取ると美月はすぐに中身を見る。


 『手を引け。でなければ、お前の命はない』


 「…脅迫状ですか?」

 「そのようです。ですが恐らくその女子高生は無関係だと思われます」

 「どうしてそんなことが分かるんですか?」と美月は尋ねる。

 「横永さんの話ではその女の子は手袋はしていなかった。恐らく部屋に侵入した人物は彼女では

  なく、別の人間がやった可能性が高いですね」

 

 犯人の目的は飛鳥に宝正の護衛を辞めさせるようにした。部屋に侵入したのに何も盗らなかったり

 、部屋を荒らしたりしなかったのは恐らく見せしめであろう。簡単に侵入できるぞと言うアピール

 なのかもしれない。だが女の子を使ったのはどうしてなのかは謎だが…。


 

 

 「…手紙は無事に届けました。次は何をすればいいんですか?」

 美月達が飛鳥の部屋にいる頃、一人の少女がマンション近くで誰かに電話を掛けていた。数分のや

 り取りを終えた後、少女はスマホを持っていた手提げバッグの中に入れてその場を離れて行ったの

 であった。


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